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風船と落ちてきたマクラメが、「たのしい」を通じて連鎖し、広がる。 [inor 山田亜美さん]大門マルシェ出店者インタビュー#01

大門マルシェは「たのしい」を真ん中にして開かれています。

こちらでは、マルシェ出店者さんそれぞれの「たのしい」を、お伝えしていきます。#01は、マクラメアーティスト・マクラメショップ「inor(イノア)」オーナー山田亜美さんです。


マクラメは、紐を結び、模様を出しながら形を作りだすクラフト。
オーガニックの紐た、流木、鹿のツノなどの自然素材も入れ込みながら、タペストリーやプラントハンガーなどが作られます。

一方で「inor」コンセプトは、inorganic=無機質。亜美さんの好きな鉄やコンクリート、錆などの無機質な素材が由来です。
マクラメとは相反するイメージを持たせますが、亜美さんのマクラメは、無機質な素材と合わせるのに、ちょうどいいデザインが特徴です。

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例えばコンクリート壁に、マクラメのタペストリーが映えます。


「私の好きが掛け合わされた、ブランドコンセプトです。究極なシンプルさを持つ無機質なコンクリートや金属に映える、シンプルで爽やかなマクラメをイメージしています。

いろんなシーンで、だれでも気軽に飾れるようなジェンダーレスなデザインを心がけています。」

〇マクラメが、風船から落ちてきた!

亜美さんとマクラメの出会いは2020年5月。百貨店の化粧品売り場にて、店長として働いた美容部員を妊娠を期に退職し、興味の持てるものを探していた時です。

「次の自分に、カチッ!とハマるものを探していました。いろいろ試して夢中になると、とことんやってしまうタイプ。一時期、プログラミングや、簿記の勉強にもハマっていました。」

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次に夢中になったのは、ゲーム『あつまれどうぶつの森』。ゲーム上には風船がフワフワと表れて、割れるといろんなアイテムが出てきます。

「ある日、風船からマクラメが落ちてきたんです。ゲーム上のおうちに飾ってみると、とってもカワイイ。本物のおうちにも飾りたいなって思ったんです。」

さっそくキットや本を買って、マクラメ作りに挑戦することに。マクラメを始めて2週間ほどで、ゲーム上のマクラメを、現実世界に再現しました。

「欲しいと思ったのと同時に、プログラミング勉強時に模写をすると身につくことを知っていたので、作ってみました。そうしたら、とっても楽しいなって思いました。」

〇カチッと。無機質、幾何学的、数字的、機械的

「私は無機質素材と同じように、幾何学的で、きれいにカチッとしているものが好きなんです。マクラメも、いろんな結び目が等間隔に、機械的に並んでいる姿がいいんですよね。」

マクラメには、以前ハマったプログラミングや簿記と近い部分があったとのこと。

「いろんな結び目が並んでマクラメができていく姿は、プログラミング言語を組み合わせるホームページ作成に似ていると思います。簿記で出てくる貸借対照表も、左右対称に数字がカチッと決まるのが気持ちよくて、マクラメも同じように左右対称にしちゃう。

タペストリーを作る時、鹿の角が曲がっているとアシンメトリーになってしまうのだけれど、そうすると私は頭が止まっちゃう。アシンメトリーにも憧れるけれど、紐の長さを調整して、いかにシンメトリーに作るかに、やりがいを見出しています。」

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〇外へと広がるマクラメ

今ではショップオーナーの亜美さん。趣味から仕事へと変化したきっかけを聞いてみました。

「マクラメ作りにハマったら、部屋にマクラメがあふれてしまったんです。どうしようかなぁと思っていたところ、担当している美容師さんが欲しいと希望してくれました。あげるつもりでいたんですけれど『ちゃんと値段をつけなさい』と言ってくれたんです。」

そこから美容師さんの友人の間にも口コミが広がり、オーダーがかかり、美容院での委託販売も始まり、ワークショップ開催の声もかかります。始めて3ヶ月以内で、目まぐるしく状況が変わりました。

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「前職の美容部員として働いていた時の、お客さまにメイク方法を教えたり、一緒に選んだりする関係性が好きだったんです。美容部員みたいな仕事が、またできたら素敵だなって思っていたところで、マクラメが現れました。

出店したらお客様と出会えるし、ワークショップで教えられるし、注文に合わせてデザインを考えたりだとか、似たようなことができています。」

今ではWEBショップを開いたり、イベントに出店したり、カフェや文房具屋で委託販売やワークショップを行ったりしています。

「ありがたいことに、いろんな方から声をかけてもらって、ここまで続けることができました。」


〇大門マルシェは、新しい出会いとリフレッシュの場

亜美さんにとって、大門マルシェは新しい出会いがある場所です。ショップや委託販売ではお客さんに会えないので、マルシェでは新しいお客さんに会えたり、顔を合わせて話したりできる貴重な場です。

「『Instagramフォローしてます』って言ってくださる方もいて、その時は泣いて喜びますね。

あとは、注文をいただいた品の受け渡し場にもなっているので、お客さまの反応を直に見られる、ドキドキの瞬間もあります。」

マルシェの開催は1ヶ月に1回。日常の合間の、リフレッシュの時間にもなっているようです。

「ほかの出店者さんとおしゃべりしたり、出店者さんのコーヒーを飲んでおいしいって言ったりして、時間があっという間に過ぎていきます。自分の時間を作るにはありがたい空間ですね。」

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そして、ショップに立つときも、楽しむことを忘れません。

「楽しむことを忘れたら、きっと終わり。楽しむことが結果的に、マクラメの良さを伝えられているんだと思います。美容部員の時と一緒で、売ろうと思っちゃうと、お客さまもそれを感じ取ってしまって、誰も楽しくなくなってしまう。
私もお客さまも、楽しくマクラメとの関係を続けられるようにしたいんです。」


今後は、息子さんとマルシェに出店するのが夢です。

「今は、息子を長い時間マルシェに連れて行くのは難しいけれど、息子にも、いつかやりたいことが見つかった時、私はこうやって形にしたんだよ、と経験を伝えられるようにしたいんです。

私も幼いとき、母がビーズできれいに作ったアクセサリーを、マルシェなどで販売していたことがあって、当時、母をすごく誇らしく思った覚えがあります。近いうちに叶えたいですね。」

〇カチッと合ったもの を軸に

今後の目標を聞いてみると「決めないようにしている」とのこと。今までも目標ではなく、必要とされたところから実行に移してきた背景があります。


「WEBショップも、支払いをスムーズにするために立ち上げたんです。お客さまを支払いのために銀行などに歩かせるのも親切じゃないですよね。ワークショップも、お声がけいただいて始まりましたし、2回目以降もお客さまの声から開催できました。

手芸店を開くことも検討中なのですが、それもお客さまに応えるためです。ワークショップが終わって、お客さまのマクラメ熱が上がっている時に、すぐに材料を提供して手を差し伸べられたら、いちばん親切だと思っているからです。


今後も、自分の行動からいただくお客さまの反応から、次のステップを決めようと思っています。そのなかから、いろんなものを短期的にでも試してみて、タイミングがカチッと合ったものが、うまく楽しく、進むんだと思います。」

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―――「たのしい」は思わぬところから生まれてくるもの。そして求められた必然的な行動から、次の「たのしい」が伝わっていくのかもしれません。


亜美さんの「inor」Instagramは、こちらから。
https://www.instagram.com/inor_macrame_fiber_art/

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