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【tinderの片隅にある不倫】「好き」って言わない

なんの話の流れだったか?
「遊びでしょ」
みたいなことを彼に言われたのかな?

でも、私は好きじゃない人と寝たりしない。

「私は好きだけど」

とLINEしてしまった。
彼からは
「そういう事言ったらいけないでしょ」
と帰ってきた。
「好き」って言う事と、言わないことにそんなに差があるのかな?
ベッドの中でLINEの返信を考えながら悲しくなった。

翌朝
「昨日は酔ってた。ごめん」
とLINEが来た。

彼と出会って3ヶ月、たまにお家に遊びに行ったり、ラーメン食べに行ったり。
よく覚えているのは、初めて会った時に私を見て

「みかちゃんがこんなんだったなら、もっとちゃんとした格好でこればよかった」

と、デニム姿の私に恥ずかしそうに言った。
彼は育ちが良さそうな整った顔にやんちゃ笑顔で、高身長に白いポロシャツがよく似合っていた。
体育の先生をしていて、運動が好きというだけあって締まった身体つきをしていた。
実はその時、想像よりもかっこいい彼に、私も散々に照れていた。

彼は育ちがいいのにとてもボロいアパートに住んでいる。
実家が近いし、友達が多く、飲みに行ったり、麻雀したり「あまり家にいないから」と言うのが理由らしい。
おばあちゃんが引っ越し祝いにと買ってくれたブルーのチェックのカーテンがが窓の高さにあっていなくて丈が足りていない。
「おばあちゃん、可愛いでしょ。ありがたく使ってる」
と、きっと家族仲がいいんだろうなと思った。
ベットに寝ていると私の顔を時折夕陽が照らす時がある。
私に乗っかっている彼からどう見えているんだろう?と夕陽にあたりながら考える。

彼のお家は不用心で私が行く日は鍵がかかっていない。
私は近くの宗教施設の駐車場に車をこっそり停める。
「友達みんなそうしてる」と彼が言うから。
そしてだれもいない彼の家に上がり込む。
彼は仕事を抜け出して急いで帰ってくる。
彼のテレビには全番組を録画できるHDがあって
「先に着いたら好きなの見ててね」
といつも言うから、私はこの部屋でしか続きを見ないドラマを決めている。
先に着いて彼を買っている間や、セックスとセックスの間に石原さとみが出ているこのドラマを見る。

ドラマは見ないって言っていた彼が、このドラマだけはあらすじが分かるようになった。

毎日多分彼なりにマメにLNEくれて、会いたいって思ってくれて、私のこと大切にしてくれてるの知ってるのに、なんで「好き」だけはダメなの。

言っても言わなくても私は君が好きで、君は私が好きじゃん。

でも、それから会えなくなった。
2度、急に体調不良になって、2回目は私が家を出る直前、玄関の鏡の前で、
「今から行くよ」の私のLINEに
「ごめん、体調悪い。今度にしていい?」
って連絡がきて、悲しいのか腹が立つのか泣けてきた。
その時、これで終わろうと決めた。
楽しみにしたたぶん、ショックだった。
数回LINEを無視したら連絡が来なくなった。

それから1年くらい経ったある日、tinderで彼とマッチした。
元々、違うチャットアプリで出会っていたのもあって、私の写真は全然顔がわからないのもあって、彼は気がつく訳はなかった。
彼の写真はチャットアプリままだった。
少しやり取りすると過去の恋愛の話になり

「お姉さんくらいの歳の人妻と付き合ってたことあります」
「そーなんだ!すごい歳の差だね」
「付き合ってたとは違うのかな。でも会いにきてくれていて」
「何で終わっちゃったの?」
「2回くらい俺の体調不良で約束が伸びちゃって」
「彼女が怒ったの?」
「怒られた訳じゃないけど、連絡取れなくなっちゃったかな。」
「残念だったね」

「でも、本当はちょっとタイプすぎてたくさん会いたくなっちゃって会えば会うたびによくないなと思ってやめました、、。」

そうだったのか。
考えてみたら、私が「好き」って言ったのがきっかけで会えなくなったんだ。
好きでも「好き」って言わないことが彼の正義でブレーキだったんだ。

私に会い続けるための言い訳。

私が先に我慢できなくなっちゃったんだね。
せっかく私から離れた彼の幸せを願って夜のうちにそっとマッチを解除しておいた。


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