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いぶし銀のような美、夢想のなかにあるウィーンの雰囲気が現実に、名手ウラッハのブラームス🕯️

ブラームスのクラリネット作品を聴くとき、私たちはどんな演奏家を選ぶでしょうか。クラリネットの名手は数多くいますが、私はやはりウィーンのレオポルド・ウラッハに惹かれます。彼はブラームスの音楽に深い理解と愛情を持っており、そのいぶし銀のような美しい音色は、ブラームス晩年の心情を見事に表現しています。

ウラッハは1896年にウィーンに生まれ、ウィーン国立音楽院でクラリネットを学びました。1922年から1938年までウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の首席クラリネット奏者を務め、その後もウィーン交響楽団やコンツェルトハウス四重奏団などで活躍しました。彼はブラームスのほかにもモーツァルトやシューベルトなどのウィーン古典派の音楽を得意とし、その伝統的な演奏様式は多くの人々に影響を与えました。

ブラームスは1890年に引退を宣言しましたが、1891年にクラリネット奏者リヒャルト・ミュールフェルトと出会って感動し、再び作曲活動を再開しました。彼はミュールフェルトに献呈した作品114のクラリネット三重奏曲、作品115のクラリネット五重奏曲、作品120のクラリネットソナタの2曲を残しました。これらの作品はクラリネットの可能性を最大限に引き出しており、ブラームスの熟達した技巧と深い感情が見事に調和しています。

ウラッハはこれらの作品をすべて録音しており、特に作品115のクラリネット五重奏曲は彼の代表作として知られています。この録音は1953年に行われたもので、コンツェルトハウス四重奏団と共演しています。録音はモノーラルですが、その音質は新技術でかなり向上しており、ウィーンの名クラリネット奏者ウラッハが遺した録音のなかでも、これは永く残しておきたいものです。

この録音では、ウラッハとコンツェルトハウス四重奏団が見事なアンサンブルを聴かせてくれます。ウラッハの音色は暗く、あまり音量の変化を感じさせない点に特色がありますが、その柔らかくふくよかな響きは他の楽器の音色と見事に溶け合っています。それゆえ、ウラッはのいぶし銀のような美しい音色とコンツェルトハウス四重奏団の柔らかで甘美な音色がすばらしく融和しており、なによりも時代の雰囲気がほのぼのと感じられます。

この録音では、ブラームスが晩年に込めた澄んだ心境や深い情感が自然とにじみ出てきます。ウラッホの演奏は必ずしも流麗でも闊達でもありませんが、淡々としたなかに、ブラームスの音楽の本質が見えてきます。この録音は、私たちの夢想のなかにあるウィーンの雰囲気が最大限に現実になっている点において、断然トップに挙げられる名演です。

ブラームスのクラリネット作品を聴くなら、ぜひウラッホの録音をおすすめします。ウィーンの演奏様式の醍醐味を満喫させてくれる演奏であり、空前絶後の名演奏といってよいでしょう。この録音は、ブラームスの音楽を愛する人々にとって、永遠の宝物となることでしょう。




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