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時空を超えたメリークリスマス作戦 エンディング その4

エンディングssその4 ゴンちゃんとイマイマイちゃんです。

ゴンちゃんとイマイマイのクリスマス

権田原峰典は、明るい朝の日差しを浴びながら、鼻歌混じりに川沿いを走っていた。

日課になっている早朝訓練のために学校に行ったところ、個人ロッカーにプレゼントが2つ届いていたのである。

ひとつはランニングシューズ。ひとつはサッカーの観戦チケット。誰かわからないが気が利いている。

(クリスマスにプレゼントが2つ。これはモテ期きたんじゃねえか)

遊星、遊星はどこだ!と思ったが、遊星はどうせギリギリにしか登校してこないので、諦めて慣らし運転がてら走ることにした。すまんな、親友。俺は先にモテ期に向けて走り出す。悪く思うな。

校庭は昨夜の雪でぬかるんでいたので、外に出て大きな川の土手道を行く。
遊歩道としても整備されているその道は、選べば水溜まりを避けて走れそうだった。いきなり汚れたらもったいないし申し訳ない。

新しいランニングシューズは軽くて、足にすぐに馴染んだ。少しスピードを出して負荷を上げる。いい感じだ。

最後に軽く流して朝の訓練を終えると、下駄箱前を歩くイマイマイを見つけた。何やら片足を引きずっているように見える。

「後輩!どうした?怪我でもしたか??」

心配して駆け寄ったところで、靴がちぐはぐになっていることに気づいた。
片方はローファーなのに、片方はずいぶんきつそうな赤いブーツだ。

「ゴンさん!聞いてください!サンタさんが!サンタさんが来たのであります!」

一方、イマイマイは嬉しそうにはしゃいでいる。こうしてみると無邪気な小学校低学年にしか見えない。

「起きたら枕元にこのブーツとお菓子がおいてあったであります!」

「そうか、よかったな。でもなんで、その入れ物をはいてんだ?」

「それが、サンタさんが慌てていたのか、ブーツは一足しかなかったのであります。でも履かないのも申し訳ないので、今日は一日片方だけでもこのブーツで過ごそうと決意したであります」

「あー、その…そのブーツは入れ物だ。はくためのものじゃない。というか、よくそのブーツでここまでこれたな」

「え、そうなのでありますか!?どうりで歩きにくかったような…」

明らかにしゅんとするイマイマイ。そういえば、自分も昔はクリスマスのたびにお菓子用のブーツに足を入れていた気がする。まあこれもクリスマスの伝統のようなものなのかもしれない。やりたいことはやったほうがいい。内戦が終わったとはいえ、いつ死ぬかなんてわからない。

「そうだな。5分くらいここで待ってろ」

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「ほら、これで1組そろうだろ」

5分後、権田原峰典は右手にお菓子の入ったサンタブーツを持って戻ってきた。

ブーツをイマイマイに差し出す。

「え、そんな、クリスマスにサンタさん以外から、もらう理由がないであります」

「いいんだよ、売れ残りの割引品だったしな」

「うう……これは……子ども扱いでありますか?」

「いや。今まで俺が子ども扱いしたことがあるか?」

「ない……はずであります」

「そうだろ。クリスマスっていうのは仲間同士でもプレゼントを贈ったりすんだよ。ほら、このランニングシューズも誰かはわからないけど、誰かからの贈り物だ」

「仲間同士……そうなのでありますか。それなら納得であります」

恐る恐る受け取ると、お菓子を取り出してブーツに足を入れる。
不格好だが、両足がそろった。

「どうでありますか?」

「なんだかバランス悪そうだな」

「そうでありますね、これでは走れないであります」

「何事も経験だ。経験を積むと視野が広がる。視野が広がればいろいろなことに気が付くもんだ」

あの内戦では、経験を積むこともできずに死んでいくやつらがたくさんいた。経験は詰めるうちに積んでおいたほうがいい。楽しい経験が多ければ、まあ生きのころうとする意志も強くなるだろう。

ひょこひょこと歩くイマイマイとロッカールームに向かう。

「経験といえば、後輩はサッカーを見たことあるか?」

「11人で対戦する足だけで戦う球技ということは知ってるであります」

「見たことは?」

「う……まだないであります」

「そうか、じゃあ来月見に行くか」

と、懐から二枚のチケットを取り出す。地元のクラブチームと、そこそこ有名な大阪のクラブチームが対戦する試合だ。

「行ってみたいであります!」

「よし、じゃあそれを楽しみに今日もがんばるか。あとルールも覚えるぞ」

「はいであります!」
[権田原峰典に、『ランニングシューズ』『サッカーの観戦チケット』を届けました]
[イマイマイに、『お菓子のたくさん入ったサンタブーツ』を届けました]

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