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エンタメ感想文

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映画・テレビ・舞台・本の感想をまとめました
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#読書感想文

村上龍『コインロッカー・ベイビーズ』人間による破壊の衝動

ふと手にとった『コインロッカー・ベイビーズ』。題名は知っていたものの、どういう作品か知りませんでした。 人情的な話かな、と軽く手をとり愕然。 SF小説に、かなりの衝撃を受けました。SF と言っても日常と地続きの SF です。 1日で上巻、2日目で下巻を読んでしまいました。 めちゃくちゃ怖い小説です。 なぜ人間は生きているのか……。 当時の若者の代弁小説の中では、個人としての人間としてだけでなく、人間自体についての問いが投げかけられています。 社会に矛盾を感じる人

有吉佐和子『悪女について』倫理観を整える

1978年に出版された有吉佐和子著『悪女について』。 今読んでもめちゃめちゃおもしろいです。 500ページの大作ですが、27章に分かれていてすごく読みやすい小説です。 有吉佐和子さんのレビューを note で見かけたのがきっかけで今回書いています。 『悪女について』のあらすじ1970年代、女性実業家の富小路公子が日本橋の道路で亡くなる。 どうやら自分の所有するビルから転落したらしい。 自殺なのか、他殺なのか……。 一代で大金持ちとなった公子。大豪邸をかまえ、テレ

恩田陸著『ライオンハート』の感想 - 「時は内側にある」という謎

恩田陸さんの歴史・ミステリー・ラブロマンスの小説『ライオンハート』。 人間が持っている感覚を見事に言語化している小説です。 鳥肌が立つほどゾクッとしました。 どのジャンルかわからない、かなり不思議な小説です。 思い出せない夢小説に登場するキーフレーズがこの2つ。 この2つのキーフレーズは、読み進めるとわかった気になります。ですが、わかっていた気になっていただけで、次の瞬間わからなくなってしまう不思議な表現です。 起きた瞬間、夢を覚えていたはずなのに、ちょっと時間が