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不健康人間

いつからだろうか、体からエネルギーを感じられなくなったのは、、。

とてつもない倦怠感から1日が始まる。でも、そんな事にすら気付かない。起きてすぐに準備をして会社に向かう電車に乗り、苦手な人込みの波に乗って会社に着き、ダラダラとデスクワークや営業活動をこなし、すぐに夕方が来て行きと同じように家に帰る。家に着くと酒を飲みながらスマホをいじって、程よい時間が来れば寝る。この繰り返しを4年程度続けている。

今は何の楽しみもない毎日を繰り返しているが、生きているという感情に溢れている時期があった。4年前の大学卒業の時だ。社会人になる瞬間に疎遠になったが、必要以上にエネルギーを使う人がいたんだ。



大学生の時、居酒屋のバイトをしていた。家の近くにあるというだけでそこで働いていた。僕が働き始めて1ヶ月くらい経つと、1つ歳下の女の子がバイトに来るようになった。鈍臭くて不器用だった。教えても教えても上手く出来ない、本当に手間のかかる奴だった。最初の3ヶ月は下の名前も知らなかったし、興味もなかった。

ある日突然、その女の子のシフト終わりに男が店にやってきた。何やら男は、店長にお辞儀をして女の子と仲良く手を繋いで帰って行った。

それを見た僕は。へえ、彼氏いるんだ。彼女はみずきっていう名前なんだな。へえ。その程度の認識だった。

次のバイトに来た時、女の子の瞼がパンパンに膨れていた。昨日かなり泣いたのだろう。しょうがないから話を聞いてやった。彼氏が就職で地元に帰るらしい。それで1年間程度遠距離になるらしい。正直、その話を聞いてもどうでもよかった。でも、どこか可愛らしさを感じた。不器用な女の子らしい理由だ。

それから2人とも毎日のようにバイトをしていたが、女の子がストーカー被害に遭っているかもしれないという事で、ある日を境に毎回家まで送っていく事になった。日が経つにつれて鈍臭くて不器用な女の子が、段々と愛しく思えてきた。でも、彼女には大好きな彼氏がいるからと思い、いつも通りずっと冷たく接していた。

2年の月日が経ち、僕が大学を卒業する即ち、バイトも卒業という事で、バイト終わりに店長の計らいで飲み会が開催される事となった。彼女は何故か凄い勢いでお酒を飲んでいて、すぐにベロベロになってしまっていた。飲み会の間は放置していたが、終わるとつれて帰らなくてはいけなかったので、飲み会が終わるとおんぶをして彼女の家まで送って行った。鍵を彼女のカバンから取り出し玄関をあけ、家の中に入り、おんぶやめると彼女が突然キスをしてきた。僕のことが好きらしい、彼氏の事より大好きらしい。僕の感情は抑えきれなかった。彼氏の事が好きだから冷たく接していたが、僕も本当は大好きだった。

気がつくと朝になっていた。お互い目が覚めると、とてつもない罪悪感が生まれた。それと同時に夢が叶ったかのような幸福感もあった。みずきの事が好きすぎたんだ。本当に本当に大好きだったんだ。

今までは抑えきれていたから、冷たく接する事が出来ていたが、これからはもう無理だ。感情を表現してしまう。

その日の夜、僕は就職のために上京するために空港に向かった。みずきが送っていくと言い張るので、みずきも一緒に空港まで来た。

そして飛行機の時間が来た。僕はもう会うのも話すのも最後にしようと言った。みずきは泣きじゃくっていた。僕も我慢したけど恐らく泣いていた。みずきの幸せのために仕方ないと思った。

向こうに着いたら電話をしてくれを言われていたから少しだけ電話をした。

好きすぎるからさようなら。


そして、4年の月日が経ち、インスタグラムを漁っていると突然こんな画像が出てきたんだ。

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僕の人生はどこでおかしくなってしまったのだろう。そういえば、あの日の別れからずっと何も感じない同じ時間が流れている。

皆様の愛情で大卒ジョッキーは作られております。愛をいただけたら幸いです。