2つのGoogle Payと2つのGoogle Walletの話

Google Payがflutterで書き直されたという記事(英語)が自分のタイムラインで少し話題になっていました。とても紛らわしいのですが、これ日本でインストールできるGoogle Payアプリとは全く別のアプリの話なんですよね。

実は自分は3年ほど前にGoogleの決済関連のチームで働いていたことがあるので、ちょっと説明記事を書いてみようかと思いました(記事の内容はすべて公開情報に基づいてます)

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ビジュアルのほうが理解しやすいかと思うので上図に歴史的経緯をまとめました。上図はGoogle Payに関するAndroidアプリの変遷の様子です。

アメリカ・日本などでのGooglePay

まず2011年にGoogleはGoogle WalletというNFC決済のアプリをアメリカでリリースしました。このときは特定のハードウェアに依存したアプリケーションになっていたためNexus Sなど一部の機種専用のアプリでした。

2013年、GoogleはAndroid 4.4の機能としてhost-based card emulationという技術を発表。これはソフトウェアベースでNFCの動作を制御できるというもので、これによって専用のチップを積まない携帯端末でもNFC-A/Bでの決済ができるようになりました(余談ですがおサイフケータイに使われるNFC-Fは別規格のためこの時点でもまだ高価な専用チップを必要としていました)

またGoogle Walletの機能追加は進んでおり、2013年には個人間で送金できる機能が追加されました。

2014年、AppleがApple Payを発表。先行するGoogle Walletを追い抜き、コンシューマの認知度No.1のモバイル決済手段になりました。

2015年、GoogleはGoogle Walletをリブランドし、Android Payとすることを発表。風の噂では、Apple Payと似た名前にすることでコンシューマの認知を図る作戦だったそうです。

同時に、Google Wallet内の個人間送金機能は、新生Google Walletアプリに受け継がれることになりました。ややこしいのですが、(既存のGoogle WalletユーザにAndroid Payをそのまま利用してほしかったため)Playストア上ではGoogle WalletがAndroid Payに改名され、あらたに別のGoogle Walletアプリがリリースされました。

時が進み2018年、GoogleはAndroid PayとGoogle Walletを統合してGoogle Payという一つのアプリにすることを発表しました。


インドなどでのGooglePay

NFCでの決済が使えるのは店舗にNFC対応の決済端末がある先進国に限られます。Googleは近年NBU (next billion user - 次の10億ユーザ)といわれる顧客セグメントに注力しており、インド向けにTezという別アプリを2017年にリリースしました。これはインドで広く使われるUnified Payment Interfaceという仕様を実装したアプリで、銀行間の送金を簡単に行えるものです。

2018年、TezはGoogle Payに改名されました。が、アメリカなどとのGoogle Payアプリとは別のアプリとして残りました。


iOS版の話

上記はすべてAndroid版の話でした。iOSはどうなっているのかなと思い調べたところ、Google PayGoogle Pay for India (Tez)という2つのアプリがあるようでした。ちなみにiOS版のGoogle PayにはNFC決済の機能はないはずです(AppleがAPIを提供していない)


これからの話

冒頭のブログポストでインド向けのGoogle Payが全世界にローンチすると書かれていることで、先進国向けのGoogle Payとインド向けのGoogle Payが合併するという噂を見かけましたが、Google公式からは特に何も発信がないようです。

ゆくゆくはなくもない話かとは思いますが(個人的にはTezは別ブランド別アプリで残しておいたほうが良かったようなきがしますが)どうなんでしょうね。

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