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「ヒヒ伝説」 杉本朝陽さん

クール役柄とは裏腹に、
太陽のような笑顔でミュージカルコースを包み込んでくださった、杉本朝陽さんよりコメントを頂きました。
4月より本コースの講師としてお世話になります。

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ヒヒ伝説

あっという間にあれから1カ月という時間が経とうとしており、時の流れに非常に驚いています。

3月12日からの3日間、「ヒヒ伝説」にご来場いただきまして誠にありがとうございました。

メントの女王ダイナミー役を演じさせていただきました、

杉本朝陽です。


昨年、2年前と、いち観客として観劇させていただいていた舞台に、今年は自分が立たせていただく側にいました。

人生とは、ご縁とは、とても不思議なものです。


この度いただきましたダイナミーという役は、強いだけでも、冷血なだけでも違い、とても難しく、私自身としては、「ただ自分勝手な心なき女王」にはしたくないという思いがありました。

羽鳥さんとのお稽古の中で、たくさんの演出やアドバイスをいただき、また、お稽古場での時間は限られていましたが、その中で、同じシーンを創っていった学生の方々や助演の方々などとお芝居をする中で、自分のダイナミーは出来上がっていった様な感覚でした。

「争いを起こす」という事はどういう事なのか、そしてその最終の判断権が自分にあるという事の「重み」を忘れないでほしい。

羽鳥さんからいただきましたお言葉でしたが、昨今の世界情勢とやはりどこか重ねてしまう部分があり、

「戦いは決してするべきではない」という1番大きく根底にある気持ちを、自分なりにではありますが、最後まで大切に持って演じさせていただきました。

どうしても戦いを避けたいが故の鬼気迫るものを、また、自国の民達やドッチャーコッチャー家臣達に翻弄されてしまう部分ももった機械的ではないダイナミー女王を、ご観劇いただきました皆様に、少しでも感じていただけておりましたら幸いに思います。


少し私自身のお話となってしまいますが、

この度舞台に立つ機会をいただき、表舞台に立たせていただきましたのは本当に久しぶりの事でした。

舞台という場所は、上がる人間を裸にされてしまうものだと思っています。

立つ人間の、人となりや経験、バックボーンが、自然と役柄等を通して出てきてしまう事が多くございます。

また、台詞はもちろんですが、物語の全貌をきちんと理解する事や、立ち位置、出はけの場所やタイミング、衣装との兼ね合い、そして何より作品の一部になる事。

舞台に立つには、とてもたくさんのアンテナを張り、その上で、観ている方々に伝わるエネルギーを自ら発せられなければなりません。

その必要となるエネルギーの大きさを、今回改めて感じた部分がとても多かったです。

ですが、だからこそ、その生身の人間からのエネルギーが集まり、その大きなエネルギーが観に来てくださる方達の心に何かの形で届く。

それが「ライブ」の、生の芸術の素晴らしさなのではないかという事も、改めて深く感じた部分でございました。


また、このコロナ禍におきまして、

私自身が初めて参加させていただきました稽古初日に、それはもう、もはやバリケードの様にアクリル板等で稽古場を仕切り、フェイスシールドにマスクと、できる感染予防策を最大限に講じていらっしゃる姿勢に圧倒され、どうにか感染者を出さずに公演の千秋楽まで走りきるんだという気概に心を打たれましたのを覚えています。

ですがそのような心とは裏腹に、あの時の世の状況を見ていますと、もはや基本的な対策を各自がどれほどしていたとしても、誰にでも起こる可能性があり、その事は、公演が近づくにつれ、自分自身も本当にご迷惑をおかけする事なく駆け抜けられるだろうかと、非常に不安だった事も事実でした。

結果、このご時世の中、3日間の公演に、誰一人欠けることなく無事に幕をおろす事ができ、こんなに幸せな事はなかったと思いますが、

同時に、世界中の舞台公演に携わる方々が、この難しい世の中でいかに神経を尖らせながら、すり減らしながら、各地で公演をされているのかと身をもって痛感し、本当に少しでも早い終息を願う気持ちしかございません。


私が携わらせていただきましたのは『ヒヒ伝説』が最初となりますが、この様に、愛と想いがこもった素晴らしい作品を上演する事ができ、それが生み出される場に携わる事ができること。それがこのミュージカルコースの大きな魅力のひとつではないかと思います。

また、このミュージカルコースのもう一つの魅力的な部分は、

学生の方々の素直さ、そして創作に関わられている多くの先生方のとても大きな愛情ではないかと感じました。

創り手の先生方や助演の皆様の愛情や熱が学生の方々に伝わり、舞台上でエネルギーに変えてまた創り手側に返す。そのエネルギーのキャッチボールが、とても素敵な空間だと感じました。

学生の皆様は最後の何カ月の間に、本当に大きく変身します。

その伸びしろや吸収力は、本当に驚くものでした。

また、大人のキャストも含め、本当に、皆様熱い何かをお持ちの方ばかりで、その様な中で、この作品に携わる一人になれました事は、私自身もとても幸せでした。

2年生、専攻科生とは、お顔とお名前が一致し出しました時にお別れとなってしまい大変残念でしたが、反対にこの4月に2年生にあがられた皆様とはここから授業等で関われます事は、とても楽しみになりました。


このコロナ禍、様々な制限がある中で、それでも多くのお客様にこの度の公演をご観劇いただけましたことは、大変幸せで感謝しかございません。

私自身もたくさん勉強させていただきました舞台でした。

お声がけいただき、サポートいただきました先生方はじめすべてのご関係者の方々に、

厚く感謝申し上げます。


大阪音楽短期大学部・ミュージカルコースは今後も更なる進化を遂げていく事と思います。今回ご観劇いただきました方々にも、また、以前より応援いただいております方々にも、どうかこれからも応援の程宜しくお願い申し上げます。


最後になりましたが、日々揺らぐ世界情勢に一日でも早く穏やかな時間が戻ってきます事を、また、非常に長引いております新型コロナウイルスが、少しでも早く終息を迎えますよう、心より願わずにいられません。


不安定で非常にセンシティブな日々の中であったと思いますが、

「ヒヒ伝説」をご観劇いただき、また応援いただきまして、

誠にありがとうございました!!    

杉本 朝陽


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