見出し画像

魔改造した話:序章

塾講バイト勤続3年目。私はバイトリーダーのような役割を託され、事務業務に講師業務にしっかりこき使われるようになっていた。
そんな折、塾長様よりとんでもない指示を受ける。

「今度新しい講師が入ってくるので面倒見てあげて〜」

非常に勤務態度が良い実質バイトリーダーの私はこう返事した。

「はあ?????????」

見た目はユリアン・ドラクスラー、心はチアゴ・シウバ、態度はマルキーニョスを自称するこの私がこう返事するのも無理はない。なにせいつからそんな研修制度キチンと導入してたんやこの塾はという程度にはどんな雑魚(偏差値50以下の女子大の学生を講師で採用したことさえある)でも講師になれる超劣悪塾である。なにせこの私は研修を受けずに入った初日に子どもを押し付けられ、その子どもをいまだに教えている、そんなレベルである。

「でも女の子やで?いけるやろ?」

ふふっ、童貞じゃあるまいし相手が異性だからって快く受け入れるはずがな…

「任せてください!!!!!」

しかし、これは地獄へと続く道であった。

私が教育して差し上げるのは、近所の高校(偏差値60後半くらい?)を卒業して春に某有名関西私大に入学した女の子。「女の子」と表記する程度にはまだ制服脱ぎたてほやほや感が否めない、化粧っ気のない子であった。

この時点で私はなんとなく嫌な予感がした。私の数少ない異性経験上、年齢不相応に化粧が薄い子は仕事ができないか何らかのヤベー奴要素があるのだ。

もちろん、これまで皆さんが数多く経験してきたように悪い予感というものは得てして的中するものである。

人となりを確認すべく、私はコソッと彼女の履歴書をチェックした。私は女の子の履歴書が大好きだ。かわいい女の子が汚い文字を書いてたりすると死ぬほど興奮する性癖があるからである。目を凝らしてじっくり読むと、武道系の部活出身らしく、志望動機もビッシリ埋め尽くされていて真面目な子だ、これは真面目だ、まあじゃあ大丈夫か、と安心した。

しかし、真面目どころの騒ぎではなかった。

勤務初日に自習スペースで寝ている生徒を「ここはベッドじゃないですよ、寝るんなら帰ってください」どこの教師にその言い方教わったんじゃワレゴルァと言いたくなるような、非常に嫌味な言い方で叱りつけ、質問してきた生徒には「私が全力でサポートするから」と先生宣誓。教材のコピーを頼めば「著作物のコピーは法律違反ですよ」と言ってしない(先輩に楯突くなボケブン殴るぞと言いたくなったが、ここは我慢した)。お酒はハタチになるまで飲まないしクルマの制限速度をきっちり守って煽られるタイプの人種である。
なにせ初日でここまでかましてくると、教育係たる私の元に苦情が殺到。「あいつうざい」「なんとかしろ」「毒を以て毒を制せ」「お前が殺らなきゃ誰が○る」「チャランポラン界最後の希望、立ち上がれ!」などと同僚・生徒問わず励まされてるのかディスられてるのかわからないようなクレームを叩きつけられ、私は初日にして悪の代表として彼女と対決する構図を完成させられたのである。

「私」の基本データ
・ロリコン大学在籍
・動物園高校出身
・テキトー
・無気力
・偏屈
・精神年齢小学生
・趣味は純粋無垢なJCやJKに悪いことを教えてニチャァ

そもそも、こんな男に正反対の少女を押し付けた塾長の判断はアホ極まりないのだが、我が上司は私をプロブレム押し付けキットだと思っているので仕方ない。実際、どんなプロブレムに対してもオレの方がもっとプロブレムだ、ということを示してプロブレムを解決というより破壊してきた実績しかねえので。
ここまで書くとうっせえわ聴いてそうな文になったので一旦Ad⚪︎モードを解除する。
何はともあれ、私は闘わなければならなくなった。しかし、私はこの闘いを恐れてはいなかった。私は生粋のイタズラっ子である。私の血は、チャンピオンズリーグに立ち向かうレアンドロ・パレーデスのように騒いでいた。

「これはアツいッ…!」

何せ私が勤めているバイト先の塾は、言葉を選ばずに言えば底辺の生徒が通うような塾。というか、底辺の受け皿。はっきり言ってちゃんと塾に来る、きちんと机に向かう、しっかり宿題をやる、これさえできれば優等生。そんな世界。言ってしまえば真面目ちゃんとは相性が合わない最悪の環境だ。それなりに優秀な世界で生きてきた少女からすれば、魑魅魍魎の集まりに見えたのかもしれない。

少女(今回の主人公)の基本データ
・某有名関西私大在籍
・中高一貫私立出身
・クソ真面目
・正義感が無駄に強い
・やる気マックスオリックス

この少女に「わからせてやる」機会が来たのだから、特大の老害ポテンシャルを持つ私の血が騒がないはずはなかった。まずは慣れるために事務業務のみを行なっていた彼女に、私の授業を見せることにした。

私の授業・基本情報
・基本的に授業をしない
・問題を死ぬほど解かせる
・私の仕事は問題を解く姿の監視と、間違えた問題の解説

これで60分を費やすのが私の仕事だ。給料泥棒に見えるかもしれないが、前述の通りまずやることすらしない生徒たちの成績を伸ばすにはやらせることが重要なのである。私が解説したところで、わかった気になってやらないのがオチなので基本逆効果。キチガイLv.334の私とて他人からお金を貰って遊ぶことはしていない、これだけは神様に誓える。

しかし、当然彼女の目には「このおっさん…何もしてへんやん!!!!!」としか映っていなかったのだろう。彼女は衝撃の行動に出る。

To be continued•••

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?