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エナドリ・ホーランを退場させる方法〜PSGvs黄組さんマッチプレビュー〜

新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で、エルリン・ホーランが出場停止になってしまったPSG(パリ・サンジェルマン)vs黄組さん。無観客試合をグループステージ首位突破チーム様のホームゲームで行う愚行含め、UEFAのカスっぷりは見事だが、文句を言っても仕方ない。優勝もしてないくせにチャンピオンズリーグに出てくる不届き者をしっかりお掃除しよう。

というわけで、まずは1stレグの振り返りを渋々ながらやっていく。

1stレグはほぼトゥヘルの選択ミスにその要因を求めることが可能だ。
黄組さんの基本フォーメーションはここのところ334、いや阪神関係なかった、3−4−3だった。普通3バックには噛み合いにくい4−1−4−1で対策するのが常套手段だが、なぜかミラーゲームを選択してPSG側も3−4−3にしてしまった。
3−4−3を選んだ理由がないわけではない。その前のアンジェ戦でチアゴ・シウバが復帰したのだが、そのパフォーマンスは低調だった。4バックで彼を使って守り切れる確信が無くなったのだろう。そのアンジェ戦で出色のパフォーマンスを見せていたタンギ・クアシを使って良さそうに見えたが、さすがに経験のない17歳にCBを託すのはリスキーと判断したのもあり、次善策のミラーゲームを選んだように思える。
ただし、それも含めて過警戒だったようにしか見えない。確かに今冬加入をキメたエナドリくんは脅威だが、孤立させれば消せるタイプのストライカーでもある。幸運にも、エナドリくんをサポートするアシスト役とデコイ役のマルコ・ロイスとユリアン・ブラントは負傷で物理的に消えていた。その結果、警戒すべきは供給役のジェイドン・サンチョとホーランのラインだけになり、守ることは難しくなかった。実際、後半途中までエナドリくんは割と行方不明だった。
PSG自体も3−4−3ではあまり機能しなかった。マルキーニョスとチアゴ・シウバはまるっきり同じスタイルの選手なので、横に並べると相性が良くない。さらにドイスボランチのイドリッサ・ゲイエとマルコ・ヴェッラッティも補完性の高くないコンビ。相手以前に、チーム内の組み合わせの時点でダメになってしまったように見える。
前線3枚の組み合わせもどうだったか。ネイマールとキリアン・エンバペと組ませるなら、エディンソン・カバーニにしないと、フィニッシャー、アシストマン、デコイロールの3役を揃えきれなかったのではないか。アンヘル・ディ・マリアも献身的で良い選手だが、3役を全てこなせるタイプではなくフィニッシュとアシストに特化している。この選手は前線の役割を当てはめない類のチームでは、4人目の攻撃手であってほしい選手だ。
とはいえ、伏線としてはこの起用はアリだった。ドルトムントもラストパス特化のトルガン・アザールは明らかに伏線で使われていたように見える。下げてから上げる、というような相対性を活かしたメリハリの付け方は一手ではある。
しかしだ。PSGがそれをすべきかという問題である。予算規模含めてクラブの規模で言えば2段くらいは差のある相手。1試合でも負ければ恥くらいのプライドは持っておくべきだろう。そんな試合で小手先のストーリー作りや伏線回収が必要だったのか?試合開始から全開で攻め込んで大差を付けに行くくらいの覚悟があって然るべきだった。ポジショニングは微妙な守備的MFで攻撃の能力が高いわけではないゲイエの起用含め、慎重すぎたのではないか。
しかも、伏線回収で負けてしまったのだから笑えない。先に動いたルシアン・ファーブルは、ジョバンニ・レイナを投入した。平均70点くらいの選手だが、先述の3役を全部平均的にこなせてキック精度も高い彼はなかなかスーパーサブとして優秀だ。
結果、この投入が勝負を分けた。レイナの投入でホーランが生き返った。嫌らしいポジション取りでホーランへの警戒を緩めたことが、エナドリ効果を爆発させてしまった。PSGもネイマールとエンバペが個人能力でゴリ押して同点に追いついたが、一度火がついてしまった黄組さんを止めることはできなかった。PSGのスーパーサブ役はレイナよりもハイクオリティーなパブロ・サラビアだったが、入れるタイミングを逃してしまっては時すでに遅し、だった。

とはいえ、このまま2ndレグも黄組さんがリードして終わるとは思えない。
PSGの光明はエンバペだ。このところ低空飛行で、キャリア初の壁にぶち当たった感のあった21歳だが、ディジョン戦で復調の兆しを見せるとフランス杯・リヨン戦で大爆発。結果が出なくなってから得点数に異様に拘ってエゴイスティックなプレーになってしまっていたのが、ディジョン戦から本来の万能性を取り戻してドリブルやゲームメイクでの貢献を増やし始めた。そして優秀なゲームメイカーであるネイマールが戻ってきたリヨン戦で自分の中でのバランスを取り戻した感がある。
どうやら喉風邪で直前の状態は不安視されているようだが、このレベルの怪物がここで止まってはいけないだろう。コロナ流行期にこれを言っては不適切かもしれないが、どんなコンディションでも結果を出すことが求められる。
一方のホーランは覚醒状態が少し落ち着いてきたように見える。ポテンシャルは間違いないと思うが、そろそろ勢いが落ちてくる時期に入っているのではないか。数字がついてこない時を迎えているだけに、黄組さんにとっては不安材料だ。
とはいえ、ブラントが復帰してきたのは脅威だ。独力でも切り裂ける才能が、ホーラン&サンチョと組んで攻め込んでくるのだ。恐怖以外の何物でもないだろう。レイナが平均70点だとすれば、ブラントは平均90点だ。この3人で攻め込まれては、どんなDFも対処が難しい。前にボールを行き渡らせないようにする必要がある。
しかし、ドルトムントはビルドアップ性能も高いチームだ。ラファエル・ゲレイロやマッツ・フンメルスを中心に、後方はキック精度と推進力を兼備していてなかなかやりにくい。
ただし、ゲレイロもアクラフ・ハキミも守備力はSBの水準ではないし、フンメルスは鈍足。特に背後への警戒は甘いチームで、攻め込みさえすればかなり脆いチームではある。それこそ、4−1−4−1で攻め込めば大量得点も見込める。マルコ・ヴェッラッティの出場停止は痛いが、よりアタッカー的な選手をIHで起用できるのは3バック対策としてはプラスに捉えられるかもしれない。事実1stレグも、ヴェッラッティの役割はアンカーに近いものになっていた。
黄組さんのGKロマン・ビュルキは凡庸だが、止めていくうちに乗って行く面倒臭さはある。おそらくそれが黄組スカウト陣を騙せた理由なのだろうが、ならばワンショットで確実に沈めるしかない。キック精度が精確なサラビア、復調したエンバペとネイマールの起用はマストだと感じる。
また、どんな手を使ってでも勝つ必要がある状況でレアンドロ・パレデスのベンチ入りは必須だろう。なぜかは知らないが、ヤツには相手を追い出す能力が備わっている。彼ならエナドリくんを消すのも夢ではない。大舞台でハイテンションなのか、すでに観客5万人ほどを一掃した男にはエナドリくんとサンチョのお掃除をお願いしたいところだ。

最後に、PSGの理想フォーメーションを記してこの項を終わりとする。
GKケイラー・ナバス
DFティロ・ケーラー、タンギ・クアシ/チアゴ・シウバ、プレスネル・キンペンベ、レイバン・クルザワ
MFマルキーニョス、アンヘル・ディ・マリア、パブロ・サラビア、ファン・ベルナト、ネイマール
FWキリヤン・エンバペ
ベンチ:レアンドロ・パレデス

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