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「cyAnos」1st ミニアルバム「Do you know me?」レビュー

バーチャルシンガーYuNiがセルフプロデュースするプロジェクト「cyAnos(シアノス)」の1st ミニアルバム「Do you know me?」。リアルなアーティストとして自分の内面世界から出てくる音楽と作品を届ける、と銘打たれたプロジェクトから生まれたアルバムは、YuNiのエモーショナルな歌唱を、ストリングスと鍵盤が彩る絶妙な一枚だ。

本アルバムに収録された5曲を聴いた時、喜怒哀楽の「哀」の感情を激しく刺激された。cyAnosのTwitterで「浸ってくれていますでしょうか?」と宣伝していた通り、まさしく彼女の音楽と世界観に浸るための楽曲たち。

cyAnosデビュー曲の「Who knows the answer」は退廃的な世界観と孤独を感じさせ、2曲目の「Still it was so beautiful」では闇の中に光を求め足掻くような、堂々巡りの白昼夢を見ているような閉塞感を感じさせる。

「Minor role」は自身を脇役と断じる挑発的な歌詞と高揚感あるストリングスでドラマティックな楽曲に仕上がっている。脇役でも自分で選んだ道だと矜持を持ちながら、歌詞の英語パートで見せた儚さの二面性こそ、人間が持つリアルな不安定さに近い気がした。

このアルバムで初披露となった「Brain-washing」と「Crush on you」は対となるような楽曲だ。「Brain-washing」の奈落に落ちていくようなスピードのメロディと視野狭窄な歌と詞は、曲名通り洗脳を受けた人の心理を描写したかのよう。間奏の疾走するストリングスとピアノのアルペジオは鳥肌が立つほど格好良く、サウンドプロデューサー江口亮氏の手腕が光る。

「Crush on you」は楽曲それ単体で聴けば、跳ねるようなピアノに心躍り、恋の歌に可愛さすら感じるだろう。5曲の中で一番陽気で平和な楽曲だが、前の曲が「Brain-washing」のため、ビターな愛の歌すら洗脳された結果なのでは、という疑心暗鬼に陥ってしまう。

このアルバムを聴いて、前向きな言葉で人の心を鼓舞するような陽気さではなく、ただ陰鬱で露悪的な表現によるカタルシスでもなく、等身大でリアルな人間の内面に触れた気がした。

アルバムのタイトルや楽曲の英語を訳していけば、自分を知って欲しいという渇望、正解のない質問を繰り返す虚しさ、とてもとても美しい世界への羨望、そんな世界の中で脇役な自分、それでも洗脳と呼べるくらい夢中になれる誰かが欲しい、と現代人の普遍的な欲求の叫びを聴いているかのようだった。

そのバーチャルではなくリアルな人間臭さに、図星を突かれたようで心臓を掴まれてしまった。今までのバーチャルシンガーYuNiでは表現し得なかったリアルな人間の生き様が、このアルバムには収められている。

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