夢冒険 ストーリー0001


小松原真一(こまつばらしんいち)はここ最近、毎晩同じ夢を見ていた。


真っ暗な洞窟の中、真一ただ一人。

しばらくその洞窟を彷徨うと、目の前に怪物らしきものがどこからか

現れ、突然真一に襲いかかってくるのだ。


そこで目が覚める。

悪夢であるにも関わらず、しっかり熟睡できており、

寝不足ではない。

不思議である。

「また、あの夢だよ!もう何回目だ、まったく!」

松原真一は池ノ上高校の2年生。

1週間ぐらい前からこの夢を見はじめ、眠る度に

同じ夢を見ることになった。居眠りでもだ。

教室に入るなり、友人の柿崎智也が話しかけてきた。

「よっ、松原。元気ないな。またあの夢か!?」

「そうなんだよ。昨日もだよ。俺なんか病気なのかな?」

「今度は何か武器でも持って寝てみろよ。もしかしたら

倒せるかもしれないぜ」

「うーん・・・」

下校時刻になり、真一はまっすぐに家に帰って寝床に着いた。

右手には金属バットを握った状態でだ。

真一は5分もしないうちに夢の世界に落ちていった・・・

・・・


真一は暗闇のいつもの場所にパジャマ姿でいた。

右手には寝る前に手にしたバットが握られている。

真一「ようし!今度こそ!」

いつものように暗闇を彷徨い続ける。

しかしそれは奇妙な感覚だった。夢とは思えない。

肌には生暖かい空気を感じ、足は素足で岩の感触がする。

真一「本当の世界にいるみたいだ。これ、本当に夢?」

闇の向こうに赤い光が2つ見えた。いつもの慣れたそして

いやなシチュエーションだ。

おそらくそこに怪物がいる!

よく見るとその向こうに別に光が見えた。

生き物の目の光ではない。太陽の光。

もしかして洞窟から出られるのかと思うやいなや

怪物が襲ってきた!

真一は持っていたバットを怪物めがけて振り回した。

ガキン!!

鈍い音がして怪物の顔にヒットする。

「やったか!?」

一瞬ひるんだ怪物だったが、すぐに体制を立て直して

襲ってきた!

いつもならここで怪物に食べられて目が覚めるのだが、

真一は間一髪でその攻撃をバットで応戦し、躱す。

その隙に真一は、出口の光に向かって走り出した。

怪物も後を追う!

光が目の前にせまってきた!

だが、怪物のほうが動きが速い。



真一の目の前が明るくなった。

目が覚めたのではない。

洞窟の外に出ることに成功したのだ。

真一は出口に振り返った。

出口は人がギリギリ出れるサイズで怪物は出てこれないようだ。

奥の暗闇で唸る声がする。

「ひゃーっ!危なかったぁ!」

真一は体中の力が一気に抜け、その場に座り込んだ。

汗だくだ。

呼吸を整え、改めて目の前に広がった世界を見る。

巨大な山脈、広大な川、新緑溢れる森。

「うわー、すごいなぁ!これ、俺の夢か!」


「ちょっと、本当に出てきたわ。あなたが勇者?」

真一はびっくりして声のする方を見ると、少女が一人立っていた。

髪は金色、目はブルーな可愛らしい娘だ。

「ゆ、勇者? 俺は小松原真一。日本人の16歳」

と、説明にもならない紹介をした。

「私はレミア。レミア=キングレス。あなた別世界から来たんでしょ?

ここはバルシレン4国の1つ、エルミタージュ。よろしく!」

真一「え?別世界から来たって分かるの?」

レミア「うん。爺やが言ってたの。この洞窟から出てくる人間は

この世界を救ってくれる勇者であり、創造主だって」

真一「そうなんだ・・・」

確かにこの世界は真一の夢であり、創造主ということになるが、

なんとも不思議な感覚だ。

「ねぇ、とりあえず私の村に行きましょ。案内するわ」

「う、うん」

松原真一の壮大な夢冒険が今、始まる。

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