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夜が明けたら、お姉ちゃんになります。

もうすぐ娘と2人の5日間が終わります。
夜が明けたら、お姉ちゃんになります。

火曜日の夜、第2子を妊娠中の妻が破水、まだ予定日は1週間先だったので、突然の出来事でした。
トイレで「やばい、水が出てきた!」「やばいやばいやばいどんどん出てくる!!!」聞いた僕はパニックになりましたが、防水シートに下半身をくるんで椅子に座り、自分の身に起こっていることながら、中堅の看護師らしく周囲(自分の夫)に的確に指示を出し、最小限の動きであらかたの準備を整えてタクシーで産婦人科に行ってしまいました。
あたふたしながらも指示通りにタクシーを呼び、着替えや化粧品、冷蔵庫に備蓄していたウィダー・イン・ゼリー(準備がいい!)などかばんに詰める僕を横目に、3歳の娘(以下、長女)も、ただごとではない、いや、もうすぐ赤ちゃんが生まれるんだ!とまで察した様子で、自分も動かないと、と、司令官の指示のひとつであるタオルなどを出してきてくれました。

そのときは、「すごいねー、さすがおねえちゃんやねー、ありがとう」などと褒めてあげる余裕もなく。
タクシーに乗り込む妻が最後にひとまず抱っこして、「はるちゃん、かあちゃん少しいないけど父ちゃんとがんばってね」と言葉を残して行ってしまいました。
そのときも、泣いたり悲しんだりする様子もなく、一緒に行きたいとぐずることもなく、「タクシーいいねー、バイバーイ!」と気丈に振る舞って(?)いる姿に頼もしさを感じました。
ほどなくして無事、2740グラムの女の子が生まれたと、分娩台での写真とともにLINEが来ました。ひとまず、安心です。
しかしコロナの影響で、退院までは面会できないことになっていました。

そこから5日間、長女と2人での生活はいろいろと新鮮でした。
保育園はコロナの影響でこのところ断続的に休園を繰り返していましたが、今は通常通り保育をしてくれていたので、特に実家の両親の助けなども借りず会社にも行くことができました。
休みの日は朝昼夕と、自分と長女の食べる献立を考えて作るのは、適当さが一人暮らしを始めたときに戻ったような感覚で、気楽に過ごせました。
デザートのいちごを食べていて最後にひとつ残ると、これおかあちゃんに残しといてあげるー、と。なんて優しいの!!
娘の遊び相手をしつつ(疲れたらYoutubeを見せつつ)、自分のしゃべり相手が欲しくて分かるはずもない仕事の話を適当に話しかけると、「それなに?なんてゆうたん??」と思ってた以上の熱量で聞き返してくれたり。

朝夕、ときどき思い出したように「かあちゃーん」「かあちゃんにあいたいー!!!」と堰を切ったように泣きましたが、
「うんうん、さみしいなー。もうすこしで会えるからなー。」となだめると、自分の中で整理をつけて飲み込んでくれているようでした。

3歳になり、同じクラスのお母さんが赤ちゃんを連れてお迎えに来るといちはやく飛び出してかわいがり、自分の母親のおなかが大きくなってくると、「はるみちゃんもあかちゃんうまれるのー!」とうれしそうに先生に報告していた長女。ひたすら自分の弟か妹に会える日を心待ちにしていたかと思いましたが、しかし、家に少しづつ赤ちゃん用品が増えて、自分の着替えの場所が微妙に配置換えされていたり、母ちゃんがお腹を気にしてあまり思うような反応をしてくれないときには、かあちゃんを取られる不安からか(きっとそんなに単純な感情じゃない!)戸惑いの表情を見せることもありました。
妻が入院中で会えないこの4日間も、送られてくる次女の写真や動画を見せると、「かわいいねー、はるみちゃんよしよししてあげるの!」と言ってみたり、わざと興味のないふりをしてみたり。
おねえちゃんになる感覚はまだ生まれていないのかもしれないけれど、複雑な感情を受け止めているようでした。

そして日曜日。夜が明けると、いよいよ退院の日です。
一緒に病院に行くために、もうすぐ広島からおばあちゃん(妻の母)が朝イチの新幹線でやって来ます。
僕にとっては長女と2人だけの時間は終わります。

僕自身は、新しく生まれた次女に初めて会える喜びと、2度目の出産を無事に乗り切ってくれた妻への感謝はもちろんですが、長女がどんな顔をして妹に対面するのか、どんなお姉ちゃんの表情を見せてくれるのか(もちろんまだ全部受け止められないと思いますが!)楽しみと緊張が渦巻いています。

もしかしたら、長女と2人で5日間も過ごすことなんて人生でもうないかもしれない。そう考えると、終わってしまうのは少しさみしい気もします。
またきっとドタバタの日々が始まりますが、この宙ぶらりんのような5日間を忘れずにいたいなと思いました。
娘が大人になって、昔、母ちゃんしばらくいなかったときあったけど、父ちゃんと2人で楽しかったねー、と、覚えてくれている未来を少し妄想しながら…



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