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脱毛

つい最近ヒゲの脱毛をはじめた。
前々から、剃っても剃ってもしぶとく残る青ひげがいやでいやで仕方なかった。
口周りにカビでも生えてんのかな。ってくらいなもんで、カビが生えてても称賛されるのはチーズだけだ。
あいにくチーズではない人間の僕は早々にどうにかしたい事態だった。

でも、脱毛にはとても予算がかかることがわかった。
全体をツルツルにするのに、約10万円ほどかかるらしい。
使う機械や伴う技術、脱毛の範囲などもろもろでそれだけかかる。
なかなかパッと決めるには考えあぐねる金額だ。
ううーんと唸ってしばらくたったある日、夜勤のアルバイト先に来てくれてる常連のお客さんの中でなんと脱毛エステで働き始めた方がいらっしゃった。

しかも、僕のヒゲ事情を知ってくれていてモニターで脱毛をやってみないかと提案もしてくださったのだ。
天の導きとはこの事。そして、後日日にちを決め、いよいよ脱毛モニターがはじまった。
指定された場所へ行くと、研修室の張り紙がある部屋へたどりついた。
ここか。いよいよ口周りゴルゴンゾーラからの卒業へのカウントダウンが始まるんだ。

期待に胸踊らせ中へ入ると白い制服を身にまとった方々が沢山いらっしゃった。
さすがエステとも言うべきか圧倒的に女性の方が多い。しかもべっぴんさん。
こりゃあすごい光景だ。どぎまぎしちまうよ。
初めての光景にうろたえていると、バイト先の常連さんでもある方が施術を行うベッドまで案内してくれた。
向かうとそこには三人の女性と一人の男性。
男性の方はどうやら三人の脱毛の施術をサポートする先生のようだ。
ベッドに腰を掛け、諸々の説明を受ける。
説明が終わり、わからないことは特になかったのでいよいよ脱毛のスタートだ。

仰向けに寝てアイマスクをつけてもらう。

脱毛の方法だが、今回モニターで行ってもらう施術は、毛穴にとても細い針を刺し、毛根を電流で焼いていくいわゆるニードル脱毛と呼ばれるものだ。

針で刺して更に焼くって拷問の種類かな?聞くだけで震えるが、そんなことだといつまでたってもツルツルになれない。

覚悟を決めて始めてもらう。一人目の方が席に着き、まず最初は毛穴に針を入れるだけの挿入をし始める。チクっチクっと顎の辺りを小さいながらもささやかに鋭い痛みが顔に続く。
顔に針刺してるんだから当然と言えば当然のことだが、手にはすでに汗が出始めていた。

チクっチクっ。「ううーん...」

ううーん?唸っている。どうやら苦戦してるようだ。そうだよな、毛穴に針を入れるなんて糸通すより難しいだろうしな...そりゃあ唸りもするか...。


そうしてしばらくチクチクが続いたが、先生が口を開く。「じゃあ交代しよっか!」

交代?おや?まだ毛は抜かれていないですが。
そう、これはあくまでも研修。
一人ずつしっかり段階を踏んでいく必要があるのだ。


二人目の方も同じように針を刺していく。
ん?さっきの方よりグイっと刺してくるな。
痛いながらも、目を隠されているからか顔周りに伝わる感覚に敏感になっているようだった。

そして三人目と針刺しが終わったところで先生が「じゃあまた一人目に戻って通電しよっか!」

え、言葉こわ。通電というパンチのあるワードが僕の心臓の鼓動を速める。

一人目の方がまた席に戻ってきた。挨拶を済ませると、また毛穴に針を刺す。
もうこの時点で何十発も食らっているが、まだ慣れない。
針痛いなーと思っていると、こんなフレーズが耳に入ってきた「通電します」

え、宣告こわ。
という感想も束の間、ジッ!という音と共に顔の一点に経験したことのない衝撃が走った。

ぐわー!痛っ!熱っ!え?え?薄暗い中眼球がせわしく動く。整理がつかない内に二発目の「通電します」

ジッ!ギャッ!痛っ!
三回四回と続く通電。

何回目だろうか。
ジッ!「あれ...先生、抜けないです」
「ん?貸して?(ピンセットで代わりに抜く)あーほら、ここ、ゼリーみたいのがここまで付いてるでしょ?結構深くまで生えてるんだよ」

ちきしょう、毛深い自分が憎い。

「あーほんとだーすごーい」

聞こえたフレーズは違うシチュエーションならば浮かれていたはずもここでは悲しい。

また、抜けないところがあったみたいで。
「先生また抜けないです」「え?じゃあ再通電で」



.......へいへーい!おっかないよー!!!!
同じ所に2度目の電気を流される。
「再通電します」
ジッ!ぎゃーーー!あちいよーー!

もうその頃には上に掛けられていたタオルも握り閉めすぎてぐちゃぐちゃ。
手も服の下も汗でぐちゃぐちゃになっていた。

それを何回かやってもらった後、先生が次のような指示を出した。
「じゃあ時間計るから、1分で10本頑張ってみよう」

そう、お客さんの負担を減らすには同じ痛みでも本数を抜いた方が、その分終わりも近くなるから最善なのだ。
それの目安が1分で10本らしい。


研修の方が準備に入る。毛穴に針が通ったらスタートだ。
スッ。
あれ?さっきより針通すのが早い。ある程度の緊張感が技術を引き上げたのかもしれない。
「はい」
毛穴に針が通り先生にスタートを促す。
「はい、じゃあよーいスタート!」

ピ!っとタイマーの始まり音が聞こえる。

ジッ!ジッ!ジッ!


連続で痛いの続くよー!!!!ギぃーーーーーーー!!!
目をギュッと強くつぶって、1分をひたすら待つ。ピピピ!1分やっと終わった。産まれて始めて途方もない1分間を体験したかも知れない。

研修の方が報告する。「7本です」
「あー、そうかぁじゃあもう一回やってみようか」

え?コンティニューあるの?
また連続した痛みに耐えて、結果を聞く。
「9本です」
「あー、惜しいねじゃあ最後ね。つぎでクリアしよう」

二機あったの?
そして三回目。慣れない痛みに目を強くつぶり最後の一回が終わる。







「7本です...」
「うーんそうかぁ」



戻りました!797!泣くな大喜男だろ!
薄暗い目の前がチカチカした。

気は抜かないで欲しかったな....。

そんな言葉が頭に浮かんでいるときに、恐ろしい事実に気づいてしまった。
まだ一人目。

この後同じことを二人三人とやりその日の施術は終わりを迎えた。

一応寝てるだけとはいえ3時間程痛みに耐えていたこともあって疲労感がすごかった。

終わった後、冷却と肌保護のシートを三日分いただき、帰路に。

ヒリヒリとした部分は戦った証だ。お疲れ様と労いながらシートを貼る。
いやーとんでもなく痛かったなぁと思いつつ、やってもらった所はしっかりと毛が無くなっていて少し感動した。

効果を実感した時自分でも思いもよらない行動を取った。

元々決めていた日数に更に1日足して施術のお願いをしていたのだ。
確かにとんでもなく痛かった。
でも毛が無くなるのがわかった今、攻めるしかないと言う気持ちに切り替わっていた。
その方たちのお陰で変化していく過程がとても嬉しく思った。

最近二回目を終えたのだが、だんだんと減っていくヒゲの本数に感動した。
このまま綺麗さっぱりなくなるといいなぁ。

しばらくはお世話になります。ありがとう。
エンディングはいつ見れるんだろうなぁ。

すこしでもいいなと思ったらサポートよろしくお願いします!今後のインプット、自身のレベルアップを経て、皆様に楽しい時間を提供させていただければと思います。