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文芸投稿誌「文芸本陣」1993年秋号について

1992年に会が発足、翌1993年2月に創刊、全9号まで作った文芸投稿誌「文芸本陣」。1993年秋・第3号の特集テーマは「ラブレター」でした。写真は目次と表紙と下記の巻頭の文章です。30年前の文章なので若い方には不思議な内容ですね(笑)。文芸本陣は「かたびら・スペース・しばた。」で無料で差し上げています。
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特集 ラブレター

電話のすぐあとで手紙が着いた
あなたは電話ではふざけていて
手紙では生真面目だった
〈サバンナに棲む鹿だったらよかったのに〉
唐突に手紙はそう結ばれていた
(集英社刊 谷川俊太郎詩集「手紙」より)

 これは、谷川俊太郎の詩「手紙」からの引用です。現代の私たちは様々なメディアを獲得しました。アメリカでは、何千キロも離れた別の場所の人々と「双方向テレビ」を通して話しながら酒を呑む「エレクトロニック・カフェ」が流行しているといいます。日本でも、パソコンの前に座り、毎晩遠くの誰かと、情報を交換しあう「通信ネットワーク」が隆盛です。そして、恋人たちは「ポケットベル」で待ち合わせ場所を指定し、連絡をとりあいます。
 私たちはすっかり「手紙」を書かなくなりました。ましてや、愛の告白など、証拠の残る「手紙」になど、しない方が頭がいいと言われるのかもしれません。ゆえに、愛を伝える手段として、「ラブレター」ほど誠実な手段はないと言えます。また、言葉を練り、全身全霊を傾けて愛を伝えているのに、当人の声も姿もそこには無いのですから、これは「ずるい」方法とも言えます。
 しかし、たとえ「ずるい」といっても、愛する心が本物ならば許されるはずです。後で心が冷め、「ああ、あんなこと書かなければよかった」と思ったとしても、あの頃の、その気持ちは本当だったと、あきらめて、自分を笑ってしまいましょう。
 会員制文芸投稿誌「文芸本陣」は「手紙」によって成りたっています。遠く離れた仲間同士が互いに思いを伝えあう。その集大成が「文芸本陣」です。
 サバンナに棲む鹿には成りえない私たちは「想い」を伝える為に、仕方なく「言葉」を綴ります。
 「文芸本陣」一九九三年秋号の特集は「ラブレター」です。

「文芸本陣」編集部

文芸本陣 私の横浜 新岳大典 柴田裕一 近藤博昭 ラブレター 可久鼓桃 増茂光夫 吉村京花 国代豊歳 金子寿彦 写楽は保土ヶ谷にいた 保土ヶ谷宿 文芸投稿誌 文芸同人誌 同人誌 横浜独立共和国

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