嘔吐・下痢の代表選手 ~Case 1~
「良いレポートとは何か」という議論がしばしば起こるわけですが、僕が考える良いレポートとは、「簡潔かつ理論的である」ということです。つまり、Aという超音波診断をつけたければ、Aという疾患に必要な所見を知っておく必要がありますし、鑑別疾患Bと異なる点も常に考慮する必要があります。
ここのシリーズではいろんな症例の超音波所見を見ていきます。超音波検査士の試験の抄録も大体こんな感じで書けば大丈夫と思います。昨年から色々なことに追われてしまい、どこまでTwitterでやったか忘れたので、Case 1から補足します。すみません。。
症例イラスト
※ 少し小腸をイレウスっぽく描きすぎました。そこまで緊満しません。すみませんすみません。
ウイルス性腸炎のメカニズムは簡単にいうとこのように説明されています↓
超音波所見はどんな感じ?
一方で、ウイルス性腸炎の超音波所見は、
1. 小腸に腸液貯留がある
2. 腸蠕動は減弱化、ほぼ蠕動停止し麻痺性イレウス様に見えることも。逆にグルグルと亢進することもある
3. 小腸の壁肥厚は基本的にはない(あってもごく軽度)
4. 小腸の腸液貯留による拡張に緊満感はない(小腸を短軸で切るとパンパンの円形ではない)
5. 腸間膜リンパ節が目立つこともある
といった具合にそこまで特異的な所見はありませんので、病歴と合わせると良いと思います。
腸閉塞との鑑別はと言われると、画像だけでは稀に難しい場合もありますが、やはりウイルス性腸炎では腸閉塞ほどの腸管の緊満感はないことが多いです。
ウイルス性胃腸炎では典型的には嘔吐が先行するので、現時点で嘔吐のみで下痢はないような人でも、いざエコーすると大腸にパンパンに水様便貯留してる!こともあります。天気予報じゃないけど、「多量の水様便が出るでしょう」なんて予報もできますね!
ちなみに、逆のパターンの腹痛や下痢からの嘔吐は腸炎らしくないのでご注意ください。虫垂炎や腸閉塞が隠れている可能性も…。
冬はほんとに腸炎多いです。ポイントは小腸の腸液貯留ですので、添付すべきKey imageは、
1. 腸液貯留した小腸
2. 水様便貯留した大腸
であり、所見としては、
小腸に腸液貯留を認め、軽度の拡張を認める。蠕動は軽度減弱化。大腸には水様便貯留している。小腸及び大腸に壁肥厚は認めない。US上、ウイルス性腸炎として矛盾しない所見です。
という感じがベースになると思います。が、腸液貯留があったはいいが、実は虫垂炎で生じた麻痺性イレウスだったとかいう笑えないことにもなりかねないので、他疾患の可能性が潰す必要があります。
by みけ☺️
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