【うちの子創作-E000】此迄之荒筋。【その4】

 本懐を遂げた後には、だいたい燃え尽き症候群が待っている。

 ……とはいうものの、カスガにとってはこれから先の人生のほうが大切なのである。この身体を孫や子に囲まれて老衰で安らかに死なせることが本来の第一目標であり、ピュージュへの仇討ちはその道程に含まれるミッションのひとつに過ぎないのだ。
 それより何より、生き返しからこれまでの流転の生活はオーガの身体とはいえ流石にキツすぎた。そろそろ一つ所に居場所を定め、穏やかな生活を送ることが許されてもいいはずである。

 思い立ったが吉日。
 カスガは早速、住居を探し始めることとなった。

 幽霊屋敷騒動から縁のあったアズラン住宅村の一角を買い上げ、大工の一団と相談を重ね、広くゆったりと、それでいて霊的にも堅牢な最高の住居を建て上げた。
 プライベートコンシェルジュには訳ありの少女が送られてきたが、平和的な話し合い(意味深)が功を奏し、最良の結果を迎えることができた。
 近所付き合いの滑り出しも至って良好。カスガはここに「祈祷師」の看板を掲げた冒険者として、再スタートを切ることとなったのであった。

 ここから先の話には、華々しくも勇壮な戦いのエピソードは頻度を落とすこととなる。生活に密着した霊跡の調整や細かな物品のお祓いなどが依頼の中心となってしまっては、それも当然ではあるのだが。
 強いて言うなら、オーガのカスガが生前大事にしていた楽器の回収事件やグランゼドーラ王室からの召喚事件、プクレット村の行方不明(?)事件などがわずかに目立つ程度であり、ピュージュを追っていた頃の張り詰めた空気はもはや影も形もない。カスガはついに、穏やかな日々を得ることに成功したのである。
 それでもたまに、本当にたまに奇妙な出来事へ首を突っ込むことになる。陽衆の頭領が面白がって回した案件や、レンジャー協会が匙を投げた地縛霊の一件などは、派手な活劇こそないものの実に数奇な終わりを迎えることとなった。

 霊魂と関わることを生業とする。
 望んだわけではないけれど、それがカスガの選んだ生き方なのである。

 さあ。今日もポストに、依頼が一件。

 【Part-Dusk Dawn】

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