「休みの日ってどんなことしてるの?」

 人生でいちばん多く投げかけられた質問だと思う。特に、同僚、友人、家族との会話においてまず
最初に問われる傾向がある。
 私はよくこう答える。
「予定のある日は出掛けたり、何もない日は部屋でごろごろしてます」
 何の情報もない回答である。そのようにしているのだ。
 私はむやみに個人情報を明かしたくないと思っている。学生の数年間は、一緒に帰宅する友人たちを途中で撒き続けていた。もちろん彼らを危険な奴だと警戒していたわけではない。むしろ親しくしていた。でもなんとなく拠点の場所を教えたくなかったのだった。
 日常会話でも同じで、自分の個人情報は可能な限り隠しておきたい。私は実際には、休日に彼氏や友人と出掛けたり、買い物をしたり、図書館に行ったりする。けれど質問者と自分の行った場所や交友関係との間には因果関係がないことがほとんどだし、喋ることで私の活動範囲がバレてしまうおそれもある。だから伏せる。その結果、冒頭のような無意味回答をする羽目になる。質問にそこまでの意図はないだろうに。
 秘密主義なのは防犯意識が高いからではない。他人に干渉されたくないからだ。私の内面に触れることを話すと、それを聞いた人は同意したり、反対したり、深掘りしたりするだろう。それらの反応が私に何らかの影響を与えることを懸念している。私が他人について邪推しがちな節があるが故に、より一層そのように考えるのだと思う。
 秘密主義だからといって何も明かさないわけではない。親密な友人には、私の悩みごとや考えごとなど思いっきり内面的なことを喋る。また、日常会話でも、私の個人情報に関わらないことや質問者と明らかに共有できる話題については喋る。今日のご飯、天気、職場の人たちのこと、仕事のこと、思い出話、などなど。そのような話題ばかりでコミュニケーションが成り立てばいいのにと思う。でも内面を語らなければ仲は深まらないんだよなー、難しい。

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