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察せ

友達のお母さんと昼ごはんを食べながら話してた時だったか、日本でも寮に住んでて…みたいな類な事を言った時に彼女に伝わらなかった。I’ve lived in the dormitory since...的な。

何回か同じセリフを言ったことあるし、ここで会話が詰まるのは初めてだったから、こっちまで、ん?となった。もう一度同じことを繰り返すと「dormitory」のところが理解できなかったことが分かった。隣にいた友達が同じ文章を言うと彼女は理解した。あードミトリーねー、と。

その後友達と発音の話になった。

ダイジロウはdormitoryのOの音を忘れてるよ。tryじゃなくてtoryだからね。

あーなるほど。今まで完全にtryだと思って言ってた。

まあ俺は慣れたからわかるけど、お母さん初めてだったから。


言語とは不思議なもので、長時間同じ人といると発音とか文法とかを超越して、その人の伝えたい事を理解できるようになってしまう。彼は前期同じグループだったし何度か英語も教えてもらってるから、僕の発音についてはよく理解してる。だから多少僕が滅茶苦茶な事を言っても、察してくれる。

留学に行ったら英語を話す友達を作れ、とかよく聞く。良い事なのは間違いないんだけど、果たして仲良くなってその「察し」が効き始めた時に英語力が伸びるのか。

正直なところ、仲良い人との会話を90%理解してるとして、初めて話す人との会話は60-70%くらいの理解になると思う。初対面の人と話す時は緊張する。この人わかりやすい系の人かな〜みたいな。

その察しの1番の対象は発音だろう。

デンマーク人はかなり発音が綺麗だけど、前期いたアメリカの女の子の発音はそれ以上に滑らかだった(てかハスキーボイスでチャラい感じだった)。オーストリアはいくら聞いても慣れなかったし、ルクセンブルクも同じくイギリス訛りが強すぎて聞くのが大変だった。てか彼女は使う単語すら違うから困る。掃除機のことヴァキュームって言わずに違う言い方すんのよ。忘れたけど。

フランスとベルギーは想像通りクセマシマシ。ただ実際に二つの国に行って彼女たちの英語の発音がどれだけマシ(紛らわしいな)かは思い知った。まじで聞き取りづらいのよね。

多分僕も、その発音特殊グループの一味なんだろう。てか全員が第二言語だと(第一言語だとしても)、正しい発音って何?って状態になる(それにしてもデンマーク人の発音はまじで綺麗だけど)。聞き取りやすい聞き取り辛いの2種類には分けられるけど、正しいか正しくないかは特に誰も気にしない。僕はRの伸ばす発音が苦手なんだけど、まあそれも日本人っぽくていいかなと最近は受け入れている。練習しろよって話なんですけど。案外モゴモゴ言った時の方が伝わったりするのも面白い。

発音以外にも察しは働く気がする。

日本語でもそうだと思うけど、その人の人柄・性格を理解すると言葉の壁は一気に低くなる。察せられる範囲が増えるからだ。こういう状況でこれをよく言う。こういう時にこうなる。みたいな予測ってどんな言語でも、たとえそれが母国語じゃなかったとしても、頭の中で勝手にされるわけで、その無意識のうちの思考を経て次の言動が決まってると思う。だから、多分、きっと、言葉として、単語として、一言一句完璧に理解していなくても会話は理解できてしまうのだろう。

そしてさらに思うのは、その察しの中での言語学習が案外人間にとって一番自然なのかなと。僕たちが赤ちゃんの時にしたみたいに。

英語を日本語で覚えたからってそれでコミュニケーションができるわけじゃないし、日本語の意味分かってないのに、みんなが特定の状況でよく言うからって理由で言ったら伝わることもある。てかむしろそっちの方が多い。僕はapperlantlyの意味をかなり後に知った。

言葉って面白いな。

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