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CL Round of 8 Atletico de Madrid – RB Leipzig Match Review

予想外の結果ではあるが、番狂わせというほどではない。

RBL;グラーチ‐クロシュターマン、ウパメカノ、ハルシュテンベルグ‐ライマー、サビツァー、カンプル、アンヘリーニョ‐オルモ、ポウルセン、ヌクンク

ATM;オブラク‐トリッピアー、サビッチ、ヒメネス、ロディ‐コケ、エレーラ、ニゲス、カラスコ‐ジョレンテ、コスタ

ライプツィヒは、3-4-3と4-2-3-1の可変に近い形のシステム。右サイドにライマーを走らせてサビツァー、クロシュターマンにサポートさせる形を中心にし、ビルドアップと崩しの面でメンバー的に劣る左サイドからはクロスを上げて早々に完結させるゼロリスクの方針を取った。

ラングニック系サッカーは司令塔がいないのがネックだが、ここは3バックにして中央にウパメカノを配置して解決している。ウパメカノに持ち上がらせることでほぼビルドアップは完遂。この持ち上がりは2トップでトップ下が不在の4-4-2を敷くアトレティコには効きやすかったように見える。

アトレティコは通常通りの4-4-2。特筆して書く点と言えば、カラスコの位置によって4-3-3でプレスをかけに行くシーンがあった程度か。コケが右サイドとボランチを兼務できるタイプで、このパターンの変更はアトレティコの得意技と言える。

攻撃面に関しては、左SBのロディを中心に作って、カラスコを使って攻める格好だった。ライプツィヒは右から攻めるので、このサイドは攻撃の発着点になり、お互いがお互いを潰し合っていたように見える。それを見たライプツィヒのナーゲルスマン監督は途中で左サイドにもある程度ボールを集めるようにさせている。とはいえ、戦力的な事情で左からの攻撃はやはり微妙に終わっていたが。

前半はほぼ膠着気味で終了。アトレティコはかつてのような絶対的エースが不在で、ライプツィヒはヴェルナーをチェルシーに売却したばかり。ベスト8に進んだ中では比較的攻撃力には難のあるチーム同士で、案の定決定的なシーンはセットプレーでアトレティコが強さを見せていた場面くらい。決着としてあり得るのはセットプレーのみかのように思われた。

しかし、後半早々に先手を取ったのは修正をかけたライプツィヒだった。50分、丁寧にバイタルエリアで組み立て、右サイドからのショートクロスにオルモが飛び込んで先制。崩せるとは思えなかったオブラクの牙城を一瞬で崩した。

しかし、シメオネ監督はこれに対して早々に対応。58分、エレーラに替えてここまでチームに適応しきれていないフェリックスを投入した。

そしてこれが的中。3バックのCBとWBの間のスペースをふらつくことで自由な状態でボールを受けることができたフェリックスが、持ち前の細やかな技術を活かしてライプツィヒを徐々に追い詰める。フェリックスのようなファンタジスタタイプのアタッカーはブンデスリーガにはいないだけに、ライプツィヒは相当対応に苦慮していた。

70分、フェリックスにペナルティエリア侵入を許したライプツィヒは、たまらずハルシュテンベルグがファウルしてPK献上。得たPKをそのままフェリックスがゴールに蹴り込んで試合は振り出しに。同点後すぐにシメオネ監督はモラタ、ナーゲルスマン監督はアダムスを投入した。

勝負の分かれ目は、この72分の交代だった。右WB兼ボランチのライマーを、同じようなキャラクターながらアダムスに替えて4-4-2により近い形に移行しフェリックス対策を済ませたライプツィヒに対して、フェリックスを封じられたアトレティコはモラタ投入の効果を消されてしまった。

総仕上げは待って待っての83分、シックとアイダラの投入だった。シックとポウルセンのツインタワーにシステムを変更した。そしてツインタワーでDFを釘付けにして、空いたバイタルを途中交代のアダムスが突いて一閃。ここまでハマると気持ち良いだろうとしか言いようのない一撃でアトレティコの息を止めた。

ライプツィヒは5人に増えた交代枠を存分に有効活用した。元々控えとスタメンの差は小さいチームで、“コロナ休暇”をいち早く終えたブンデスチームということもあってコンディションも良かった。大して交代におけるリスクもなく、コンディションも相対的に良いのでただ単に交代枠が2つ増えただけ。1枚カードを切ってもそれが最終手段ではなく、2手目、3手目が用意されていた。ナーゲルスマン監督の用意したストーリーが周到で柔軟だった証拠だ。

対するアトレティコは全般的に我慢が足りなかった印象を受けた。前半から不用意にいら立つシーンが目立ち、落ち着きを失っていた。監督からそうだったのだろうか、72分で持っていた手札を実質使い果たしてしまった。持っている手札が少ないのなら、なおさら慌てずに我慢すべきだった。いら立つことではなく、耐え忍ぶことがこのクラブの伝統であり、強みだったはずだ。

そもそも大半がアトレティコの勝利を予想していたが、この山はアップセットが十分に想定できたはず。というよりも、この山はアトレティコにとって最悪に近い山だった。

大きな理由は相性だ。アトレティコはクリスティアーノ・ロナウドを除けば、強豪クラブに強い。強豪の攻撃に耐え抜けるだけの守備力・守備組織を作り上げ、前線にはシーズン20ゴールは計算できるストライカーが常に居た。メンタリティ的にも、どこかビッグマッチでは心理的に燃える傾向もある。派手ではなくても、対強豪用のサッカーを極め続けてきたわけだ。

その一方でシメオネ監督が就任してから8年間、バルセロナやレアル・マドリ―とほぼ同等の競争力を維持しながら、リーグは2013-14の一度しか優勝していない。対強豪に特化したスタイル故に下位クラブから取りこぼす傾向があるからだ。そして、そのアトレティコに対して同じようにチャレンジャーとして挑んでくるライプツィヒははっきり言って避けたい相手だったはず。勝ち進んだとて待っているのは同じような中小クラブのアタランタか、メガクラブながら監督が叩き上げで弱者戦術を取るのがうまいPSGで、しかもこの2チームはライプツィヒとサッカーの傾向が似ている。強豪揃いのように見えた逆の山の方が決勝進出の公算は高かったように思える。

ただし救いはある。こういった弱点にアトレティコは既に気付いているからだ。まだうまくいっていないとはいえ、典型的なメガクラブの王様タイプであるフェリックスはチーム編成にバラエティを与える存在。あとは、ベンフィカ時代のセフェロビッチのように彼の奴隷となって体を張る仕事をCFができればチームとして一つ階段を登れる。かつてそれを担っていたコスタはもはや衰えてしまい、ジョレンテには少し向かない仕事故、新たなCFを見つける必要があるのは事実だが。他のセクションには優秀な選手もそろっているだけに、ここで的確な動きを取れるか。アトレティコの第二章に期待したい。

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