闘病日誌・「妻を帽子と…」/オリヴァー・サックス…紛れも無い妻と妻との愛

9月・初秋…暑さのまだまだ厳しい当月の中旬・下旬。

その期間はこのK3病棟には平和で穏やかな時間が流れていた。

学校教室・一個分はある大きなホール。そこから反対側ホールへと通じる四角周の廊下。

辺りは日中でも光光と照明灯が照らされている。そして外部からの日光は遮断されていた。

私は今閉鎖された場所にいる。そしてそこで心の「内奥の闇」と闘っている。

それは恰も(あたかも)地下街での暗い暗い余興?イベント?のようだった。

〜〜〜

彼女は美しい。

私の心は彼女へと向かい、そして彼女との交流に、又はその会話一つ一つに、私のこの入院生活での興趣を見出していた。

以前note記事でネット上にアップした薬物患者・更生・療養中のAさんだ。

「これ、ググってみ。面白い記事が見つかるよ。」私は彼女にメモを手渡した。

そこにはキーワードが2つ走り書きしてある。

科学性のあるスピリチュアル情報?。私の精一杯のとっておきのネタだ。

そして且つ、それは私が彼女に示す最高の敬意である。

「へーっ、嬉しいわ」

そう言って彼女はお礼を言った。素直でかわいい。

情報価値の有無には懐疑的だが、取り敢えず嬉しそうだった。

年の頃はアラフォー。私も成り上がっていれば、彼女のような女子と人生を送っていたかもしれない。

その時私は、無性に彼女が欲しくなった。

会話の方向性はお互いの「情報交換」と「交流深化」になると、当初私は予想していた。

しかし…

①、吉田の薬物への、彼女への、恐怖心(要するにビビってる。)

②、Aさんのプライド…元ヤンキー調の彼女にとって、私は明らかに一般人であった。そして彼女の、平々凡々な吉田を相手にしていることへの不満?。

のために、話は少しぎこちなかった。そして明確さに欠け、一歩踏み込んだ話にはならなかった。

<話の内容…レコード(大雑把に)>

①、彼女の思惑(吉田の憶測も、、)>

・今後再起を目指すこと。その手段としてモノを書いて成り上がることに意欲的(私も彼女には逞しさを感じる。)

・吉田に支援ツールとしての価値を見出している?しかし吉田ゲットの為の甘いアメとして、恋愛感情はチラつかせていない…極めて清潔・クリーン。

<吉田の思惑>

・彼女に対して結婚・恋愛・友達付き合いの野心はない?…てか怖い。

・しかし、いっそのこと芸術・音楽・社会事業というジャンルで、本格的にライフワークを見出すことを強く願っている。

〜〜〜

彼女は当時、ファッション誌を飾る美女子であった。

かなり活躍したらしい。明るい声のトーン・端正な身体つき。

もう絶頂期の頃のような若さは無いが、彼女は本物だ…私も思う。

しかしなぜ、ビジュアル系女性として頂上まで上り詰め、その後堕ちるところまで堕ちてしまったのであろうか???。

〜〜〜

彼女に再起して欲しい❣️。

たとえ「私の知覚に正常な機能が失われて」、彼女の美しさが色褪せて映ったとしても。

その時には、私は彼女のことが大好きな私を取り戻す為に、アイデンティティー…私は彼女が好きだから私なんだよ(=自己同一性)を完全に繋ぎ止めよう。

人間の謎…たとえ彼女の美を感受する記憶・精神活動・思考力が壊れても、彼女の美を愛する私の魂(:id?)は失われない。

たとえ最高の時は失われても、彼女は彼女をとびきり愛する誰々かと、穏やかで幸せな時を暮らす。

〜〜〜

♫「マリーゴールド」/あいみょん

盛りを過ぎた、落ち着いた恋、幸せ。この曲が大好きです❣️。

<この楽曲と「妻を帽子と…」・吉田の解釈>

「妻を帽子と…」では、旦那である彼の脳損傷による知覚機能の障害により、彼は妻を帽子と認識してしまうようになる。しかし脳損傷前に彼が持っていた妻の記憶により、彼の「紛れも無い妻」に対する特定能力は、彼の魂(=id?)の中にしっかり存在している。

そしてこの楽曲…マリーゴールドでは、色褪せてしまった君・一度は君から離れてしまった彼についての悲しみを歌うが、それでも過去から現在へと脈々と流れる二人の強い愛・絆を歌っている。

この「妻を帽子と…」と「マリーゴールド」、一見何の関連性も無さそうだが、この二つを妻と旦那を繋ぎ止める「知覚機能の、記憶・追憶」の妙・「過去の記憶のかけがえの無さ」の妙に関してアナロジーを見出すと、とても面白い…かも?。

<「♫マリーゴールド・闘病日誌ストーリー」の関連性、吉田の解釈・追記>

彼女の過去の栄華。色褪せた現在の彼女。しかし知覚常識を180度ひっくり返してみよう。すると「彼女の美が損なわれた」のではなくて、「妻を帽子と…」の症例のように、「旦那の知覚機能が損なわれたのでは無いか?。」だから色褪せて見えるのは彼の知覚障害?。妻の美は永遠?。この様な現実の混乱の中、お互いに欠けたモノを、お互いにフォローしながら生きていく。そんな悲しみに似た、しかし暖かい男女の絆・愛。それが私の、あの楽曲マリーゴールドの解釈であり、闘病日誌で描きたかった、私の、彼女(=Aさん)に対する、彼女の永遠の美へのフォローです。

<参考…「妻を帽子と間違えた男」/オリヴァー・サックス>

・脳神経内科医のオリヴァー・サックスの著作。脳神経の障害を起こした患者が、奇妙奇天烈な症状を起こす。その症例集。トウレット症・コルサコフ症・サヴァン症・ダウン症。

・「①、妻を帽子と…」具体的内容・この書のタイトル。

→脳損傷により、具体的なものの認識能力を失い、抽象的把握能力を残した症例。

・「②、漂う船乗り」具体的内容・私がアイデアを拝借した先。

→1945年で記憶が止まった男性ジミーの話。新しい記憶は数秒間しか持続しない。「人生に何も感じない」というジミーを、オリヴァー博士は「失われた魂」と評した。しかしそのように器質性障害(身体の器性の障害)が酷くても、芸術や祈りによって人間らしさを回復することが可能であることを示した症例。

その他 ③、身体の無いクリスチーナ ④、大統領の演説 ⑤、追想 ⑥、皮をかぶった犬 ⑦、詩人レベッカの使用例等…。

                  了

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