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噛み合わせと勝負勘|PSGvsBarcelona 1st leg

PSGの大勝に終わったが、実力差が反映されたという印象はなかった試合だ。

簡単に言うと、PSGの編成とバルセロナの編成では、前者にとっては相性が良く、後者にとってはそうではなかった。そして、勝負勘を持っていたか持っていないか。その2点に尽きる。

まずは相性について述べよう。バルセロナのDF陣とPSGのFW陣、バルセロナのFW陣とPSGのDF陣の両方に於いてPSGに分があったということである。

前者については、端的に言えば比較的スピードのないバルセロナDF陣に、スピードを特徴とするキリアン・エンバぺとモイーズ・キーンをぶつけられたのは幸運だった。PSGはセルジーニョ・デストとジェラール・ピケを狙い撃ちさせるべく、マルキーニョスに徹底的に左サイドへ精確なフィードを飛ばさせた。

なぜ逆サイドのジョルディ・アルバではなかったのかと言えば、それは単純にラングレがピケか、エンバぺかキーンかという話だ。同じカバーリング型CBでも衰えていて元々鈍足、復帰明けのピケと、同じく脚力には自信がないにしてもフィジカル的にやれることの多いクレマン・ラングレだったらどちらを狙いたいだろうか。もしくは攻めさせるならエンバぺかモイーズ・キーンだったらどっちに攻撃させたいだろうか。

デストは上がらなかったのではなく、上がれなかったというのが結論であり、彼の限界だったように思う。

後者については、PSGのDFラインはCB2人がスピード系、テクニカル系のFWに強く、一方でフィジカル系のFWにはさして強くない。SB2人はオフェンスに特徴はあれどディフェンスは不得手である。

一方のバルセロナの前線はグリーズマンーメッシーデンベレだった。これはPSGのDF陣にはハマってしまう。アントワン・グリーズマンは突破力を特徴とするタイプではなく、ウスマン・デンベレは比較的カットインしたがるタイプ。リオネル・メッシは特にプレスネル・キンペンべが得意とするタイプだ(前回対戦でも実証済み)。縦突破に特徴がある選手はいないので仕方ないが、それならばメッシなりデンベレを左に置き、グリーズマンを右に置くなどの配置転換はできなかったのだろうか。私ならフィジカル能力が高いブライスワイトをCFに起用して、メッシをトップ下にしてバイタルを突かせた。中盤は2枚にしてもセルヒオ・ブスケッツはこの試合で余りものになってしまっていたので下げてよかったと思う。

バルセロナが勝機を見出すなら中盤だったが、リトリートをするにしてもカウンターに持っていけるメンバーはおらず、プレスを仕掛けるにしても後方にかかるリスクが大きく、そもそもPSGにはマルコ・ヴェッラッティという剥がし屋がいる。結局、前後の相性の悪さが中盤にも波及してしまったという印象だ。

国内戦を見てもわかるように、PSGはビルドアップはスムーズでなく、バイタルエリアの管理も相当甘くなっている。しかし、それを突くだけのリソースがバルセロナになかったというだけの話だ。

とはいえ、勝負勘の良さは褒めていいと思う。やはり昨季のファイナル8で壁を打ち破った経験が生きているのだろう、どこで勝負を仕掛けてどこで引くべきかを監督ではなく選手が理解していた。逆に言えば、比較的若いバルセロナの選手はそういったものをまだ持っていなかった。デンベレの決定機逸、キーンのハンド疑惑はターニングポイントだったと思うが、そこで流れを相手に引き渡さないようにするだけの力がまだなかった。

いずれにせよ、実力差以上のものが出たスコアで、お互いに楽観も悲観もすべきではないだろう。PSGに関して言えば3点差を1stレグで付けてしまうのはリスクを孕んでいるし、バルセロナに関して言えば若い選手が殻を突き破れば暗黒期もうまく抜け出せるだろう。勝負は3月までわからないし、いつまでも続くのだから。

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