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実例解説!個人事業主が一人で事業再構築補助金をもらうためのマニュアル その⑦ 事業計画書、どこから書く?

事業計画書の書き方って難しいですよね。

小規模事業者持続化補助金なら、過去の採択事例の事業計画書なんか検索すればでてきますし、事務局がご丁寧にサンプルまで載せてくださっています。それを真似すれば採択されるかどうかは別として、とにかく書くことはできると思います。

一方で事業再構築補助金は初めての試みなので事例もないしサンプルもなし。あるのは公募要領だけです。

公募要領の注意事項の一番初めにこうあります。

1:補助事業の具体的取組内容
1 現在の事業の状況、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性、事業再構 築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事等)、今回の補助事業で実 施する新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編又はこれらの取組につい て具体的に記載してください。

【現在の事業の状況】という言葉が一番初めにありますね。

なので、現在の事業の状況を書くだけだから書きやすいしまずはここから始めようか……なんていう方は残念ながら枚数がオーバーして後々苦しむことになります。補助金の事業計画書には枚数制限があります。私の時は15枚でしたが今は1500万円以下の事業は10枚以内とされているみたいです。思いつくままに現在の事業を書いていってしまうとあっという間に枚数オーバーしてしまいます。全体が10枚以内なら、現在の事業状況を書く枚数は多くて2枚以内です。

ではどこから書いたらいいのでしょうか。

今回は「事業計画書はどこから書くか」を事例で解説し、後半は【現在の事業の状況】をどう書くか例示していきます。


事業計画書どこから書く?


まず、事業計画書をどこから書くかですが、結論から言うと、どこから書いてもいいです。

ただし重要なのは、

「事業計画書を書く前にあらすじを書く」

です。

全体像さえしっかり固めてしまえば、あとは個別に落とし込むだけなのでどこから書いても大丈夫です。書きやすい所から書きましょう(枚数は意識しないとダメですが)。

さて今回の事例も「もしリラクゼーション店が店舗の一部を改装してたこ焼き屋をしたのなら」でいきます。略して「もしたこ」です。詳しくは前回の記事をお読みください。

前回はSWOT分析は結論から逆算して書くという内容でした。その結論というのはあらすじです。

「もしたこ」の強み弱みはこうです。

強み:地元に根付いた経営で周辺住民のリピート率が高く長年通われている方が多数、ホスピタリティの高いスタッフが揃っている、女性客が多い、技術力が高い

弱み:人件費が高い、隙間時間が多く経営効率が悪い、サービスがリラクゼーションしかないため売上が少ない、コロナで来院数減少、新規集客少ない

この強み弱みは以下のあらすじから逆算して書いています。

コロナウイルスの影響で来客数が減少。提供メニューが一つしかないため売上が下がり、高い人件費やスタッフの隙間時間が経営を圧迫していた。そこで、コロナ禍で内食機運が高まっていることを活用し、店舗の一部を改装して粗利率の高いたこ焼き店を運営。たこ焼き店の運営は既存事業のスタッフを兼任させることで既存事業の高い人件費と隙間時間を解消。提供できるメニューが増えることでトータルでの顧客単価を上げることができる。弊社顧客は地元住民が多いため、たこ焼き店の認知度を最初から高めることもできる。また、たこ焼き店への顧客に既存事業の存在をアピールすることで集客力も強化できる。

このように、あらすじさえしっかりしておけばあとは個別に落とし込んでいくだけなのでどこからでも書けます。

もし事業計画書を書いている途中に新しいアイデアが浮かんできたとします。

例えばこの事例であると、たこ焼きは普通のたこ焼きを販売予定でしたが、リラクゼーション店プロデュースのたこ焼きなので、「リラックス効果の高いハーブティーとセットで売ろう!」とか「オーガニックたこ焼きにしよう!」とかあるいは高級食パンブームに乗って「高級たこ焼きにしよう!」みたいなアイデアが浮かんだとします。

この時、このアイデアを「補助事業の内容」にだけ新しく書き加えたりするのがダメな事業計画書の最たるものです。論点がズレるからです。

もし新しいアイデアを思いついたなら「あらすじ」から変えていかなくてはなりません。このあらすじは事業計画書を書く時に迷わないための道標なのです。

販売するのが普通のたこ焼きの場合、論点は「たこ焼きを販売することでスタッフをジョブローテーションして、余剰人員と隙間時間を解消すること」です。

この場合、事業計画の内容を書く時は、運用方法などのシステム的なことに文字数を割いて記述しなければなりません。スタッフをどのように配置して、どのように活用するのか。そうするとどれくらいの人件費が節約され余剰時間はどれくらい解消されるのか。その上でたこ焼きをどのように売ってどれくらい利益がでるかというたこ焼き事業の詳細を書きます。

あくまでも論点は「人件費、余剰時間」です。

では途中で「高級たこ焼き屋にしよう!」とプランを変更したのなら何が変わるのか。

スタッフの空き時間を活用するためにたこ焼き屋をやるならまだわかりますが、高級たこ焼きにする必要性はないですよね。そうすると、なぜ高級たこ焼きにするか理由が必要になってきます。そして高級たこ焼きにすることで得られる効果も通常のたこ焼き屋とはまた変わります。さらにそうなると打ち消される弱みも変わるのです。

得られる効果を考えてみます。

高級たこ焼き屋なんかあるのかどうかもしらないし、あったとして多分流行らないと思うので適当に書いてみます。

リラクゼーションと高級たこ焼きのシナジーとして思いつくのは、 

高級たこ焼きという珍しいお店自体が、併設する既存事業の宣伝広告的効果を有しており、既存事業の集客につながる

高級たこ焼きという珍しい商品のため、遠方からの顧客も期待でき、併設する既存事業のサービス券等を配布することで新たな顧客を開拓できる

当該高級たこ焼きは焼き上がりまで時間がかかる。その待ち時間に既存事業で使っている足湯など、労働コストがかからず提供できるものをサービスとして提供して、既存事業の体験的役割も付加する

焼き上がりまでの待ち時間に既存事業を利用してもらうことで既存事業の販売機会を増やす

無理矢理見つけたらこんなものでしょうか。

ここであげた効果は、だいたいが新規事業は既存事業の「集客」「宣伝」がからんでいます。そのため、この集客・宣伝効果が既存事業の弱みを打ち消す内容の事業計画書でなければなりません。そのため、あらすじを書くならば、既存事業の課題として「集客」「宣伝力の弱さ」を盛り込んでおかなければなりません。そこから逆算した高級たこ焼きをやる理由は、「高級たこ焼きという珍しいたこ焼き屋さんをやって注目を浴びる」になります。

コロナウイルスの影響で来客数が減少。感染リスクを危惧してのリピート回数の低下が経営を圧迫している。既存事業はプロモーションの不足も相まって集客力が弱く、新規集客が慢性的に不足していた。そこで、コロナ禍でも好況の高級食パンブームにあやかり、店舗の一部を改装して日本初の高級たこ焼き専門店を運営。珍しい高級たこ焼きによる集客力で、既存事業の認知度と集客力を向上させる。高級たこ焼きを購入する顧客に既存事業の体験をしてもらうなどのプロモーションを行い、既存事業の販売力を強化。また、提供できるメニューが増えることで既存事業の顧客単価を上げることができる。高級たこ焼きを買い求めるために遠方からの来店も予想され、既存事業の存在を新たな顧客にアピールすることができ、新規の顧客層を開拓できる効果もある。

こんな感じでしょうか。

この場合の論点は「高級たこ焼きがいかに珍しいか」(←タコなのにイカw)「それが既存事業の集客にどうつながるのか」になります。事業計画の内容は普通のたこ焼きと高級たこ焼きの食材・価格・販売方法などの違い、利益予測、集客方法、その結果として既存事業の集客力はどれくらいアップするのかという、高級たこ焼き事業メインの説明に枚数を割かなくてはなりません。

たこ焼き屋さんが高級たこ焼き屋さんになるだけで、事業計画書で主張するべきポイントがガラッと変わるのがおわかりいただけましたでしょうか。

ダメな計画書は途中でいらないことを足して論点がズレています。人件費をコストカットしたいではじまったのに最後には高級たこ焼きで集客アップ!みたいになるのがダメパターンです。

「この事業をすればこういう効果が得られる」と自身が思った内容から逆算して自社の弱みをピックアップして、それを盛り込んだあらすじにしましょう。そうすれば論点はずれません。事業計画書には徹頭徹尾一貫したストーリーが必要なのです。

しっかりとしたあらすじさえしっかり作ってしまえばもう補助金は採択されたも同然です。あとはこのあらすじに従い、個別に落とし込んでいくだけです。

個別の箇所でまた変更したいと思ったら、またあらすじを変えなければなりません。そのためまずはしっかりとあらすじを固めましょう。


現在の事業の状況の書き方


あらすじができれば現在の事業状況の書く内容も決まってきます。

この高級たこ焼きのあらすじに従うならば既存事業の弱点はリピート率の低下と集客力と宣伝の弱さです。あとは顧客単価の低さもかな。

なので、事業状況を書く時は、年度別の売上などの基本的なこと以外に、

コロナ前とコロナ後でいかにリピート回数が下がったか、リピートが下がることで売上がどのように変わったのか、今までの新規客の推移、顧客のLTVや顧客単価

などを数字やグラフでわかりやすく提示します。ここを特に強調しておきます。ここが課題であることを審査員の先生たちにわかってもらいたいからです。

そして、そのリピート率や新規集客や顧客単価を上げるために今までどんな取り組みをしていたか、そしてどんな結果だったかを具体的に書きます。事業再構築補助金は売上が最低でも10%下がってなければならないので、結果が悪くても問題なし。ただ、無策の経営者に補助金はあげたくないので、頑張ったけど報われなかったという根拠だけは示さなければなりません。そのためここも強調して書きましょう。

それ以外のことは枚数に余裕がなければ書く必要はないです。例えば顧客の年齢別の平均顧客単価とか、性別による平均顧客単価の違いなどは詳しく書く必要はありません。あくまでもあらすじに沿ったデータだけを強調して提示します。リピートが減り、集客力がいかに弱いかということをこのパートではおおいに主張します。このパートはのちのちに向けた伏線なのです。事業計画の内容のとこで、「こんなすごい新規事業するからさっき言ってた弱みが超絶スーパーむちゃくちゃ解消されるんよ!」と猛アピールしまくると採択率が上がるのではないでしょうか。知らんけどw


まとめ


そんな感じであらすじさえ決まればどこからでも事業計画書は書けます。補助金のストーリー性を作るためにはあらすじをしっかりと作り、それに沿って書くことです。どこから書こうかなーなんて考えている人はまずはしっかりとあらすじを固めていきましょう。

最後まで読んでくれてありがとうございます。よかったら「スキ」も押してくれると嬉しいです!




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