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自然に”生かされている”。いのちのエネルギー満ちあふれるチャルジョウ農場へ。

西会津町在住ライターの西道が、Dana Villageの活動を紹介するシリーズ。今回は、Dana Village代表の美農里さんが、おなじく代表を務める「チャルジョウ西会津農場」にやってきました。

草花がいきいきとしている「ジャングル」のような農場

福島県・西会津町。その土地のおよそ9割を山林が占める自然豊かな場所に、「チャルジョウ西会津農場」があります。まわりには田んぼやそば畑が広がり、背のびをしたくなるような大空のもと、ハウスが15棟。

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そもそも、チャルジョウ西会津農場は美農里さんの父・小川光さんが始めたもの。オリジナル品種のメロンやトマト、カボチャ、在来インゲン、ナス、ズッキーニ、食用ホオズキ、雑穀などを栽培しています。また、隣町の喜多方市には30年以上前に同じく光さんが始めて、今は未明さん(美農里さんのお兄さん)が運営している「チャルジョウ農場」があり、ミニトマトやハーブを栽培。農産加工所「そる工房」が併設されていて、ドライフルーツや雑穀もちなどの加工品をつくっています。

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生後8ヵ月のお子さんを背負って、農場に来た美農里さん。生まれて間もない頃から、こうした自然や生産現場にふれられるのはすごくいいなと思いました。

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「ハウス、入ってみますか?」と美農里さんに誘われて、足を踏み入れたそこは・・・

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まるでジャングル!

わたしの知っている畑って、きれいに整って揃えられていて、人の手が加えられた跡があるんですが・・・「チャルジョウ西会津農場」はほどよく野放しにされていて植物のエネルギーに満ちあふれ、野菜たちが好き好きに、のびのびと過ごしている印象でした。

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有機JAS認証を取得し、無潅水栽培を実践。

チャルジョウ農場で行われているのは、お父さんの光さんが30年以上かけて続けてきた「有機農法」。農薬や化学肥料を使わない栽培方法で、日本では「有機JAS認証」という基準をクリアしていないと「オーガニック」という言葉をつけて商品を販売することはできません。もちろん、チャルジョウ農場は有機JAS認証を取得しています。

美農里さん:「見たことない人からしたら、なんじゃこりゃって思うようなハウスだと思うんだけど。この農場の大きな特徴は「無潅水栽培」。文字どおり、水を与えない栽培方法でトマトやメロンを育てています。見て分かるように、ここの土はサラッサラで水はけが良すぎるんです。水をあげてもあげても、ザルのように水が流れてしまう。父は、いろんな農法を実験的に試している人で水を与えない農法もやっていましたから、この土地を任されて、無潅水栽培で育て始めました。」

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ーー 野菜って、水をあげないと枯れてしまうイメージがあるんです。どうやって実現しているんですか?

美農里さん:「穴肥(あなごえ)と言って、一つひとつ穴を掘って肥料を施す方法で育てています。一般的な栽培方法は、トラクターでハウス全体を耕して肥料を撒き、マルチをかけて植えるっていう方法なんだけど…。ここでは毎年、ボランティアスタッフさんたちの力を借りて、手作業で1000個ほどの穴を掘っています。そこに、桜の落ち葉と米ぬかを混ぜた堆肥を入れて、苗を植え付ける。すると、水を一切あげなくても作物が育つんです。一つひとつ穴を掘るのは時間も手間もかかるけど、水分や栄養をたっぷり含んだ堆肥がダイレクトに作物に届くんですよ。」

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美農里さん:「このハウスではトマトとメロンを交互に植えていて、虫や病気が発生するのを防いでいるんです。これは100均で買ったカゴを組み合わせたオリジナルの防獣カゴ。動物に食べられないようにメロンを守っています。」

パッと見ると、あまり手入れされていないように感じるハウスのなかも、実は作物目線でさまざまな工夫を取り入れているのがわかります。

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美農里さん:「これはヨモギ。抜かずにあえて残しているんだけど、ヨモギにつくアブラムシを食べにテントウムシがやって来るんです。アブラムシって、いわゆる害虫って呼ばれているもの。テントウムシが、トマトやメロンについたアブラムシも食べてくれるんです。」

農薬に頼るのではなく、そこにいる植物や虫のちからを借りて、自然本来のスタイルを生かしているチャルジョウ農場。そりゃあ、作物がのびのびと育つわけだ。

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取材中、愛おしそうに目をかけ、手をかけ、野菜たちの具合を見ていく美農里さん。その姿やまなざしは、我が子を見守り育てる母のようでした。

野菜も、人と同じ。植物たちの姿から得た気づき。

美農里さん:「わたしが思うのは、野菜も人も一緒だなということです。人って、毎日何時間も満員電車に乗っていたら、呼吸もできないし、気持ちもしんどくなっちゃいそうでしょ。それは野菜も同じ。ここでは苗を植え付ける株間をひろくとっていて、全ての枝葉が光合成できるようにしているんです。それに、一般的には摘心(てきしん)と言って、作物の成長を促すために芽を摘んだりするんだけど、ここでは実がなるだけ実らせてあげる。摘心すると、間引くことで一つひとつの果実が大きくなりやすいんだけど、その分病気になりやすかったりするんです。そこに行くはずだった栄養分が別の芽や葉っぱに溜まってしまって、病気になってしまう。」

ーー 人間本位の栽培ではなく、本来その作物が育つありのままの過程や姿を尊重されているんですね。その植物が持つちからを生かしているというか…

美農里さん:「そうね。例えばすごく歌が上手な人がいたとして、でもその人は事務職の役割を与えられたとする。どれだけ歌が上手でも、その仕事のなかでは、それが求められない。必要とされていないから、その人が本来持っているちからや能力を発揮することができないの。でもわたしはね、その人が持つ能力やエネルギーがすべて発揮されていることが、その人にとって、人間にとって健康なんじゃないかと思っていて。こうやって植物を見ているとね、そんなことを考えさせられるんですよ。」

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美農里さん:「あとおもしろいのはね、接ぎ木と言って、カボチャとメロンをつなぎあわせて育てているんです。メロンとカボチャを接ぎ木することで、メロンがかかりやすい病気や冷害を防ぐ効果があるんだけど…」

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美農里さん:「多くの農家さんは、カボチャを実らせないように摘果(てきか)して間引いてしまうんです。カボチャの実をとるのが目的ではないから。でもここでは、カボチャを実らせても、メロンの生育に問題がないことを父が発見したので、カボチャもメロンもとれるんですよ。」

ーー 異なる種類の作物だけど、お互いを支え合い、実りをもたらす共生関係にあるんですね。美農里さんがお話されていたように、植物から学べることがたくさんありそうです。

美農里さん:「有機農業に携わっていて思うのは、わたしたちは”生かされている”ということ。都市型の生活だと、自分が働いて努力したらお金が得られて、それで食べものを買ったりして、お金が中心にある生き方だと思うんです。有機って、ただ農薬や化学肥料を使わずに農作物を育てるということだけでなく、いろんないのちと共生していく生き方、世界をより良くしていく仕組み。それが有機・オーガニックの本質だと思います。」

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取材後、美農里さんからいただいたメロンやトマト、なた豆などを自宅で食べてみました。雑味が一切なく、やさしい口あたりなのに味わい深い。口に入れた一つひとつの果実たちが、自分のいのちになってゆくのを感じました。農場を見学させていただいたり、美農里さんからお話を伺ったりして背景を知っているからこそ、一つひとつのいのちに感謝して、より丁寧にじっくりと噛み締めたくなるのでした。

チャルジョウ西会津農場で育った野菜はこちらからそる工房でつくられた加工品はこちらお買い求めいただけます!ぜひあなたご自身の目で舌で、味わってみてくださいね。


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