マンガ雑誌の危機的状況に、コミチができること
コミックの市場規模は伸び続けています。電子コミックが伸びる一方で、マンガ雑誌(紙コミック誌)は急激に市場が縮小しています。
『週刊少年ジャンプ』が過去最高発行部数の653万部に到達したのは1995年のことでした。あれから30年弱、マンガ雑誌は85%減の売り上げに落ち込んでいます。
電子コミックのおかげで、売り上げ全体が伸びているのだから問題ない……とは限りません。マンガ雑誌の落ち込みは、マンガ産業の全体に影響を及ぼす危機的状況に感じます。
今回のnoteは、マンガ雑誌が縮小することのどこに問題があるかを整理し、マンガDXのスタートアップ「コミチ」の取り組みを紹介しながら、マンガ雑誌の次のかたちを考えます。
マンガ雑誌の役割がわかるイメージ図
最初に、マンガ雑誌がどういう存在だったかのイメージ図にしてみたいと思います。たとえば、『週刊少年ジャンプ』ならば20作品ぐらいの連載があり、それが1冊の雑誌のなかに掲載されています。
それぞれの作品は、1冊の単行本になり、1巻あたりだいたい10話前後が掲載される仕組みです。
これが電子コミックになると、連載はマンガアプリやWebマンガに掲載され、過去の作品も、1つのアプリやWebのなかに入ってきます。
さらにLINEマンガやピッコマなどの電子コミックのプラットフォーム(電子書店)だと、さらに少年誌や青年誌、少女漫画などマンガ雑誌ごとに分かれていた作品の、全部が1つのアプリやWebのなかに入ってきます。
マンガアプリやWebマンガで話単位で購入して読む人もいますし、Kindleなどの電子コミックの単行本になってから読む人もいます。
読者の好みごとに分かれていたこれまでの紙のマンガ雑誌との違いは、1冊あたり20作品という枠がなく、連載中の作品も過去の作品も混在して、読者ごとの好みにパーソナライズされて表示(インターフェイス)が調整されることです。
電子コミックのプラットフォームであれば、売り上げに最適化することも多いでしょう。読者ごとの表示が特定の作品に偏ってしまうなど、売れるものと売れないものが2極化することも想定されます。
ここで課題になるのが「新人マンガ家の発掘・育成」です。アプリやWebに新人の作品を掲載される場所はあっても、何もしなければ読む人が少ないままとなる。読む人が少なければ作品を描きたい新人マンガ家も減る。まさに悪循環です。
少し前の記事ですが、『少年ジャンプ+』のモミーさんはマンガ雑誌の4つの機能を次のように整理されていました。
つまり、マンガ雑誌の縮小により「新人発掘・育成、チューニング、ヒット拡大」の機能が失われると指摘されているのです。
マンガ雑誌を再構築する、コミチの取り組み
以前のnoteで、マンガとウェブトゥーンの違いを比較したとき、「人気作品を分析することで生まれたヒットの方程式のようなもの」に作品づくりが集中すると「データドリブン過ぎると一部のジャンルに作品が集中して”多様性を失いやすい”」と書きました。
マンガ産業に必要なのは、単に売れている作品だけではなく、作品と読者のインタラクションがあるなかで、次の大ヒットを狙う作品の新たなトライがなされる生態系、エコシステムです。この生態系は、売り上げの最適化とはまったく異なるベクトルであり、創り手(漫画家や編集者=出版社)が意図してつくらなければいけないものです。
このマンガのエコシステムを再構築する1つのチャレンジとして、私たちコミチの取り組みを紹介させてください。
こちらはアクセス解析ツール「SimilarWeb」を使って調べたWebマンガ誌のデータです。特に注目していただきたいのが、「ユーザーが1訪問あたりにアクセスしているページ数(Page/SS)」です。
※SimilarWebの数値はあくまで推定値です。
コミチが支援するWebマンガ誌は、特定の見たいマンガを見に来た読者に対して、「こんな新連載が始まりました!」「この作品があなたにはオススメです!」といった告知をしっかりと見せています。
どの場所にどのように掲載すれば効果的なのか、非常に細かい運用のノウハウがあります(ノウハウは日々の運用で更新を続けています)。これを単にヒット作品を売り伸ばすためだけではなく、「この新人のこの作品は◯◯◯をすれば伸びそうだ」など、編集部の方々としっかりと話し合いながら運用するのです。
最近の例でいえば、秋田書店のヤンチャンWeb『片田舎のおっさん、剣聖になる~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件~』は、ヒットの兆しをいち早く見つけて、編集部と協力しながら大きく売り伸ばした作品の1つです。
読者のデータを出版社、編集者のみなさんが管理して、そのデータをプロモーションに活かせるのもSaaS(Software as a Service:サービスとしてのソフトウェア)であるコミチの強みです。
ほかにも、SNSからのアクセス流入のデータをウォッチしており、火がつきそうな気配が見て取れれば迅速にSNS・Webサイトの両方でプロモートする体制があります。かつて紙のマンガ雑誌、『週刊少年ジャンプ』を発売日に学校の教室で回し読みしていた時代もありましたが、今や話題にする主な場所はSNSに移っています。だからこそ、SNSでの施策は非常に重要です。
マンガ雑誌の縮小により失われる「新人発掘・育成、チューニング、ヒット拡大」などの機能を補うだけではなく、SNSなどを用いた新たな「ヒットの方程式」を生み出していきたいとコミチでは考えています。
2024年4月23日に「チャンピオンクロス」が誕生
マンガDXのスタートアップ「コミチ」は、「100年愛されるマンガづくり」に貢献したい、と考えています。これまでマンガ雑誌が担っていた大ヒット作品と新人の作品が混在するようなマンガ産業全体にとっての生態系、エコシステムをデジタルでどのように再現できるのか、真剣に考えてトライしています。
マンガ家、そして出版社の編集者のみなさんは、必ずしもデータサイエンティストである必要はなく、もちろんSNSマーケターである必要もありません。クリエーターのみなさんがマンガづくりに集中できるような環境づくりをコミチでは実現していきたいと思っています。
2024年4月23日に、秋田書店のWebサイトがリニューアルにより「チャンピオンクロス」が誕生しました。
少しづつマンガSaaS「コミチ+」の導入が広がっています。
最近では、日経クロストレンド「未来の市場をつくる100社【2024年版】」の「「エンタメ・アート」分野で新しい市場をつくる会社(14社)」の1社に選出いただき、JEPA(日本電子出版協会)電子出版アワード2023のエクセレント・サービス賞を受賞と、一般社団法人 電子出版制作・流通協議会主催の電流協アワード2024 特別賞を受賞しました。
これからもマンガ雑誌の担ってきたマンガのエコシステムづくりにチャレンジしていきます。ご興味いただいた方は、いつでもお問い合わせもしくはDMください。
チームに加わってくれる仲間も大募集しています。売上YoY200%成長、2期連続黒字化を達成し、急拡大中です。カジュアル面談からでも、ぜひお声がけください。(詳細は下記HPをご覧ください)
それでは、また次回のnoteで。
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