ほくろアフリカ
叶子の顔のほくろは次第に増えていった。
幼いときの写真を見ると、そんな兆候は見えなかった。右目の上に小さなほくろがひとつあるだけだった。
大きくなるにつれ、十台の中ごろからだろうか、その小さなほくろを起点に、ほくろが増えていった。ほくろとは言っても、体表が膨らむわけではなく、肌の黒い面積がじわりじわりと増えていくのだった。
二十台のはじめのころには、顔のほとんどはほくろになっていた。
もう叶子に言い寄る男はいなかった。話しかけてくる者もいなかった。
叶子が街を歩くと道が空いた。
不思議と叶子は平気だった。周囲の心配をよそに、堂々と街を歩いた。
ある老齢の女が叶子が外を出歩くことが迷惑であると言い出した。
これに応じて多くの老齢の人々などが声を上げ、叶子は外を出歩くことを禁じられた。
叶子は悲しかった。差別にではなく、不自由にである。
叶子は悲しみ沈む親の預金通帳からいくばくかの金をちょろまかし、飛行機へ乗ってアフリカへ飛んだ。
そこで叶子は裕福な黒人男性との間に子を設けた。
子供はきれいな黄色肌で、まぶしい太陽光線を反射した。村人は子供を神とあがめた。
子供は大きくなった。肌が黒くなる兆候はなかった。
ある日、日本から旅行者がやって来て、彼女と恋に落ちた。
女は日本語を話せぬまま、自身の出自を知らぬままに、男と日本へ行った。
見る見るうちに、女の鼻の頂点にあるほくろから、黒地が広がっていった。
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