見出し画像

活動15周年の集大成「nayuta 15th Anniversary & Birthday Live 青の結び目 -Blue Knots- 追加公演」レポート


●セットリスト
01.蒼のキャンバス
02.この声が届く日
03.トレセの秘密
04.君を掬う
05.Sincerely TREU(Cover)
06.鳥の詩 Lia(Cover)
07.生まれてきてくれてありがとう dai(Cover)
08.Decillion Encounter with 棗いつき
09.垂直の青の果て with 藍月なくる
10.鏡像のカノン with 棗いつき、藍月なくる
11.時薬
12.雪凪
13.phonograph
14.追想の先へ
15.こうやって、いつまでも
16.結い結われ(新曲)
17.Blue Knots with 棗いつき、藍月なくる


今年6月に南港サンセットホールにて15周年ライブを行ったnayutaが、自身の誕生日2022年9月27日に「めぐろパーシモンホール」にて開催する「nayuta 15th Anniversary & Birthday Live 青の結び目 -Blue Knots- 追加公演」。歌い手nayutaの活動15周年と誕生日を同時に祝福する記念すべきライブだ。歌で人と人を繋げながら、巡り合った盟友たちとライブを作り上げ、そしてなゆふぁんず(nayutaのファンの呼称)に心からの感謝を歌に乗せて贈るという、濃密な一夜限りのライブの模様をレポートする。

感染症対策の徹底された会場で、着席したオーディエンスの視線はステージに注がれている。ステージには一面の真白いスクリーンがあり、その前にはピアノやパーカッション、出演者用の椅子などが開演を静かに待っていた。ライブはキービジュアルと同じドレスに身を包んだnayutaとバンドメンバーが袖からステージに上がり始まる。バンドメンバーは、近年nayutaの楽曲制作やYouTubeアコースティックライブでも活躍してきたSperioNz(Piano)をはじめ、藤屋(Acoustic Guitar)、岩嵜壮志(Violin)、村上海人(Percussion)という顔ぶれだ。そしてnayutaと一緒に3人組ボーカルユニット「La prière」として活動中の、棗いつき、藍月なくるがゲストボーカルとして控えている。

暗転していた会場に青いライトが煌々と灯った瞬間、nayutaとバンドメンバーは「蒼のキャンバス」で一斉に歌と音を解き放った。6月のライブのバンドメンバーに加えて、今回バイオリンとパーカッションが加わったことで、明らかにパフォーマンスのレベルが上がっていた。重厚な音と清涼な歌声の迫力、スクリーンへの豪華なVJ演出に思わず息を飲んだ。

nayutaは自分のライブと誕生日のために平日にも関わらず来場してくれたファンに感謝を述べ、バンドメンバーが増えたことで今日はよりパワーアップした歌と演奏を繰り広げることを宣言。その言葉に違わずポップな包容力で思わずクラップしたくなる「この声が届く日」、切ないバイオリンのメロディと繊細な歌声で少女の心象を鮮明に描き出す「トレセの秘密」、nayutaの壮大な歌声に潮騒と鳥のパーカッションと青いVJ演出で世界観をより深めた「君を掬う」と、これまでの足跡を辿る選曲で緩急自在のパフォーマンスを繰り広げていった。


先ほど歌った曲はnayutaの活動の節目に作られた曲(「この声が届く日」は4年前の、「トレセの秘密」は2年前のバースデー記念ソング)というMCを挟み、ライブ中盤はカバーソングを披露。TVアニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の主題歌「Sincerely」、ゲーム「AIR」の主題歌「鳥の詩」とインターネット老人会を彷彿とさせるカバー曲でオタク心をくすぐってくる。「ひぐらしのなく頃に」及び「うみねこのなく頃に」の曲「生まれてきてくれてありがとう」のカバーは、nayutaの最初の歌ってみた動画が「ひぐらしのなく頃に」の「you」だったことを考えると、心憎い選曲と言わざるを得ない。

nayutaがカバーした3曲について、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」や「AIR」で号泣した思い出や、daiの作曲した曲に救われた話をオタク特有の早口で熱く語る。2022年10月14日に開催される07th Expansionの「ひぐらし20周年」記念イベント出演の告知を聞きながら、「you」の歌ってみた動画から始まったnayutaの活動が巡り巡って、こうした縁を結んだことを感慨深く感じた。

ゲストボーカルの一人目、棗いつきをステージに呼び込み2人で歌うのは、アルバム「La prière Cover Collection」で棗いつきがカバーしたnayutaのオリジナル曲「Deicillion Encounter」。nayutaの繊細な歌声と、棗いつきの快活な歌声のセッションは、同じ曲でもソロの時よりも躍動感に拍車をかけていた。

nayutaと棗いつきの馴れ初め「棗いつきの1stアルバムを一"聴き"惚れしたnayutaがM3にCDを買いに行った」という衝撃の事実が明かされ、次のゲストボーカル藍月なくるにバトンタッチ。歌うは「La prière Cover Collection」で藍月なくるがカバーしたnayutaのオリジナル曲「垂直の青の果て」。二人の柔らかな歌声でもたらされる「泣いていいよ」という許しは、聴く者を優しく鼓舞してくれる。

ここで歌唱中にnayutaのイヤリングが取れてしまうというハプニングが発生、唐突に藍月なくるが一人で場をつなぐという使命を課せられた。社会人になりたての頃、仕事に疲れていた藍月なくるが「垂直の青の果て」を聴いて電車の中で号泣した話や、nayutaの曲を聴くと救われることを熱く語り、オーディエンスにも同意を求める。会場は拍手でその声に答えた。

イヤリングを付け直したnayutaがステージに戻り、棗いつきも呼び込みボーカルユニット「La prière」が揃い踏みして披露するのは「鏡像のカノン」。「La prière」として長らく活動してきた3人のアンサンブルは、nayutaの主軸に2人がコーラスが花を添え見事なハーモニーを生み出していた。


ゲストボーカルの2人に感謝の言葉を述べ、「La prière」のライブの告知もした後、再びnayutaソロになり始まる後半戦。「時薬」「雪凪」「phonograph」と15周年記念アルバム「Portray Blue」に収録されている曲を立て続けに披露していく。どの曲も雰囲気に合ったVJがスクリーンに投影され、ピアノ始まりの「phonograph」ではSperioNzにスポットライトがあたるなど、nayutaの歌だけでなく演出面も6月のライブより大きくパワーアップしているのを感じた。何よりライブが佳境になるにつれ、会場だけでなくバンドメンバーの熱も上がってきていることが演奏から伝わってきた。「追想の先へ」の歌詞「気が付くと周りにこんなに仲間がいて かけがえのないものを抱え想いを込めて行くよ」は2020年に作られた曲とは思えないほど、今日このライブ「青の結び目」の文脈にフィットしていた。

最後の曲を歌う前に、あらためてライブ制作に関わってくれたスタッフや演奏してくれたバンドメンバー、ゲストボーカルの2人、活動を応援してくれる家族、そして平日にも関わらず見に来てくれたなゆふぁんずのみんなへ、nayutaから感謝の言葉が贈られる。「ひとつひとつの出会いが、今日のライブにつながっていると思っています。そんな青の結び目を大事にして最後の曲を歌っていきたいと思います。それでは最後の曲です」と届けられたのは、nayutaのYoutube配信のエンディングに使われている曲「こうやって、いつまでも」。別れを惜しむように「またね またね」とステージと会場の全員が手をウェーブさせる。歌い終わり「ありがとうございました」とステージを後にするnayutaたち。


鳴りやまないアンコールの拍手に後押しされ、ライブTシャツに着替えたnayutaとバンドメンバーたちが披露するのは、なんと新曲「結い結われ」。ファンにとってこれほど嬉しいサプライズはないだろう。nayutaのバースデーを祝う日に、逆に最高のプレゼントをもらってしまった。今回の結び目というテーマに沿った、nayutaと共に歩んできた歴史を物語る、そんな一曲と言えるだろう。ピアノだけではなくアコギとバイオリン、パーカッションも加えた大胆で美しいアレンジで初披露されるのも感慨深い。

新曲「結い結われ」のデジタルリリースがライブ終演後0時開始、さらに翌日9月28日にMV公開と嬉しい告知が続く。そしてここでゲストボーカルの2人からnayutaにサプライズ、「Happy birthday to you」を歌いながら誕生日プレゼントと花束を贈呈し、思わずnayutaの目に涙が浮かぶ一幕があった。

全17曲のフィナーレを飾るのは「La prière」の3人で歌唱する「Blue Knots」。「こんなに優しくて こんなに泣きたくて もらった愛やこぼれた涙 結び目に」という歌詞は、奇しくも先のバースデーサプライズの様子を見事に表現しきっていた。

最後に思い出として会場みんなで写真撮影をして、ステージの7人全員で「ありがとうございました」と礼をして、ライブ「青の結び目」は万感の拍手に惜しまれながら幕を下ろした。

ただ15周年と誕生日を祝うだけではない、nayutaが生み出してきた歌の数々と共に、15年の活動の集大成を感じさせるライブであった。nayutaは6月に見たライブをさらに上回るパフォーマンスを披露し、自らしたためた率直な思いとメロディを新曲にして、ステージで表現していった。16年目も表現者として人と音とを結び成長していくnayutaの姿が、確かにそこにはあった。


なお、今回のライブはインターネット配信も行われた。アーカイブ配信期間は2022年10月4日まで。ぜひ多くの人たちに、nayutaの情感に満ち溢れた心揺さぶる歌声を体験して欲しい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?