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3-9. 添乗員の作業ー電車、地下鉄ツアー

団体ツアーといえば大体、
観光バスや新幹線、特急列車、飛行機、船利用する
イメージですが、
場合によっては電車や地下鉄も利用します。

うん...
考えてみるとそ[りゃーそうだな。]
という納得する方もいると思います。
確かに、地元の観光地では美しいローカル線も走っているからですね。

海にそって走るローカル線はまるで
暗黒の宇宙を宝石の様にキラキラ照らす
流れ星みたいな存在ではないかと
僕は思います。

降りるとすぐ目の前に広がる青い海がある駅、

降りると海の上に立っている駅、

時間帯が合うと、
海にお日様が沈む、
夕焼けの風景に出会える路線、
日本では多数存在します。

そのローカル線は
電車だから電車ツアーは
思ったより珍しくはありませんね。

さあ、それでは
都内電車、地下鉄団体ツアーはどうでしょうか?
見たことあるでしょうか?

…...

はい、あります。

へえ?

どこの旅行会社だ?ケチじゃないか?

自分を含めて人は
自己中心に考える傾向があります。

東京の人から考えると
都内の電車や地下鉄は
普通の移動手段であり、
通勤の満人電車や
人身事故など
ネガティブなイメージもあるかもしれません。

ところが、皆さんが例えば
ニューヨークやパリ、もしくはソウルで
地下鉄を乗りました。とするとどんな気分でしょうか。

日常でほぼ毎日乗る
うんざりするほど平凡な東京の電車、地下鉄も
ある誰かには
とても素晴らしい経験、
幸せだった思い出、
首都の迫力を感じた、
夢が叶えたなど、
とてもとても特別な経験になります。
多くの海外からの観光客が
東京に尋ねるわけです。
2005年初海外旅行、
初日本、初東京旅行で
電車を乗ったそのワクワクを
自分は未だに覚えています。

添乗員としての僕の経験では
地方の高齢者お客様の東京ツアーを数回
案内したことがあります。
普通は羽田空港や東京駅八重洲口当りにある
鍛冶橋駐車場に観光バスが待機するはずですが、

このシリーズは主に東北からのお客様を新幹線上野駅でお迎えします。
ご参加されたお客様の人数は70人に近づきます。
...
参考として大型観光バス12列正座席は45席です。
一般的に添乗員一人で消化できる最大人数は
60人前後と言われます。
安全問題を考えるともっと下げるべきです。
それでこのツアーは添乗員二人がフェアで行います。
バスなし、ガイドなし、

上野駅へ到着したらすぐ東京の名物、
浅草とスカイツリーへ向かいます。
あ、もちろん地下鉄です。
銀座線、そして都営浅草線ですね。

あ、
その前に質問です。
初日だけど、お客様の荷物=スーツケースはどうするの?

答え
「007作戦」が始まります。
添乗員2人以外、もう一人のスタッフが投入されます。
予め駅前でジャンボタクシー数台を手配し
お客様の荷物だけホテルに送る特命を果たします。
ここまでの話で、
このツアー安く見えますが、
実はホテルは都内一級ホテルです。
だからこそ、こんな事が可能わけです。
面白いですね。
そして、
僕のキャッチフレーズ

「世の中は誰かの仕事で成り立つ」
と似合いますね。

何十年ぶり、あるいは初めての東京訪問...
皆様の顔には「期待」と「わくわく」が
はっきりと書いてあります。

応じないと!
する責任感を感じます。

再び質問、

地下鉄のツアーだと
きっぷはどうするの?

新幹線の様な団券なんてあるわけがないです。
上野駅で全員に首掛けのストラップに入れた
パスモを一人一枚配布します。
既にある程度の金額が充電されています。

さあ、この充電は...
打ち合わせの後、帰り道で
添乗員が駅で一枚ずつ手作業で充電します。
70枚ちかいです。

ああ...
他の利用者に迷惑です。
様子みながら譲ったりしながら
やります。

そのパスモをもらったお客様は
日本の首都でツアーに行き、
「パスモ」を利用して地下鉄を乗る
だけでわくわくです。
改札でカードを「ぴびっ」とタッチするだけで
テンションが上がります。
同時に自分も昔の事を思い出して
笑顔になります。

......

そうです。
旅行会社のスタッフとお客様の関係を超えて
マンツーマンで共感します。

都内ツアーは続きます。
キンブラってご存知ですか?
何も考えず、
ただ金座をぶらぶら歩く事をいいます。

高齢者の世代には
結構憧れのようです。
夕食は念願の築地でのお寿司!

お寿司セットでカニ汁...
「マイウ!」
ビールが進む!
帰りは隣の「東銀座駅」まで歩きます。
そして、銀座で乗換
というわけで少し「キンブラ」が実現できます。

疲れながらも楽しかった東京ツアーの初夜、
いよいよ夜景が綺麗な高級ホテルで
泊まります。

朝食は和食、洋食、中華...3つのレストランから自由に選べる...Wow!

実に「スペシャルデー」です。

一方、裏の舞台には悲話もあります。
大体のホテルには観光従事者(ドライバー、ガイド、添乗員)向けの特別なプランがあります。
添乗員は安い値段で泊まれるという意味です。
ですが、こちらは高価のホテルです。
値下げしても旅行会社としては負担です。
結局、添乗員2人の中より家が近い人が帰って
翌日通勤します。
遠い一人だけホテルで泊まります。

(T_T)

翌日もツアーは続きます。
お宅から通勤した添乗員もいつもの様に
絵顔でお客様を対応します。

相変わらず地下鉄で
今度は途中で「ゆりかもめ」に乗り換えます。
そうです。
お台場へ行きます。

70人近い人数は
一体どうやって地下鉄で移動するか。

添乗員2人が列の前後に付きます。
もちろん、一般の利用者に迷惑にならない様に
2両以上に別れて乗車します。
移動中に添乗員は非常に緊張モードになります。
降りたら他の利用者にお邪魔にならない様に
壁の方に移動して2人の添乗員が迅速で正確に人数を「ダブルチェック」します。

パスモのたっぷり感覚が慣れなくて
認識されない赤いランプが鳴る場合もあります。
たまには、慌てて無理ありして潜って通過する方も
います。
本人も見る人も笑い話になります。

最後は最初の上野です。
添乗員は新幹線見送りです。
乗る前に自由時間です。

アメ横や上野公園くらいですね。
...
「西郷隆盛像」を見上げながら
夫婦で参加されたあるお客様が
「50年前、新婚旅行以後初めてだなあ...
周辺が変わっても「西郷隆盛」さんは相変わらずだなあ…」

40代の僕は、
韓国出身の僕は、
添乗員の僕は、
立場が違います...

ですが、
長い間
海外生活しているせいか
はっきりは分からんけど、
その瞬間だけは
何となく
その意味を共感しました。

いわゆる

交感ですね。

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