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「マンガ単行本」がグッズ化する未来
コミックの市場規模は伸び続けています。特に、電子コミックの伸びはめざましいものがあります。
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もともとマンガの単行本は巻数が多く、紙の本だとかさばり本棚がすぐに満杯になるので電子の利便性が高い、ということがあります。
一方で、紙の単行本(紙コミック)は減少を続けています。
特に厳しさを感じるのが、コミックス新刊の点数です。30年前(1993年)は年間で5千点ちょっとだったものが現在(2023年)は1万4千点を超え、3倍弱まで膨らんでいます。つまり、販売金額は横ばいでも、単行本1点あたりの売上は大きく下がっているということです。
紙の単行本の売上が厳しいという話は僕もよく聞いており、Webマンガを提供しているスタートアップのCEOとしても、何ができるかを最近よく考えています。そこでたどり着いたのが「紙のマンガ単行本のグッズ化」です。今回は、なぜ「グッズ化」なのかを具体的な事例を挙げながら考えます。
フランスで広がるマンガのデラックス版
最初に紹介したいのが、こちらの記事です。
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フランスのマンガ市場は、日本に次ぐ世界第2位の規模で、この10年で約4倍に拡大(2022年に約530億円)。フランスで開催される日本文化の祭典「ジャパン・エキスポ」は、例年アニメやゲームのコスプレをする若者で賑わうことでよく知られています。
そのフランスでは、「デラックス版」が増えているそうです。
質を重視したデラックス版は、より高価でもある。カナ社から次にデラックス版として出版される作品は、井上雄彦の大人気作『スラムダンク』。これまでのものに比べるとその価格差は大きい。「スター・エディション」と呼ばれる基本の全巻コレクションが “わずか”199ユーロなのに対し、デラックス版はなんと334.80ユーロもする。
その理由は、「フランスは現物への愛着が強い」「漫画はコレクターズアイテムとしても注目が高まっている」「美しいオブジェとして好まれる」といった主旨になっています。
なぜイギリスでは若者が紙の書籍を買うのか?
次に紹介したいのは、こちらの記事です。マンガではありませんが、紙の書籍についての記事です。
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イギリスでは、2023年に6億6900万冊の紙の書籍が販売されて過去最高を記録した、とのこと。特にZ世代(1990年代半ばから2010年代序盤に生まれた世代)が紙の本を買うそうです。
データ分析会社「ニールセン」の調査では、2021年11月から2022年にかけてZ世代が本の購入に費やした額の80%は、紙の書籍が占めていることがわかっている。
人気のセレブが紙の本を読んでいる姿をSNSなどで見て、Z世代に「読書をするのがセクシーだ」という価値観が広がっているとのこと。
「読書がパフォーマンスの時代になった」と非難する声もあるそうですが、紙の本が売れることにつながっているのは興味深い事実ですね。
紙のマンガ単行本のグッズ化する2つの理由
フランスとイギリスの2つの記事は、とても対称的です。
フランスは、ファンがコレクション(収集品)として、”ひとりで楽しむ”ものになっています。一方、イギリスは、セレブやZ世代が見せるものとして、”みんなで楽しむ”ものになっています。
この2つの方向性があると思ったので、それぞれ深堀ってみます。
①ひとりで楽しむ
電子(Webやアプリ)で読んだマンガを、あとから紙の単行本で買ったことはありますか? 僕はあります。そのマンガが好きすぎて、やっぱり手元で読みたい、本棚に並べて満足したいと思うからです。
少しずれるかもしれませんが、知り合いに映画館に行くとつい紙のパンフレットを買ってしまう、という人がいました。最近は映画のパンフレットを見る機会も少なくなりましたが、行った記念になる、部屋に並べて楽しみたいという需要は少なからずあるのだと思います。好きなアーティストのライブに行くごとに、つい限定Tシャツをコレクションしてしまうのも同じ理由かもしれません。
マンガはアニメ化されると、たくさんの種類のグッズが販売されます。なんなら、最近は新刊の単行本が出ると”グッズ付き”の「特装版」として販売されることも多いです。
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それなら「アクスタとかお気に入りのキャラクターのグッズでいい」という話もあるかもしれませんが、紙の単行本をグッズとして位置づける場合は、他のグッズと少し違うようにも感じます。
「何が違うのか」を考えていたときに気付いたのが、紙の単行本は、そこに大好きな作品が収められているからだと思いました。
音楽ならCD、映画ならDVDやBlu-rayです。CDやDVDはネット配信が主流となり、プレイヤーがないと再生できませんが、マンガの単行本は紙なので時代を超えていきます。かなり飛躍しますが、「聖書」が紙であり続けるのも、近い理由なのかもしれません。
……と、ここまで書いたものの、よくよく調べたら、いまはCDよりもアナログレコードのほうが売れているそうです。
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アメリカでは、レコードの販売枚数は約4300万枚で17年連続で成長しており、これはCDよりも約600万枚多いそうです(アメリカレコード協会調べ)。日本のレコード市場も同じく伸びを示しており、世界各国で見られる傾向とのこと。
Z世代の専門家であるSHIBUYA109 lab.所長の長田麻衣さんは、記事のなかで次のように述べられていました(太字は筆者)。
「レコードやカセットは「選ぶ」行為が楽しいと聞きます。たくさんある作品の中から自分で1つ選んでオーディオに入れる。そのプロセスが楽しいと。デジタルの世界ではAIが最適化して自分の好きなものを自動で出してくれます。便利だけど、自分で何かを選んでいる感覚はあまりない。でも、アナログのようにモノがあると、自分で主体的に何かを選んでいる感覚がある」
「選ぶ行為が楽しい」とはいえ、「レコード購入者の50%はプレイヤーを持っていない」という衝撃のデータも書かれていましたので、やはりコレクション的な側面が強いのかもしれませんね。
②みんなで楽しむ
イギリスでは、セレブやZ世代が書籍を見せるものとして、”みんなで楽しむ”という”コト消費”になっていましたが、これはマンガの単行本も同じだと思います。
書籍と少し違うのは、書籍は完成形として流通しますが、マンガには現在進行形で「連載」という形式があることです。
前回の記事に詳しく書きましたが、いまはグローバルに向けて同時配信が広がっているので、最新話のWebページを引用しながら「面白かった!」とデジタル上のSNSでも言い合えるような環境が整ってきています。
一方で、これは人によるかもしれませんが、Webマンガは「どう面白かったのか」といった感想を書かないといけない、見えないプレッシャーみたいなものがありそうな予感がします(考えすぎでしょうか)。
紙のマンガ単行本は、写真やショート動画でいっしょに映りながら「今、読んでいるよ」と気軽に投稿できますし、笑顔で映っているなら「きっと面白いのだろう」とノンバーバルに伝えることもできます。
そのあたりの”気軽さ”がフィジカル(物理的な)なモノの強さなのかもしれません。
最後に
ここまで「紙のマンガ単行本のグッズ化」を考えてきましたが、いかがでしたでしょうか。
マンガをつくる出版社にとって、紙の単行本も読者の手元に届けたい大切な作品です。電子コミック市場が拡大し、紙コミックも「どうしたらファンのみなさんに喜んでもらえるのか」を考えなくてはならない節目を迎えているのだと思います。
僕はマンガDXのスタートアップ「コミチ」でCEOを務めています。マンガ業界の発展をお手伝いする会社の一人として、今回のnoteで考えた1つのアイデアが「紙のマンガ単行本のグッズ化」でした。引き続き、どうお手伝いできるかを真剣に考えていきたいと思います。
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それでは、また次回のnoteで。
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