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炎症性腸疾患における超音波検査の役割

論文の紹介です

いつも多忙なお仕事お疲れ様です☕️
個人的に気になった論文を紹介しています。ポルトガルからの報告です。なかなか世界のエコーってどうなのか知る機会が少ないので気になりますね!

Frias-Gomes C, Torres J, Palmela C. Intestinal Ultrasound in Inflammatory Bowel Disease: A Valuable and Increasingly Important Tool. GE Port J Gastroenterol. 2021 Nov 23;29(4):223-239. doi: 10.1159/000520212. PMID: 35979252; PMCID: PMC9275009.

言いたいことは?

☆ クローン病や潰瘍性大腸炎の診断や治療のモニタリングに消化管エコーは有効だよ!
☆ 壁厚を見ていくことが治療効果判定として有効だよ!
というような内容です。

はじめに

なぜこの研究が必要なのかですが、最近のシステマチックレビューで以下のように言われているようです。

"In a recent systematic review, IBD patients preferred non-invasive techniques, particularly IUS, to monitor disease activity, when compared to endoscopy [7]"

つまり、IBDの活動性をモニタリングしていくには内視鏡よりも消化管エコーが好まれるということのようです。手間かかりませんしね。European Crohn’s and Colitis Organisation [ECCO] や European Society of Gastrointestinal and Abdominal Radiology [ESGAR]なども同様に推奨しています。

IBDのスクリーニングと診断

一般的な腸炎の診断は壁肥厚の有無で行う。これは異論なしですね!治療効果判定のモニタリングは以下の4項目が良いです。

・小腸は2〜3mm, 大腸は4mm以上をカットオフ値とする
・層構造の不明瞭化 (*これは強い炎症による第2/3層間の不明瞭化のことと思います)
・カラードプラで血流シグナル増大
・腸間膜脂肪織肥厚やリンパ節腫大といった壁外所見

代表的な画像(Fig.1)はこちらからご覧ください
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9275009/

このようなところが診断基準になってくるんですが、これはあくまで腸炎一般的な所見であって、IBDに特異的な所見ではないので注意が必要です。除外診断的には使えます。壁厚も何mmとするのがいいのかもまだ確立はしていません。

壁厚計測は診断目的よりも治療モニタリングとして使用する価値の方があると思いますので、IBDにおける壁厚計測は良いと思います。でも、どこかのnoteで書いたと思いますが、壁厚測定は腸管の弛緩・収縮で変化するので、そのあたりも念頭に入れた評価をするべきです。内腔が虚脱するほど腫れれば測りやすくなりますが、逆もまた然り。さらに小腸の場合は前回と同じ計測部位を自信を持って測れますか?このようにいくつかの課題はあると思いますので、何mmだからどうといった短絡的な解釈は避けたいですね。

クローン病の活動性評価

消化管エコーはIBDを診断するのに良い精度があると多くのシステマティックレビューで報告されています。

ただし、
"Importantly, the sensitivity of IUS seems to be lower for jejunal lesions (55.6%) when compared to ileal (92.7%) or colonic involvement (81.8%) ."
とされており、確かに空腸病変は検出しにくいのかも。

活動性を評価する指標に関しては気になるのがあるので、また別の論文を紹介しますね!

ここも重要なポイントですね。
"Nevertheless, for patients with BWT <5.5 mm, IUS alone may not be sufficient to guide their management, as an accurate distinction between cicatrisation and mild to moderate recurrence may not be achieved and, therefore, cannot replace endoscopy yet."
壁厚が軽めの5.5mm未満の人は炎症後の瘢痕なのか軽度から中等度の再発なのか分からないということです。これは実際そう思います。この辺りの軽い壁肥厚が壁厚計測も悩ましいし、ドプラや造影USが一助となるのかもしれません。という感じで、クローン病を消化管エコーのスコアリングで見ていくってのは高い有用性があるも、まだ課題はありそうです。

潰瘍性大腸炎の病勢評価

UCもベースは壁厚になってきます。それプラスいくつかのパラメーター(層構造、ドプラなど)を組み合わせていくことで、内視鏡との重症度の整合性がとれていきます。壁厚を何mmと取るかの議論がここでもありますが、3mmなのか4mmなのかにさほどこだわる必要はないと思いますが、感度と特異度をどこに持っていくかで変化していく話だと思います。

"Assessments of the sigmoid and descending colon had the higher accuracy , in contrast to the rectum, where transabdominal IUS had a poor sensitivity (15%)."
S状結腸と下行結腸では高い正診率があるが、直腸での感度は低い

直腸の感度15%という低さは、解剖学的な難しさ(消化管ガス、深さ)があるのでしょうね。しかも、深部にあるのでコンベックスで見る必要があるのですが、コンベックスで見ると思った以上に壁肥厚が分かりにくいという点に注意してください。腫れてないかなと思って、壁厚測って見ると、5mmちょいくらいあったりするので、リニアで見る感覚とコンベックスで見る感覚は異なります

このような問題があるものの、消化管エコーは良好な活動性評価能はあるということです。

クローン病の狭窄評価

"Several studies have assessed IUS accuracy to detect intestinal strictures, with a sensitivity ranging from 74.4 to 100% and a specificity of 63–100% [35, 49, 50, 51, 52, 53]. "
腸管狭窄を見つけるという意味では消化管エコーは感度74.3~100%, 特異度63-100%と良い結果を出しています。造影USの方が若干成績が良いみたいです。問題は狭窄が炎症性狭窄か線維性狭窄なのかの判別なのですが、

  1. 層構造が明瞭な場合は線維性狭窄を疑う

  2. ドプラで血流が豊富でなければ線維性狭窄を疑う

  3. エラストは鑑別に役に立つ・役に立たないの両論あり

こんな感じです。要は、activeな炎症性狭窄では層構造は不明瞭化しやすく、ドプラも豊富なことが多く、線維性狭窄では逆の場合が多いという感じです。

クローン病では瘻孔や膿瘍形成などの合併症も生じるので、この辺りの評価も積極的に行いましょう。

まとめ

今回は抜粋してまとめましたが、どうでしょうか?評価のポイントが分かりましたか?超音波検査士にとって大事なことは妥当性がある所見をとること。そのためには評価に耐えうる綺麗な画像を撮ることだと思っています。特に初回検査は重要で、診断目的もそうですが、フォローのためにもリファレンス画像を決めておくといいですね!

by みけ☺️

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