たかが脂肪肝、されど脂肪肝
※ 検査に携わる医療従事者向けの内容です。
運動不足の皆さん!肝臓がフォアグラですよ!!
……、
さて、本日は脂肪肝の評価法についてです。
脂肪肝の古典的な評価法として、「B modeの見た目」で判断する方法があります。
見た目で判断するってことは、当然判断する人によっても違うし、機械によっても違うので客観性に乏しいのが弱点です。
後述するような減衰量を定量評価する方法は比較的これらの欠点が補われていますので、定期フォローにはおすすめです。
脂肪肝とはどのような状態なのでしょうか?
肝細胞に脂肪滴が貯留した状態で、" 肝臓の脂肪沈着は、組織学的に5%以上を有意とする (NAFLD/NASH診療ガイドライン2020) " が組織学的定義です。
ある意味、我々の仕事は「5%水準の脂肪肝を拾い上げること」と言い換えることができるかもしれません。(これが意外と難しい)
例えば、肝機能異常の二次検診で外来受診している患者さんがいて、医師は採血や飲酒歴などで色々な鑑別疾患を挙げていくのですが、その1つにNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)があります。特にNAFLDの中で、進行性で肝硬変や肝癌の発生リスクとなるNASH(非アルコール性脂肪肝炎)を拾い上げることが必要です。
NASHをどうやって拾い上げていく?
ではNASHはどのようにして診断するのでしょうか?やはり、肝生検を行うことがゴールデンスタンダードです。病理診断による脂肪変性、炎症、肝細胞障害(風船様変性)などの所見があればNASHと診断可能とされています。
じゃあ、国内に1000万人以上いるとされるNAFLD患者さんに全例肝生検すればいいじゃん!
…とはなりません。。やはり肝生検にも出血などの合併症のリスクがありますし、肝臓の専門医による手技が必要だからです。
徐々に確信に迫ってきました。
要は、肝硬変や発癌リスクがある線維化進展例を確実に拾い上げることが必要なのです。
ここまでのNAFLD/NASHに対するお話をまとめますと、
1. 脂肪肝を拾い上げる
2. 線維化進展例を取りこぼさない。
がポイントです。
で、頭の良い方々は思いついたわけです。(えっ、つまり脂肪肝と線維化を同時に評価できればすごくね?)
脂肪化 → 減衰の程度
線維化 → 硬さ
に置き換えるのだ!! と。
実際のところ、エコーでどう評価するか?
さて、脂肪肝の減衰の程度はどのように評価したら良いのでしょうか?
古典的には「bright liver」「肝腎コントラスト」「深部減衰」「脈管の不明瞭化」を組み合わせて評価していきます。
このイラストを見てもらうとイメージしやすいと思いますが、正常肝の場合、ある程度規則的な配列になっているのに対し、脂肪肝では白く抜けているところがあるのがわかりますよね。
エコーの原理として、反射源が多ければ白く映るという原則があります。上のイラスト見えると正常では存在しない(こともない)脂肪滴が反射源となり、エコーでは肝臓の輝度が上がります。これがbright liverです。
当然、肝臓の輝度が高くなると、肝腎コントラストがつきます。
CKDなどで腎実質のエコー輝度と比較しにくい場合は脾臓と比べることもできます。これが肝脾コントラストです。
bright liver があれば通常肝腎コントラストは着くはずですから、この2つはほぼ同義です。
bright liverがあって肝腎(脾)コントラスト陽性の場合、「軽度」と判断します。
脂肪滴がたくさん溜まっていき、反射や散乱が強くなると、「深部減衰」や「脈管の不明瞭化」が起こります。
どちらか1つだけの所見があれば 「中等度」
両方の所見があれば 「高度」
となるわけです。
いかがでしょうか??意外と簡単でしょ??
ちなみにこの減衰量を定量しようとする試みが、FibroscanのCAP値、GE社のUGAP、Canon社のATIです。(他のメーカー様のものは使ったことがないのでごめんなさい!!)
近い将来、脂肪化の程度を定量的に評価する時代が来ると思いますので、ぜひこれらのアプリケーションを触って見てくださいね!
参考文献
日本超音波医学会 脂肪肝超音波診断基準 2021
NAFLD/NASH診療ガイドライン2020
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