「俺ら」と「ちー様」の話。

俺らとちー様の奇妙な関係をインターネットの片隅にでも残しておこう。


俺はにじさんじのイブラヒムのリスナーだ。
ちまたでは下水民とか呼ばれているタイプのやつだ。

唐突だが、推しに「好き」と言われたことはあるだろうか。

女性なら結構言ってくれることも多いと思うけど、
俺らの推しこと王ことイブラヒムは中二病の男子みたいなやつなので、直接的に「好き」などと言ってくれるタイプではない。
それはそれでいい関係なわけですよ。
今更好きなんて言われたらどうしたんだよって感じだし、
あれで結構、視聴者のこと大事にしてくれますのでね、俺は大変満足です。

しかしながらある日のこと、ちー様の配信を見ていたら、俺はこう言われたのだ。
「アブラーさんたち好き!」
と。


あるとき、俺たちは「アブラーさん」になった


ちー様はにじさんじライバーの勇気ちひろさんだ。
イブラヒムとは、ぷ亭ことラトナ・プティからの誘いでV最協APEX出場チーム「なんもしてねぇ」として関わりだし、その後も付き合いが続いている。

他の配信者の視聴者もそうだろうが、自分の推しと仲良くしてくれたり、大事にしてくれている人がいたら、嬉しい。
俺は、イブラヒムが「様」をつけて呼ぶこともあって、敬意をもって接しなければならない方であり、イブラヒムのことも大事にしてくれる人でもあるわけで、なんというか……ちー様を大変好きになったわけである。

他の「俺ら」も俺と同じに思ったか、ちー様のために!と謎にイブラヒムの足止めをしようとするなどといった出来事もあった。
「ちー様を大事にするイブラヒムの視聴者」という謎のまとまりでもってちー様に認識されたのも、きっとその頃からだろう。

俺たちは非公式ファンネーム「下水」とか「下水の民」とか呼ばれているが、「いつも良くしてくれる人達を下水と呼ぶのもちょっと…」という、ちー様のやさしさによってアブラさんの視聴者さんこと「アブラーさん」と呼ばれることになった。

俺らは「お前ら」「イブライバー」「下水」に加えて「アブラーさん」に、なった。


「ちー様」と「アブラーさん」


ちー様はことあるごとに、「にぃに・ねぇね」だけでなく、俺らにも声をかけてくれた。
「ちー様」を含む文面で感想ツイートをすると、ちー様からのいいねがつくこともよくあった。

そうしてちー様がこちらに向き合ってくれるので、
俺らは浮かれてイブラヒムの配信画面にちー様の名前や姿が現れると「ちー様!」「ちー様!」と騒ぎ立て、
ちー様のファン「にぃに・ねぇね」に倣って「げぇげ」を称するものも現れ、
イブラヒムも「こいつらちー様が好きすぎるだろ」と思っていたと思う。
にぃに・ねぇねさんも多くの方が「アブラーさんたちはちーちゃんに優しい」「ちー様でパブサするとあったかい言葉たくさん書いてあって嬉しい」と歓迎してくれた。ご不快になられた方もいたと思うけど、本当にありがとうございます。

ちー様は言う。

「アブラさんのことも、アブラーさんたちのことも好きだよ」
「にに・ねねが一番好きだけど、アブラーさんたちも同じくらい好き」


それは奇妙な関係だった


ちー様に「アブラーさんたちが好き」と言って貰える感覚は、なかなか説明がしがたいものがある。

「イブラヒムのリスナー」として他の配信者に受容され歓迎されている。

ちー様のリスナーでありファンであり一番の応援者である「にぃに・ねぇね」の、ちょっと後ろに「アブラーさん」という謎の枠が存在している。
ライブでいうなればコールアンドレスポンスが
「ねぇねのみんなー!」「キャァーーー!!」
「にぃにのみんなー!」「うおおおーー!!」
「アブラーさんたちー!」「ギャフベロハギャベバブジョハバ!!」

みたいなことである。

他にも推しているライバーさんから、「そのライバーさんの視聴者」として好きと言ってもらえることはある。(うれしい)
しかし、「イブラヒムの視聴者」としてちー様から「好き」を受け取ることができる、という状況がなんとも不可思議だった。

探せばどこかに似たようなものはあるのだろう。
でも、「俺ら」と「ちー様」との間で発生するものは、俺らとイブラヒムの間にあるものとも、にぃに・ねぇねさん方とちー様の間柄ともまた違うものなのだと思う。
ちー様は俺にとって、「推し」ともまた違う、ちょっと特別なお姫様だった。


下水より愛を込めて


アブラーさんたちは優しいとちー様は言う。
でも、それはちー様が「なんもしてねぇ」というチームとイブラヒムのことを大切な友達だと大事にしてくれて、
勝手に敬意を示し勝手に懐いた俺たちに優しくしてくれたからだ。

イブラヒムのクリプトを信頼してくれたことからはじまり、
「大丈夫よ」という声掛けに勇気をもらったのだと話してくれたこととか、
マイクラの資材集め大変だけど、アブラさんが褒めてくれるから頑張れるよと言ってくれたこと。
建築を何度も絶賛して、お城をお友達に自慢していたこと。
イブラヒムとぷ亭が用意したちひろ城のお披露目で泣いていた姿。
にじさんじ甲子園、コーヴァス高校で頑張る「勇気ちひろ」の活躍を褒めるイブラヒムを見て喜んでいた様子。
言葉が率直すぎるイブラヒムを「でも、ちひろはアブラさんのこと好きだよ。アブラーさんたちもそうでしょ?」と、言ってくれたこと。

たくさんの、たくさんのことの積み重ねが、俺らのちー様への優しさになっている。

イブラヒムの足下でわーわー騒いでぶんぶん手を振る俺たちに、ちー様は笑って手を振り返してくれた。
ちょっと離れたところにいるはずの俺たちを好きだと言ってくれた。

ちー様は俺にとって、強くて頼れるIGLで、可愛くて誇り高いアイドルで、天空城のお姫様だ。

これからも、そうだ。

2024年1月30日、夜からはじまった最後の配信。
卒業発表直後に「最後は城を見て終わろうかな」と言っていたように、マイクラの整地配信がはじまった。
城下町の完成を楽しみにして、現地も切り抜き動画も見ないようにしていた城に、城主が帰ってきた。

この城で眠るために、帰ってきた。



作りかけの城下町、水の張られてない水路を見てちー様が言う。
「アブラーさんが住むところかな?」

どうやら、俺たちはちー様のお膝元に住んでもいいらしい。



下水より愛を込めて、ちー様の門出に祝福を。

#イブラヒム #勇気ちひろ