見出し画像

〈ダーナ・インタビュー〉どこに生まれてもみんなが安心して生きられる世界のために。|チカコ

 しとしとと雨音が途切れない日々。ほんの少しの晴れ間にも必ず「お洗濯!お洗濯!」と洗濯物かごを小脇に抱えて外へ飛び出す。福島県西会津町から Dana Village インターンのナツミがお届けします。

 今年の夏はご縁やよきタイミングに恵まれて、1,000件を超えるお野菜セットを待ち望んでくださる方々のもとへ送り出しています。この西会津町の豊かな自然の中でのびのびと育った農薬・化学肥料不使用の有機野菜たちが、皆様の食卓へも安心な美味しさと笑顔を運んでくれていることを願っています。「メロンちゃん行ってらっしゃい!」と、我が子のように見送る美農里さんの微笑みから愛情を感じています。

 さて今回のお話相手は、農業ボランティアとして約3ヶ月半 Dana Village を支えてくれたチカコさん。チカコさんがいなくなったらどうしよう、と皆が思うほどに彼女の存在は大きかったです。でもそんな彼女は「コミュニティは動くもの」だと言います。静かに未来を見据えたチカコさんにとって、Dana Village で過ごしたことがどんな意味を成したのかお伝えしていきます。


左:チカコさん、真ん中:美農里さん、右:アルナちゃん

チカコ / 農業ボランティア
今年は有機農業・コミュニティ・ヨガをテーマにファーム巡りの旅をしている32歳。
手芸に料理、お菓子作りなどその多彩な趣味でいつもみんなを喜ばせてくれました。日課のヨガや外国語の勉強もコツコツと続けています。

自分の目で見て、心に従う


ーDana Villageに来たきっかけを教えてください。

7〜8年前に地元で私の友達がインドから帰って来た美農里さん(Dana Village代表)を招いて講演会を企画してくれて、美農里さんのことを知りました。以前から気になっていたから、私が大学生の頃に講演を聞きに行きました。

その時にオーロヴィルへ行った人の話を聞くのも初めてで、美農里さん自身にも惹かれていたので、その後 Dana Villageという場所があるなら行きたいとずっと思っていて、「今だ!」という感じです。

ー美農里さんのどこに惹かれたか、講和を聞いて感じたことは覚えていますか。
『手当て』というワークショップをやりました。お互いに痛いところにただ手を当てるという、本当に『手当て』。「よくなりますように」と手を当てると、本当にその痛い部分が和らいで。『手当て』という意味を実体験できて、それに感動しました。

あとは、オーロヴィルがお金じゃなくて自分ができることで回っていくギフトエコノミーで成り立っているというお話をされていて、そういう場所があるということにすごく惹かれたな。

ーなるほど。今回は4月から約3ヶ月半の滞在になったんだよね。「今だ!」のタイミングは何かきっかけがありましたか。
(講演を聞いた当時は)私も実際にオーロヴィルに行きたくて、そこを見てからDana Villageに行こうと思っていました。あとは地元でやっている活動があったり、そのあともバックパッカーでもっと海外へ行きたかったり。

そしてインド・ネパール・マレーシアで農業ボランティアをして、やっぱり日本でも農業をやってみようと思い、静岡の農業法人でアルバイトを経験しました。

海外では本当に持続可能で、環境や人のことを考えて、有機で循環する農業をやっていて。それが日本ではビニールとかプラスチック製品をパッケージングとかに大量に使う。野菜自体を廃棄することももちろんあるという事実を知った時に、たまたま美農里さんがインタビューの中で「食べることは、いのちの転写だ」と話されている記事を読みました。

Danaってご飯でも何でも最後までいただくでしょ。食べ物は種から育種して、自分たちで野菜を育てて、最後まで美味しくいただく。それが本来あるべき姿というか、私が学びたいものだと分かったんです。その時に「今だ!」と思いました。

ー色々な農業を自分の目で見てきたからこそ、自分の中で大切にしたいことが明確になり、やっぱりDana Villageに行ってみようと思えたんだね。来た当初はどうでしたか。
最初の頃は本当に毎日濃くて、学びの連続でもあるし、自然との繋がりを感じまくりみたいな。春はフキやウド、ワラビなど山菜がいっぱい取れて、他にもスギナやカキドオシはお茶、タンポポの葉は天ぷら、ヨモギを摘んでジェノベーゼにしたり。

それで5月末に一度栃木に行った時に、道に生えてるものが全部「え!これ食べられる!」となって。今までだったら何も思わず通っていた道が、こんなに自然からのギフトで溢れていたことに気がつきました。山菜の取れる時期は、スーパーに行かなくても食べられるもので溢れているんです。

いろんん種類の山菜を手に持つチカコさん

ーそれは普段の生活では起こり得ない大きな気づきだね。
普段の暮らしでは何かを作ろうとして、材料が足りないからスーパーに買いに行くけど、Danaの場合は周りにあるものをいただくから、スーパーには2週間に1回とかしか行かなくていいんだよね。

ー常にこんなにたくさんの人がいて、大家族みたいなものなのに。
そうそう。逆にスーパーに行くと、私が欲しいものは何だっけ、必要なものあるかなってなったり。その感覚の転換が面白かったですね。

ー当たり前にスーパーがある生活をしてきたけど、確かにその点では大きく考え方が異なるね。自然に沿った心地良さがあるね。
あるよね。作られたものに頼らないというか、自分で知ってる範囲のものでお腹が
満たされる。

自然とともに、人とともに

ーでは農業ボランティアとしての1日のスケジュールを教えてください。
4〜5月くらいは昼間もハウスの中がめちゃくちゃ暑いわけじゃないから、7時からみんなで掃除して、7時半から朝ごはん、8時半から9時の間くらいで畑に出発します。11時半まで畑で作業して、お昼ご飯食べてまた3時間くらい畑に行きます。

この地域は雪が降るから、ハウスも冬になるとビニールを剥がして、春にまた掛けるんです。ビニール掛けは5月頃の朝の真っ暗なうちにやりました。

そしてだんだん暑くなってくると、活動時間がだいぶ早まりましたね。4時半から7時半まで畑で作業して、朝ごはんのあと、また9時から12時まで畑に行きます。

自然流栽培を取り入れたハウスの中、のびのびと育つお野菜たち。

ー日の出とともに起きて作業して、自然の摂理に合っているね。
ここに来る前は7時とか8時まで寝ていたけど、ここでは自然に外が明るくなると目が覚めるようになって。それも面白い変化だと感じます。

ー日の出とともに起きると気持ちがいいよね。田んぼや畑で育つお野菜たちへも平等に愛情を注ぐチカコさんですが、Dana Villageでの暮らしに感動ポイントはありますか。
美農里さんを始め、Dana自体が愛に溢れた場所だと思う。だから、自然とここに来たみんなもそういう部分が引き出されている気がします。

ナナエちゃんもインタビューで言っていたけど、「ありがとう」が素直に出てきたりとか。やらなきゃで動いているわけではなくて、こうしたらみんなが気持ちいいかなということが、自然と考えられているところだと思います。

ー人に対しても、食べ物に対しても、こうしたら喜ぶだろうなという同じ目線で接するということだね。もちろん自分に対しても。そういう面では、以前と比べて自分の中で変化したことはありますか。
一番大きいのは子どもに対してだと思う。私は一人っ子なんだけど、両親が精神面の話とかをよくしていたから、小さい頃は二人に話を聞いて欲しくて、早く大人にならなきゃとずっと思っていました。しっかりしなきゃとか、話を聞いてくれる人が欲しいという気持ちが強かった。

だから、子どもたちを前にすると全て聞いてあげたいし、全て受け入れたくなって。でも疲れている時は応えてあげられなかったり、嫌なことはお互いにあったりして、それを自分を犠牲にして全て受け入れるのはまたなんか違うと思ったんです。それはそれで子どもたちに失礼というか、対等であるべきところも子ども扱いしているなぁと。

それで、ちょっとずつ「私はこうしたいんだよね」と伝えたり、一緒に遊びたい時は「遊ぼう」と誘ったりするようになりました。そうやって自分の気持ちとも対話しながら、子どもたちにも素直に伝えていくようにしたら、お互いに心地よい関係性になりました。

そうやって日を重ねるごとに関係が変わってきて、私も気持ちの面で楽になったし、たぶん子どもたちも遊びやすくなったんじゃないかと思います。もう可愛くてしょうがないよね。

ーなるほど。長く滞在した分、よりたくさんの人たちとの出会いもあったでしょう。チカコさんを見ていると、一つ一つの出会いを大切にしているのだときちんと伝わってきます。この3ヶ月半の滞在中の出会いは、チカコさんにとってどういうものだったと考えていますか。
Danaを訪れる人たちの中には、迷いながらも何か想いがあって動いている人が多くて、その想いには一人一人から刺激を受けました。

地元ではまだまだヴィーガンや環境へ配慮した暮らしはみんなの当たり前ではなくて。ここに来る人がみんなそういうわけではないけれど、地球をより良くしていこうという同じ想いの人たちが、こんなにもいるんだと安心しました。またDanaで暮らすうちに意識が変化する人ももちろんいて、そういう変化が見られると私も嬉しかったです。

ーお互いの想いを知り、受け入れ合えることが、チカコさんにとって喜びだったんだね。
こうやって旅をしていると、本当に年齢関係なく尊敬する人ばかりで。Danaでの滞在を終えたあとに様々なファームを回っている子たちがいっぱいいるから、今でもその子たちにいいファームを教えてもらって、私も行ってみようと思ったりしています。

青空の下でみんなで「DANA」!!

ー離れても、ご縁を大切にしているんだね。これからもDana Villageで出会ったご縁たちは、みんな繋がり続けていくんだろうな。
(Dana Villageで出会った人たちから)本当にいい影響をいただいています。日本でも海外でも、場所は違えど、もっと生きやすい世界にしたい。どこに生まれてもみんなが安心して生きられる世界を作っていく仲間が、こんなにいっぱいいるんだなぁと思っています。

ーともに暮らすことで、お互いに深く理解し合える仲間となっていくもんね。
うん。大きな家族だと思う。

ーDana Villageから離れた皆さんに、日々成長していくお野菜たちの様子を伝えているチカコさん。その姿を間近で見ているとパワーを感じます。本気でこの世界がもっと良くなっていくように、自分にできることを確実にやっているから。そのパワーは皆さん届いていると思いますか。
「報告してくれてありがとう」「成長が見れて嬉しい」と、連絡が返ってきますね。みんなは2〜3週間だけ滞在することが多いから、私もきっと相手の立場だったら気になるので。

畑で採れるミニトマト「涙の泉」


Dana が教えてくれた場のあり方

ー本当に愛溢れる心の持ち主だと思います。またこの場を作る者たちで伝えていきましょう。そんなチカコさんもいよいよ明日が旅立ちの日ですが、実感はありますか。
ないですね。(ここを離れたら)どうなっちゃうんだろうと思ってる。

ーこのあとの具体的なアクションは決まっていることもあるそうですが、Dana Villageから持ち帰って、これからも大切にしたい想いはありますか。
美農里さんも、Wikさんも子どもたちも、アンナさん(常駐の調理スタッフ)やなっつん(筆者)も、みんな本当に愛に溢れていて、いてくれることで安心できる存在なんです。

だから私も自分を犠牲にせず、自分の気持ちと素直に向き合いながら、みんながお互いに大事に思い合い、安心できる場所を作っていきたいと思っています。

ーチカコさんにはたくさんの家族がいるからね。
本当に心強いなって思う。

やっぱり最初は仕事だと思うと、やらねばならないで変に頑張っちゃった時期もあったから、自分を追い立てるみたいな感じになって疲れちゃったこともありました。

その都度、美農里さんやアンナさんがすぐに気づいてくれて、「大丈夫?」と声をかけてくれました。もちろん他のボランティアたちも。美農里さんはどんなに忙しくても話を聞く時間はきちんと作ってくれる方です。私も話すだけで自分の気持ちに気付けたんです。

そこから自分でも、コミュニティでも、課題ができた時っていい方向に向かうきっかけなんだなと思いました。今までは自分の中で無理してプラスに捉えようとして我慢しちゃっていたけど、その課題に本当に向き合って、じゃあどうしたらいいんだろうと考えるようになった。

コミュニティって動くものだと思うから、その場にいる人によって全然違う雰囲気になるんです。Danaも私がいる今が完成形じゃなくて、その時いるメンバーで作り上げていっているものだから、その変化のきっかけが本当にいっぱいあるなぁって。

だからDanaのそういうところは、今後の自分の生き方としても大事にしたいことだし、自分でコミュニティを作るという段階になった時にも大事にしたいものだなと思っています。無理したり、マイナスに捉えたりするんじゃなくって、いい方向に向かうきっかけだと。

ーチカコさんが自分とじっくり向き合ったからこそ気づいたことだったんだろうね。
それをDanaで教えてもらったので。本当にそういう場を作りたいなと改めて思えたので。来て良かったです。そして(滞在期間を)延長して良かったです。

ーチカコさん、Dana Villageでの3ヶ月半を振り返りながら、お話してくれてありがとう!愛溢れるチカコさんの言葉をしっかり受け止めました。

チカコさん旅立ちの日、笑顔でお見送り。

 私が Dana Village に来たばかりの頃、チカコさんがあの優しい言葉で自分と向き合う時間の大切さを伝えてくれました。今思えば、彼女も最初からそうできていたわけではなかったんだと分かります。自分の中で咀嚼して、課題をプラスに向かうきっかけとし、丁寧に乗り越えてきた。一息では乗り越えられずに、涙を流した日もあったと言います。でもそれを伝承してくれるのが、チカコさん流の愛情なのです。

 彼女を送り出す際、たくさんの方々が駆けつけました。子どもたちも手紙を書いて、お花を用意して。その光景は微笑ましいばかり。チカコさんが彼女なりの愛情を常に周りにギフトしてきたから、こうしてお互いにギフトを贈り合う関係性が築かれたのだと感じました。彼女のような人が叶える世界を見てみたい。私にとってもいつもそばで応援し続けたい家族です。

・・・

前回までの記事はこちらです。


・・・

『本来の自分らしさを取り戻そう』

Dana Village(ダーナビレッジ)は健康回復と自己発見をテーマにした体験型宿泊施設/農的暮らしを共にするコミュニティです。
福島県西会津町に位置しています。

◉有機農業をベースにした持続可能な暮らし
◉健康回復食(エシカルヴィーガン)
◉自然治癒力、回復力を高める生き方の実践

この3つを柱とし、現在はオーガニックメロンや農産物の販売、宿泊、ボランティアやインターンの受け入れを中心に活動しております。

通常の滞在 : 8,500〜
短期間のお手伝い型滞在: 3,500〜
2週間以上のフルタイムボランティア、インターン: 滞在費、食費無料

バイオダイナミック・クラニオセイクラル・セラピー: 初回12,000(2回目から8,000)

代表によるホリスティックヘルス塾: 5,000

アクロヨガWS(滞在者のみ): 3,500

*詳細、申込みは こちら から。

セラピーやアクロヨガのワークショップをご希望の方はご予約時にご連絡ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?