1週間のマーケットサマリー
皆様こんにちは。
北海道大学(北大)在学、札幌出身の玉井大貴です。
投稿がご無沙汰してしまい大変失礼いたしました。
現在わたくしは社会情勢や経済情勢に詳しくなるためにその日に起きた出来事をまとめて1週間に1度アウトプットする取り組みを実施しています。(社会情勢といっても逮捕・裁判といったセンシティブなニュースは含めず、あくまでも経済ニュースを中心にご紹介していきますのでその点はご了承いただけますと幸いでございます。)
もし、ご興味があればわたくしのアウトプットを拝見いただき投資判断のご参考にしていただければ幸いでございます。
【マーケット早わかりエッセンス】
前週のドル円は米経済指標の結果によって上下する展開となった。特に前週の米経済指標はマチマチであり、指標ごとにドル高になったりドル安になったりと方向性が定まらない週であった。但し米景気後退リスクの縮小によるVIX指数の低下、FRB緊急利下げの思惑の後退等は市場にとってプラス材料であると言え、秋口にかけてこの動きが継続するかどうかに注目だ。
指摘というよりはコメントですが、上記の通り市場参加者も少なく、見慣れない為替のレベルになったためか、先週は流動性が特に薄いと感じました。今週も小売りの発射台となった147.50近辺を明確に割れたことで流動性が薄めな環境が続いています。
12日(日本市場が休場の中、全般的に小幅な値動き。VIX指数も20%程度で推移。投機筋の円売りポジションの巻き戻し進展でドル円は一時148円台まで上昇するも米期待インフレ率の低下から147円台前半まで押し戻された。)
日本休場
BoEマン委員(追加利下げに否定的なスタンスを示した。)
最タカ派とめされるマン委員は「賃金・物価の上昇圧力の解消には長い時間を要するだろう」と発言し追加利下げに否定的な見方を示した。マン委員のようなタカ派な委員の存在を考えると9月BoE会合で連続利下げを決定する公算は小さいと考えられる。上記結果による為替への影響はなし。
イラン、イスラエルに対して報復攻撃を準備か(今週にもイランはイスラエルに対して報復をする準備があると米政府が発表した。)
イランのペゼシュキアン大統領も独英首相との電話会談で、イスラエルへの報復の可能性を改めて示唆したとされる。上記結果を受けて原油価格は1バレル80ドル台まで上昇し、金価格は1トロイオンス2500ドルに到達した。ただし為替への影響はなし。
米7月NY連銀消費者調査(3年先の期待インフレ率+2.33% 前月同指標+2.93%)
3年先の期待インフレ率は調査開始以来、最低の結果となった。9月FOMCでの利下げ開始をサポートする材料となるとみられ、ドル円は小幅に下落して147円台前半まで押し戻され、米債利回りは全般的に低下した。
13日(インフレ懸念低下から米債利回り低下・株高。原油価格は反落。ドルがほぼ全面安に。)
英7月雇用統計(2024年4月-6月平均失業率4.2% 予4.5% 前期同指標4.4%、2024年4月-6月週平均賃金前年同期比+5.4% 予+5.4% 前期同指標+5.8%)
総じて強い結果となった。失業率が市場予想に反して低下しただけでなく、雇用者数と有給従業員数の増加幅も市場予想から上振れたことで、労働需給の緩和ペースが市場の想定より緩慢であることが示唆された。また、平均賃金はしっかりと減速していることから、賃金に影響を受けやすいサービス価格のインフレ圧力緩和にも繋がるとみられ、スタグフレーション懸念も一気に後退したと考えられる。上記結果を受けてポンドは対ドルで0.3%上昇した。また、BoEの利下げペースが緩やかになることも織り込まれた。ただし現時点では8月利下げの公算は維持されている。
米7月PPI(コアPPI前月比-0.05% 予+0.2%、サービス価格前月比-0.2%)
市場参加者が特に注目するコアPPIは市場予想を下回った。物価上昇率の安定を見込んで市場はFRBの利下げ期待を高め、現時点では9月会合で50bp利下げすることを半数程度の市場参加者が想定している。上記結果を受けて米債利回り低下、大幅株高(SP500は米7月雇用統計発表前の水準に。)、VIX指数下落となった。為替は発表直後は40銭程度ドル安円高に振れたがその後は徐々に下値を試す展開となった。
ボスティック・アトランタ連銀総裁 発言(9月利下げ開始を明言しなかった。)
「年内には利下げの準備が整う可能性が高い」としつつも、9月利下げ開始への支持を明言しない姿勢を取ったため来週のジャクソンホール会議で市場の想定よりタカ派的な意見が出る可能性が高くなり、市場の失望リスクが高まったように感じる。上記結果による為替への影響はなし。
14日(米7月CPIを受けて、米利下げ期待は小幅低下も、市場心理は安定。またVIX指数も低位安定。ドル円は横ばい圏で推移。)
RBNZ金融政策決定会合(25bpの利下げを決定し政策金利を5.25%とした。総裁記者会見もハト派的。)
事前の予想では、金利据え置きと利下げ実施との思惑が拮抗していたため今回の利下げはややサプライズであったと言える。また、記者会見でオア総裁は、本会合で50bpの利下げが検討されたことを明かしたほか、連続利下げの可能性も否定しなかった。これらのコミュニケーションはハト派的で今後さらなる利下げを実施する意向がうかがえる。上記結果を受けてNZドルは対ドルで1%程度下落した。
英7月CPI(前年同月比+2.2% 予+2.3%、サービス価格前年同月比+5.2% 予+5.5% 前月同指標+5.7%)
宿泊費や交通費の伸び率が縮小したことが寄与した。8月中旬には有名歌手のコンサートが予定され、周辺地域の宿泊費や交通費の上昇が見込まれるため、このペースでのサービスインフレの減速が継続する可能性は低いものの、BoEの利下げ判断へのサポート材料となることは間違いないだろう。OIS市場も上記結果を受けて年内2回の利下げをフルに織り込んだ。また、ポンドは対ドルで0.3%程度下落した。
米7月CPI(前月比+0.2% 予+0.2% 前月同指標-0.1%、コアCPI前月比+0.165% 予+0.2%=ほぼ一致。)
コア財価格は前月比-0.32%と下落した一方、家賃が同+0.49%と高い伸びを示したことで前月からやや反発した。概ね、市場予想の範囲内もしくはやや下振れの結果と言えるが、発表直後は米債利回り上昇で反応した。これは市場が前日の米7月PPIの結果を受けて過度に下振れリスクを警戒していたことに起因していると考えられる。その後は徐々に米債利回りは低下した。また、FRBの9月50bp利下げ期待が小幅に低下し、9月25bp利下げ期待が小幅に上昇した。上記結果を受けたドル円は発表直後は1円以上乱高下した後、ドル高円安に振れたがその後は発表前の水準まで徐々に下落していった。
15日(米経済センチメント指標の結果はマチマチも、景気失速への懸念後退。金利上昇・株高。)
日2024年4月-6月期GDP速報値(前年同期比+3.1% 予+2.3%)
低迷が続いてきた家計消費が前期比+1.0%と市場予想(同+0.6%)以上に回復したことが、市場予想上振れの主な要因とみられる。また、家計消費の強さは日銀を含む本邦当局にとっては安心材料となりそうだ。上記結果による為替への影響は限定的。
豪7月雇用統計(雇用者数前月差+5.8万人 予+2.0万人、労働時間前月比+0.4% 2024年3月以来最大の伸び。)
雇用者数の増加はフルタイマーが主導しており、実質的な中身も非常に強い結果であったと言える。RBAは8月金融政策報告書において、労働市場が想定以上に底堅く推移する場合、インフレ目標への回帰が遅れる可能性を指摘しており、目先RBAのタカ派姿勢は維持されるとみられる。また、完全失業率は4.2%と前月から+0.1%pt上昇したが、これは労働参加率の上昇によるもので警戒する必要はないだろう。
中国主要指数(中国7月鉱工業生産、中国7月小売売上高、中国2024年1月-7月期不動産投資、中国7月固定資産投資)
総じて弱い結果となった。小売売上高とインフラ投資のヘッドラインは市場の想定よりも良かったが、これらはそれぞれ昨年同月水準の低さとクリーンエネルギー(電力設備投資)による寄与が大きいことが上振れの主因として挙げられているため見た目ほど強くないとの指摘が多い。また、土木工事といった伝統的なインフラ投資は年初来の地方政府専門債発行の遅れや7月の天候要因で依然低迷している。上記結果を受けて人民元は対ドルで4%近く下落した。
英2024年4月-6月期GDP速報値(前期比+0.6% 予+0.6% 前期同指標+0.7%)
GDPの6割を占める個人消費を中心とした景気回復が継続している。ただし今回の市場予想上振れは、政府支出の寄与(+0.3%ポイント)が大きく、民間設備投資が3四半期ぶりに前期から減少するなど、ヘッドラインの数字ほど強い内容ではないことに注意が必要だ。上記結果を受けた為替への影響は限定的であったが、景気後退リスク回避のために利下げを急ぐ必要がなくなった点については短期的にはポンドを下支えする可能性が高いと考える。
米7月小売売上高(コア売上高前月比+0.3% 予+0.1% 前月同指標+0.9%)
前月からはやや減速したものの、予想を上回る強い結果となった。自動車・部品(前月比+3.6%)や電子製品・家電(前月比+1.6%)などの業種で伸びが目立った。自動車・部品が大きく伸びた背景には、6月に発生したディーラーへのサイバー攻撃で販売が減速したことの反動があるとみられる。また、電子製品・家電が伸びた背景には電子商取引(EC)大手が7月半ばに開いた恒例の大規模セールで大幅な値引き販売をしたことがあるとみられる。米前週分新規失業保険申請件数(22.7万人 予23.5万人)・継続受給者数(186.4万人 予187.5万人)の結果が想定以上に強かった点なども踏まえてドル円は149円台まで上昇した。さらにVIX指数も15%程度まで下落している。ただし他の米センチメント指標の結果はマチマチであり(フィラデルフィア連銀製造業景況感指数-7.0 予-5.2、NY連銀製造業景況感指数は-4.7 予-6.0)、市場は完全に自信を取り戻したとは言い難い状況であることに注意は必要だ。
PPI / CPIであまり動かずという週になりましたが、(翌日の小売で2円程度一瞬動いたというのはあるものの) 最近のFed高官からもコメントが相次いでいるように注目は雇用という印象です。これもコメントです。
米8月NAHB住宅市場指数(39 予43)
2023年12月以来の低水準となった。利下げ期待が高まる中にもかかわらず消費者が住宅の購入をためらっている様子が浮き彫りとなった。住宅指標は広く他の経済指標にも影響を及ぼす可能性が高い(住宅購入はハウスメーカーだけでなく、住宅の材料メーカー、住宅ローン組成者など数多くのステークホルダーを巻き込むため。)ので住宅購入意欲の回復が鈍いと経済の重石となりかねないので注視が必要だ。為替への影響はなし。
16日(米指標は消費者心理上振れ、住宅指標は下振れとマチマチ。米債利回りは小幅低下、ドル安円高が進み147円台まで再調整した。)
米7月住宅着工件数(123.8万件 予133.3万件)・許可件数(139.6万件 予142.5万件)
着工件数は20年5月以来、建設許可件数は20年6月以来の低水準となる。ハリケーンによる一時的な悪化に過ぎないとの見方もあるが、米金利低下が住宅市場にプラスの影響をもたらしている状況は確認できなかったことは確かだろう。上記結果を受けてドル円は40銭程度ドル安円高方向に動いた。
米8月ミシガン消費者信頼感マインド(67.8 予66.9 前月同指標66.4)
期待指数は72.1と、4カ月ぶり高水準。現況指数は5カ月連続で低下した。民主党支持者の間でのセンチメントが87.9と前月の83.0から改善、ハリス候補への期待の高まりが民主党支持者を中心に心理を改善させた可能性があろう。しかし、生活費の上昇や雇用の冷え込み、借り入れコストの高止まりにより、現況指数は低下の一途をたどる。今後は選挙戦の行方によって消費者のマインドが変化していくリスクには警戒が必要そうだ。上記結果を受けてドル円は30銭程度上昇した。しかしその後はじわじわとドル安円高方向に動いた。背景にあるのは
投機筋による円売りポジションの解消。
CFTC公表の先週火曜日(13日)時点の非商業部門のドル円ポジションは、2021年3月以来の円買い超過となった。
だと考える。これにより米小売売上高上振れによるドル円急騰分が巻き戻された形となった。
今週の重要イベント
今週は日米で金融政策に絡むイベントが予定されている。特にジャクソンホール会合前後でのFRB高官発言には注目が集まっており、9月利下げに向けた地均しがどの程度進むか見極めたい。現時点では50bpの利下げや緊急利下げといった過度な利下げ期待は修正されており、FRB高官がこれらの期待と概ね一致するような発言をすればVIX指数低下、市場心理安定からドル高円安、株高が生じると考えるが、過度にタカ派な発言が出た場合、株安となる展開が予想され警戒が必要だ。日本では23日(金)衆参閉会中審査における植田総裁の発言が注目となる。7月の利上げ判断を正当化、メインシナリオとして今後の利上げ継続姿勢を示す一方、内田副総裁講演同様に、市場が不安定な中では利上げを急がないコミュニケーションが示されよう。
19日 日6月機械受注、米民主党全国大会(~22日)
20日 RBA8月会合議事要旨、カナダ7月CPI
21日 日7月貿易統計、米7月FOMC議事要旨
22日 ユーロ・英・米7月PMI速報値、ユーロ圏2024年第2四半期妥結賃金、ECB7月議事要旨、米ジャクソンホール会合(~24日)、米7月中古住宅販売件数、ユーロ圏8月消費者信頼感(速報値)
23日 日7月全国CPI、日衆参閉会中審査(=日植田総裁や鈴木財務相の発言に注目)、パウエル・FRB議長講演、ベイリー・BoE総裁講演
推奨取引
ドル円を1週間ロングすることを推奨。
(理由)
市場心理安定による円キャリー取引の再活発化が生じると考えるため。
元々利下げに慎重であったFRBがジャクソンホール会合で唐突に緊急利下げや50bpの利下げについて言及する可能性は極めて低いと考えるため。
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