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時空を超えたメリークリスマス作戦 エンディング その2

時空を超えたメリークリスマス作戦のエンディングその2です。

京極晴也のクリスマス

京極晴也は専用にチューンナップされた近接機・頼光で縦横無尽に月夜の戦場を駆けていた。

「ははは!」

ドローンを唐竹割りに叩き潰し、むちむちタンクの斉射をジャンプでかわすと、そのままトップアタックで装甲に飛び乗り刀剣を突き刺す。

爆風を切り裂いて現れるとすれ違いざまに鬼畜キャノンをまとめて2機撃破した。

レーダーは敵を示す赤い光点で埋め尽くされつつある。倒しても倒す端から出現する敵の群れ。

「クリスマスだというのに、ずいぶんと仕事熱心だね」

幾度目かの被弾で内蔵をやられ、コートは晴也の血で真っ赤に染まっている。人工人間は痛覚をコントロールできるが、晴也は感度が鈍ることを嫌ってコントロールを抑えていた。

一瞬、遠のきかけた意識の向こうから稼働限界時間のアラートが響く。あと1分。
ふと気が付くと目の前には、洋菓子の詰め合わせが置いてあった。安堵の息を吐く。

「どうやら間に合ったようだね」

首を振って意識を戻すと、近づいてきたタンクを左手のハンドガンで黙らせ、包囲の1部を切り開いて急斜面の崖をかけ上った。

フィナンシェを1口。しっとりとしてうまい。しかしこのタイミングで送り付けてくるとは。さすがは変人サンタクロース。いつか何としても変人の館に招き入れたい。

発射体制に入っていた眼下の鬼畜キャノンに向けて残った刀をなげつける。爆発。密集が仇になった。次々と誘爆。

光に紛れて要塞機を山中の大きな洞窟に隠すと、コクピットからゆっくりと這い出した。

目の前には物資運搬用と書かれた大きなソリが鎮座している。ソリの上にはプレゼントボックスが置いてあった。血にまみれた震える手を精神力で止めると、ゆっくりとボックスを開ける。

「くっ、ははは、これだから」

腹の傷が痛むのに、笑いが止まらない。

「ちょうど寒かったところだ。ありがたくいただこう」

出てきたのは真っ白なブリーフだった。清潔感の塊。全く戦場には似合わないおろしたてのブリーフだ。破れかけのふんどしの上からブリーフをはく。

遠くから断続的な破壊音が響いてきた。

「あとはサンタクロースたちに任せるとしようか」

食べかけの洋菓子の箱をソリの後ろにのせ、晴也は一気に斜面を駆け下りていった。
[京極局長に、『洋菓子詰め合わせ』『ブリーフ』『サンタ活動用のソリ』を届けました]

スティーブ・ウォーカーのクリスマス

スティーブはボロボロになった要塞機の前で、受け取ったプレゼントを広げて目を輝かせていた。

「オゥ!フンドシ!日本の文化ですネ!」

出てきたものは褌。それも越中と呼ばれるタイプのものである。

「デモ、困りましたネ。つけかたがワカリマセン」

「お、スティーブ。何してんだ?」

褌を広げて右往左往していると、権田原峰典が声をかけてきた。いつものパーカーにハーフパンツ。スニーカーだけが新品だ。

「サンタさんからプレゼントをもらいまシタ!サムライパンツ!フンドシデース!」

「なんか、ずいぶんマニアックなもんもらったんだな…」

「アニメ、巨大ロボット、フンドシは日本の文化ですネ」

「まあ文化は文化なんだろうけどよ…」

頭を掻きながらスポーツドリンクを一息に飲み干す。走ってきたのか息が荒い。

「ところで、ミネノリはフンドシのキツケできますカ?」

「ん?着付けってもんじゃねえが、つけ方はわかるぞ」

「ぜひ教えてほしいデース!日本の文化をぜひ体験したいデース!」

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山村雪乃は、権田原峰典を探しに格納庫を訪れていた。提出してもらった書類に不備があったから訂正印をもらいに来たのである。

格納庫からはかすかに権田原と、特徴的なスティーブの声が聞こえる。

「あ、権田原君…よかった」

と、声をかけようとしたところで聞こえてきた声に驚き、扉の陰に隠れた。

「ほら、もっと締めろって!」

「オゥ!ミネノリ、キツいデース!」

「馬鹿野郎。お前がやりたいって言ったんだろ!ぐっといけぐっと!」

(え、え??なになに?えええええ?)

顔を真っ赤にしてうずくまる。そういえば、この前廃墟から拾ってきた昔の漫画には、こう、男の子同士の恋愛ものというジャンルもあって…

「ミネノリ、ちゃんと締まってますカ?」

「おう、後ろはばっちりだぜ!」

(あうぅ…私にはまだ……まだ刺激が強すぎるよぅ…)

音を立てないようにゆっくりと立ち上がると、ばれないようにそっと離れていった。

(男の子って…男の子ってわからないなあ…)

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「ん、スティーブ、今なんか音しなかったか?」

「ホワット?いいえ、何も聞こえませんでしたネ。それよりどうですカ!」

スティーブはびしっと褌を締めて、両手を組んで立っている。骨太でがっちりしているので、ふんどし姿でも貧相には見えない。

「おお、いいじゃねえか。これぞ粋とイナセってやつだな」

「また一つ、日本の文化を体感できまシタ。感無量デース」

「やっぱり日本男子たるもの、褌だよなあ。せっかくしばらく戦闘なさそうだし、遊星たちも誘って寒中水泳大会でもするか」

「オゥ、いいですネ!お神輿も担ぎまショウ。ワタシは山から丸太で滑り降りてくるオマツリを体験してみたいデスネ!」

「あれは死人がでるやつだぞ…」

すっかり上機嫌のスティーブは、この日以来フンドシ愛好家となり、生涯フンドシをはき続けることになる。

また、この後しばらくして山村雪乃が一人で抱えきれなくなり、水前寺南野に相談することでまたひと悶着あるのだが、それはまた別のお話。

[スティーブ・ウォーカーに『褌』を届けました]

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