時空を超えたメリークリスマス作戦 エンディング その1
時空を超えたメリークリスマス作戦のエンディング。皆さんが届けたプレゼントの顛末。その1です。(思った以上に参加者多くてうれしい悲鳴なんだけど書ききれんかった)
大山ガミのクリスマス
大山ガミは浮かれていた。朝起きたらクリスマスプレゼントとメッセージカードが置いてあったからである。まさかこの歳で貰えるとは思っていなかった。あの内戦を生き延びて良かった。本当よかった。
「なんだこれ、えーと、帽子?」
箱から出てきたのは赤と白のカラーリングが鮮やかな帽子だった。もこもことしていて暖かい。
「なんで、サンタ帽なんだよ…ケーキ屋のアルバイトじゃないんだぞ…」
帽子を学習机の上においてパジャマから着替える。メガネ着装。長くなった髪の毛を束ねて雑にまとめる。しっぽもOK。
「そもそも、クリスマスにしかかぶれないじゃないか…まったく…」
ぶつぶつと呟きながらチラチラと帽子を見る。かぶらないとは言ってないが、かぶってるところを橋田や笹野あたりに見られたら、また何か言われるに違いない。
「あーそれにしても、何だか空気が悪いなー空気入れ替えよるかなー」
独り言が大変多いが、部屋にいるのはガミだけである。立て付けの悪いアパートの窓をガラッと開けるとキンと冷えた空気が流れ込んできた。
昨日珍しく降った雪が少し残っていて、アパートに面した通学路の足元が悪くなっている。
「あー寒いなー」
何度も言うが部屋にはガミ1人しかいない。クリスマスイブだろうが、クリスマスだろうが1人しかいない。
大きな独り言を言いながらサンタ帽を手に取る。
「寒いと風邪ひくしな」
もこもこのサンタ帽を被ってみると思った以上に暖かい。いそいそと姉ちゃんのお下がりでもらった姿見を見る。悪くない。
「意外と似合うな…」
右から、左から、ちょっと角度をつけて、ドヤ顔で、指の感じはこんなもんで。あれ、俺って意外とイケてるのでは?とくるりと回転したところで窓の外の人物と目が合った。
「ガミ君、おはよー!!なになにサンタさん??似合ってるね!」
「橋田!なんでお前が!?」
「え、だってここ私の通学路だもん。知らなかった?」
ガミの受難の1日が始まった。
[大山ガミに、『嫌がって被ってくれなさそうなサンタ帽子』を届けました]
鈴木兄妹のクリスマス①
爆発音が遠く聞こえた気がして鈴木兄妹は裏山を振り返った。遊星のレーダーにも反応はない。
「兄さん、なんか聞こえませんでしたか?」
「聞こえた気がするんだが、特にレーダーにも反応はないな……あ、しまった」
「え?どうしたんですか?」
「見てみろ」
手渡された双眼鏡を流星がのぞき込む。さっきまで何もなかったはずの玄関の前に、きれいにリボンがかけられたプレゼントボックスが4つ置かれている。
「今年もやられたな。さすがはサンタクロースだ。そうそう姿は見せないか」
「ええ…要塞機のレーダーをかいくぐって、いつの間に…非常識…非常識です…」
「とりあえず、中身を確認するぞ」
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「わあ!」
流星は、長時間の屋外監視でかじかんだ手で、プレゼントボックスを開くと、もこもこの手袋を取り出した。レンジで温めるタイプのカイロとハンドクリームも入っている。
半分趣味でやっている銃の分解整備は、心が落ち着くのだがオイルや金属のせいで手が荒れる。特に冬場は乾燥するので困っていたところだった。さっそく手の甲につけて伸ばしていく。サラっとした感触が好みのタイプだ。香りも強すぎず思わず笑顔がこぼれる。
もう一つの箱には、なんだかギラギラとした無線機が入っていた。稲妻のパターンに、竜のイラストが巻き付くように入っている。裏側にはなんだか詩…のようなものが彫られているが、難しい漢字が多くて読みづらい。
「ええと、狂骨…の月狼…恋花…ルビが小さくすぎて読めませんね…無線機で、連絡を取って来いということでしょうか?」
「お、なんだそれ、かっこいい無線機だな」
「兄さん、なんて格好をしてるんですか…」
遊星は餃子柄のはんてんを着込んでうれしそうにしている。
顔がいいだけに、残念さが3割増しだ。
「見ろ。この絶妙な色使い!なぜかクリスマスに餃子をチョイスするセンス!やっぱりサンタクロースはすごいな」
「はっきり言います。絶対に絶対に絶対に部屋の外ではその恰好で出歩かないでください!」
「このセンスがわからないなんて残念な女だな」
「な……もう、絶対にサンタクロース探しになんて付き合いませんからね!」
「まあそう怒るな。ほら、これ2着あったから1着やるよ。来年はこれを着れば寒くないぞ。さすがのサンタクロースも、同僚のトナカイには警戒心を緩めるだろ」
遊星の手にはトナカイの着ぐるみが握られている。ご丁寧に赤い鼻のオプション付きだ。
「はっきり言います!お断りです!こういうのはゴンさんと一緒に着てください!」
[鈴木流星に、『ふわふわモコモコな手袋とチンして繰り返し使えるカイロとさらさらしたタイプのハンドクリーム』『オサレな無線機』を届けました]
[鈴木遊星に、『餃子柄のはんてん』『トナカイの着ぐるみ二人分』を届けました]
神室会長と水前寺南野のクリスマス その1
「ナンノちゃん!みてみて、プレゼントが届いたよ!」
「へー何々。うわ、結構すごいじゃん」
「これはおじいちゃんたちから。で、これは倉敷の工場の人たちからみたいだね」
「今年のクリパは盛大にできそうだねーあれ、友美、ここにあるの差出人書いてないよ」
差出人不明の物資が届くことは珍しくはない。ヤオヨロズを応援者には表立っては支援をできない人たちもたくさんいる。
ただ、こういった物資のうち10回に1回くらいはろくでもないものが入っているので、警戒が必要だ。
盗聴器なんてものはかわいいほうで、爆弾やら毒物やら発禁もののメディアやら、ちょっと人には言えないようなものが入ってることもある。
「ああ、それは今朝、スティーブ君がチェックしてくれて大丈夫だって」
「へーそうなんだ。あ、これ友美個人宛じゃない?ははーん、さては熱狂的なファンがついたな」
「え、ええー…あ、これはナンノちゃんあてだよ!」
「え、いやー美少女JKはつらいね。せっかくだから開けてみようよ」
「うーん、でも…物資はみんなと分け合わないと…」
「いいの、いいの。個人あての贈り物なんだから、ちゃんと受け取らないと逆に失礼だよ」
「そういうもんかなあ」
神室友美が迷っている間に、水前寺南野は贈り物をどんどん開けている。
「お、いいじゃん。くまちゃん柄の手袋。かわいい!」
「わあ、毛糸?あったかそう。って、ナンノちゃん、なんで私宛のプレゼント開けてるの?」
「ふっふっふ、クリパ執行官様にはプレゼントの検閲権が認められているのだー」
「横暴だよ……」
「お、こっちは…ポスター?友美の去年のサンタの恰好のやつだね」
「ええ……こんなポスター作ったっけ?」
「あーなんか、委員長が友美の写真くれって言ったから渡したような……」
「ナンノちゃん」
「あーごめんごめん。せっかく可愛いく撮れてるんだから貼っておこうよ」
「生徒会室に自分のポスターを貼ってる生徒会長って変じゃないかなあ。流星ちゃんにまたはっきり言われちゃうよ……」
水前寺南野はまったく意に介さず、ぱぱっと生徒会室の壁に大きなポスターを貼ると、次のボックスを開けていく。
「これは、えーと、フライドチキン?」
「揚げたてみたいに見えるね。すごい。民間の技術も進んでるんだね……これがあれば……」
「あーはいはい、仕事モード禁止」
「あ、ごめん。こっちは冷たい……クレープだ」
「みかんのクレープなんて、珍しいじゃん。せっかくだから出来立て?っぽいうちに食べちゃいなよ」
「ええ、私だけ悪いよ。お腹すいたけど」
「腹が減ってはJKはできぬってね。いいのいいの。どうせ急ぎの仕事もないんだし。おやつタイムにしよ」
水前寺南野は、ぱぱっと机の上を開けると、フライドチキンやクレープと一緒にクッキーやおにぎり、春雨スープを並べる。
神室友美は、お湯を沸かすとミルクティを二人分淹れた。ティーバッグを入れるとミルクティになるお手軽なやつだ。
「いただきまーす」
「ナンノちゃん、こうやってクリスマスにコンビニのフライドチキン食べると去年を思い出すね」
「あーフラチキ買って食べたねー」
女子二人のささやかなクリスマスパーティはまだまだ続く。
[神室友美に、『クマちゃん柄の毛糸の手袋』『会長がサンタの格好したポスター』『フライドチキン:明らかについさっきコンビニで買ってきたフライドチキン。』『みかんのクレープ』を届けました]
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