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Helix

デザイン科 修士2年 久保 暖
サイズ可変 人・センサー・モーター

Dancer   :東川歩未 村上亮太朗 HitoMin
Engineer:江川主民


概要


『Helix』はパフォーマーを駆動系の一部として含むインスタレーションです。

同作品は、舞台上で踊る「タクター」、アクターに動きを与える「アクチュエーター」、舞台の側からアクターの動きを俯瞰しアクチュエーターの変数に干渉する「コンソール」の3要素で構成されるシステムです。
それぞれの要素に簡単なルールが割り振られており、ルールを持った要素どうしが相互作用することにより、有機的な動きが生成されます。
プログラム内のエージェントとして、ルールを適用した人間を展示作品の一部に取り込むことで、変化に富んだ表情を見せます。


ルール

天井に設置された19個のアクチュエーターは、変数で設定された時間ごとに、筒状のオブジェクトを任意の位置から舞台上に一つ落とします。
アクターはこのオブジェクトが地面に落ちきる前にオブジェクトに触れなければなりません。オブジェクトはタッチを感知すると上昇移動へ切り替わり、アクチュエーターのもとへ帰っていきます。

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アクターがオブジェクトにタッチするごとに、アクチュエーターがオブジェクトを舞台に下ろす間隔が短くなります。
アクターはオブジェクトを落とさないように振る舞わなければなりませが、オブジェクトを拾えば拾うほどオブジェクトの降下速度(頻度)が上がり、降下しているオブジェクト全てを拾うことが困難になっていきます。

アクチュエーターがオブジェクトを地面に落とす頻度とその場所によって、アクターが舞台上で動く激しさや導線が決定づけられます。
コンソールはアクターの動きを観察し、アクチュエーターが加速しつつアクターがオブジェクトを落とさない瀬戸際の速度を保ちながら、振付として前の瞬間と現時点におけるコンテクストが崩れないようにアクチュエーターの速度変数を手元のPCで調節します。

このように、同作品の中では、アクチュエーターはアクターに、アクターはコンソールに、コンソールはアクチュエーターに対して円環状に影響を及ぼし合います。

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構造

アクター    :オブジェクトをタッチして拾う。
アクチュエーター:タッチされるたびに降下速度を上げる。

この二つのルールが存在することで、「オブジェクトをタッチして拾う」という行為自体が、次のオブジェクトを拾うことを困難にし、振付の緩急を発生させます。

また、コンソールによるアクチュエーターの降下速度の調節次第で、「降下速度はゆるやかだが、アクターの動きが激しい」や「降下速度は激しいがアクターの動きが断続的にゆるやかになる」といった状況が発生し、表出する動きに変化や緊張、緩和を与えます。

例1:「瞬時的繁忙」
アクチュエータが19個同時にオブジェクトを降下させると、アクターは一時的に繁忙状態となり、複雑で速度のある導線に従ってオブジェクトを短い時間のなかですべて拾います。この瞬間は速く激しい振付が生成されますが、その次の瞬間、タッチされて天井へ上昇している19個のオブジェクトと、それを傍観するアクター・コンソールという形が完成します。この場合、一時的にパフォーマンスは激しくなるものの、すぐに動きが過疎状態になります。

例2:「持続的繁忙」
逆に、持続的にゆるやかな速度でオブジェクトを降下させ続け、さらにアクターが等しいペースでそれらを拾い続けると、アクターは立て続けに一定以上の速度を保ちながらオブジェクトを拾いにいくことになり、継続性のある繁忙状態が生じます。また、連続してオブジェクトを降下させる位置が遠い場所であれば、より現在のタッチから次のタッチへの移動に速度を必要とし、さらに激しい振付が生成されます。

このように、円環状に影響し合うアクターやコンソールといった各要素が、現在の別要素からのアクションに対して自身がどうリアクションするか、さらにそのリアクションが別要素に与える影響によって、次の瞬間に起こる出来事が定義されます。

Helixでは、現在実行されている行為が「次の瞬間を定義する行為」となっており、ヒステリシスやドミノのように連続的に次に起こる出来事を規定する、いわばオートポエティックな状態が出力されます。おなじ人数、おなじオブジェクトの降下速度で、おなじ瞬間を繰り返すように感じる瞬間も、システム内部の蓄積された変数や、アクターが持っているそれまでのパフォーマンスの記憶から、違った表情を見せます。このシステムの中では、同じ平面上にいるようで高さが異なる三次元座標のように、同じ時間を繰り返しているようで、螺旋状に時間が進み続けます。

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