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SDGs考察集 vol.06 | 2020.06.03

SDGsに関する商品・サービスを勝手に考察するSDGs考察集。
第6回の目次はこちら。

サーキュラーデザインのごみ箱を開発
「LUNE

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商品サービス概要

循環型のごみ箱を開発し、販売しているのが、サーキュラーエコノミーの最先端とも言われている都市、オランダ・アムステルダムに拠点を置くLuneという企業。汚れたり、破損したりしたゴミ箱を簡易に修理可能にすることで、ごみ箱自体をサステナブルにしてしまうというおもしろいアプローチです。部品ごとに取り外すことができるモジュラーデザインを施すことで、修理工数やコスト、それによる環境負荷を最小限に。なるべく廃棄せず使い続けるという信念のもと、ごみ箱を所有せずに利用してもらう「PaaS(Product as a Service)」モデルを導入。ごみ箱のサブスクリプションシステムまで実現しています。


視点「3Rより5R、5Rより10R?」

「ごみの3R」という言葉をご存知でしょうか?  廃棄物の削減に努めるやり方を示したもので、Reduce(削減)、Reuse(再利用)、Recycle(再資源化)を意味しています。ここに、Repair(修理)や、そもそもごみになるものを受け取らないというRefuse(拒否)を加えた「ごみの5R」という考え方も存在します。

ここで大事なのが、その優先順位。日本人にとってリサイクルという言葉は習慣にもなっていて馴染みがあり、とても良いことのように感じます。プラごみを再資源化したエシカル製品もファッション界隈などでよく見かけるようになってきました。しかし、過去の記事で書いたように、その裏側にはいろいろな課題が潜んでおり、再資源化によって作られた製品も捨ててしまえば再びごみとなってしまいます。つまり、リサイクルよりも、リユース(その手段としてのリペア)。そしてそれよりもリデュース(その手段としてのリフューズ)というのが、廃棄物削減の優先順位。繰り返し使えるものを普及させていく。そして、そもそも不必要に作らない。SDGs達成に向けた、とても重要な考え方です。

ちなみに先ほど取り上げたLuneはなんと、10項目ものR、すなわちサーキュラリティ(循環性)を掲げる徹底ぶりです。その内容は、Reduce(削減)、Reuse(再利用)、Repair(修理)、Refurbish(磨き直し)、Remanufacture(再製造)、Recycle(再資源化)、Recover(再生)、Rethink(再思考)、Redesign(リデザイン)、Repurpose(別の用途への捉え直し)。ごみを捨てるタッチポイントとなるごみ箱そのものを、サーキュラーエコノミーの象徴としてデザインし直すことで、ごみと環境について人々が意識するきっかけづくりに繋げています。

さて、来月7月からはレジ袋有料化がようやく日本でも始まります。これを機に、少しずつ日々のごみに対する意識が変わっていくといいですね。ちなみに僕は、先日取り上げたボーダレス・ジャパンが事業化したこのコンポストを導入することにしました。ごみの削減だけでなく、生ごみの嫌な臭いもなくなるし、家庭菜園用の栄養豊富な土づくりもできて、一石三鳥です。


SDGsと意味も文字も似ていてややこしい?
「ESG投資」

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商品サービス概要

先月、三菱UFJフィナンシャル・グループが環境や人権に関する与信方針を2年ぶりに改訂。北極圏やオイルサンドに関わる石油・ガス開発は環境・社会リスクが高いため「特に留意する事業」に追加するなどの変更を行いました。これに対し環境NGOは、「化石燃料事業への融資制限の基準と明確な段階的廃止計画がない」などと不十分さを指摘。「3メガバンクのなかで最も期待外れ」といった批判が起こりました。(詳細記事はこちら
 

視点「ESG投資の意味とは」

これまでも何度か記事で取り上げていた「ESG投資」という言葉。SDGsの高まりと時を同じくして注目を浴びている投資のアプローチであり、投資家と相対する企業経営にも大きな影響を及ぼすものです。とはいえ、SDGsにも似たアルファベット3文字でいまいち直感的に理解できないESG投資。その意味するところを改めて振り返ってみたいと思います。

そもそもESG投資とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字で、簡単に言えば、これら3つの要素にしっかりと取り組んでいる企業は長期的な成長が見込めるので積極的に投資をしていきましょうという投資指針のこと。裏を返せば、これらの視点をないがしろにしている企業は社会悪だし成長リスクも高いので投資を控えましょう、という意味にもなります。企業にとっては投資を受けられるかの指標のひとつとなるため、この領域をしっかりと念頭に置いた企業活動がより重要となってきています。

このESGを重要視する投資の観点は、機関投資家の間で急速に広がってきており、そのひとつのきっかけとなったのが、世界最大の資産運用会社ブラックロックが方針を明確に打ち出したこと。国連機関である国連環境計画(UNEP)と国連グローバル・コンパクト(UNGC)が2006年に提唱し、推進しているイニシアチブ「国連責任投資原則(PRI)」への署名がそれに当たり、ESG投資を推進していくことを自主的に署名し、参加を表明したものです。結果、世界中の多くの投資会社がこの判断に追従。世界最大の年金基金である日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も2015年9月にPRIに署名し、国内でのESG投資熱も一気に高まることとなりました。もちろん、同じタイミングでの世の中的なサステナビリティー概念の普及や、グローバルな指針として国連がSDGsを定めたことによる影響も非常に大きく、そのような一連の流れが重なり合って、ESG投資という大きなムーブメントが起きていると言えます。

先ほど、このESGの領域にしっかりと取り組んでいる企業は長期的な成長が見込めると書きましたが、ここについてもう少し。これまでの投資の意思決定において重視されていたのは企業の財務情報でした。財務諸表上にあらわれてくる企業活動の様々な情報(数字)というのは、言ってしまえば「過去の企業活動の結果としての現在」の最新情報です。しかし、中長期的な視点が必要となる投資活動においては、過去や現在だけでなく、これからの未来を予想する必要が生じます。その点においても、理にかなっていると言われているのがESG投資です。

わかりやすく人間に例えると、今現在、すごく力のあるアスリートがいたとします。しかし、その力を生むために、過度と捉えられるほどのハードなトレーニングや食事制限を行っており、さらには筋力を増強する薬物にも手を出していた、としましょう。これを先ほどの現時点のみの視点で見てしまうと、とてもパワーがあるので応援(投資)したくなります。しかし、これからの中長期的な視点で見ると、とてもじゃないですが今の状況はサステナブルではなく、いつ体にガタがきてもおかしくないことは明らかです。

一方、自分の身のまわり(環境)や自分を支えてくれている人々(社会)、さらには自分自身の体(企業統治)をしっかりケアし、無理せず地道な努力を続けているアスリートは、今はまだパワーが足りないかもしれませんが、やがてはその姿勢に共感する多くのファンを獲得し、長期に渡って活躍できる優れたアスリートとなるかもしれません。身のまわりや今後に対する投資をしっかりと行っているので、突然のアクシデントやルール変更といった大きな変化にも冷静に対応できるでしょう。このように、ESGの領域に積極的に取り組み、活動を続けている企業は、結果として将来、多くのリターンを生み出してくれる可能性が高いのです。

実際に、社会や環境を意識した投資は、財務リターンが高く、投資リスクが小さいという研究結果も発表されるようになりました。これら世の中的な動きと未来思考型の投資アプローチ、そしてその結果(リターン)が作用しあうことで、ESG投資のムーブメントが広がっていっていると考えられます。今後さらに加速することも予想されているESG投資。SDGsと対をなすようなこの動きをしっかりと捉え、企業活動をアップデートしていくことが今、多くの企業に求められています。

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