夢冒険 ストーリー0004


「!!」

真一は目が覚めた。

ゼロース村ではない。

勉強机、イス、洋服ダンス、書棚・・・いつも見慣れた自分の

部屋の風景である。外では車の往来の音が聞こえる。

布団の横にはバットが置いてあった。

真一は慌てて自分の上半身を触った。

・・・・

「傷ひとつない・・・夢だったんだ・・・」

来ていたパジャマも何ともない。多少乱れはしてはいるが。

時刻は午後7時。寝たのがだいたい6時ぐらいだから

1時間しかたっていない。

「レミアを助けないといけない!」

真一はまた眠りにつこうとしたが、ふと思い当たって

バットを握りしめた。

「あの洞窟からだろうから」

真一は5分もしないうちにまた深い眠りについたのだった。

・・・・

・・・・


!!

真一が気づくと、そこは古ぼけた見慣れたレンガ造りの家だった。

「えっと、ここはゼロース村・・・レミアの家・・・」

いつもの暗い洞窟の中ではなかった。

外へ出ると、村人が青ざめた様子で西の山の方を見ている。

「レミアはどうした?!」

真一が尋ねると、それに気づいた村人はびっくりしたかのような

表情になった。

「あ、アンタ、殺されたんじゃなかったのか!?」

「大丈夫!それよりもレミアは?」

「レミア様はあの山の彼方へ化け物につれさられてしまった!」

・・・様をつけてる・・・なんてツッコミは置いといて

助けに行かなければ。

真一は村人で一番歳をとっていると思われる白髭の男に尋ねた。

「どうやって助けにいったらいい?」

「分からん!しかし追うしかない!」

軽くパニックになっているようだ。姫様がさらわれたのだから無理もない。

しょうがないので真一は走って西の方へ行くことにした。

村には馬がいたのだが、現実世界でも乗ったこともない真一には少々

ハードルが高いようだった。自転車があれば・・・

村を出て、500m程進んだところで、真一は息が切れた。汗だくだくだ。

「はぁ・・・はぁ・・・これはキツイ!」

西の山はまだまだ遠い。

途方に暮れそうになりながらも、真一は立ち上がりかけた、その時・・・

ゼロース村のほうから馬の足音がした。複数。

その音はどんどん大きくなり、真一に近づいてくる。

見ると、黒い馬が2頭、真一のほうへと

駆け寄ってきている。

「新たな敵か・・・!」

真一は警戒したが、馬に乗っているのが人だとわかると

警戒を解いた。

2頭の馬は真一の前で止まった。

一人は黒い鎧を身に着けた戦士風の男で眼光鋭かった。

均整とれた長身で筋肉は鍛え上げられていた。

もう一人は白いローブに身を包んだ少年で隣の男に比べると

かなり頼りなさげに見えた。

黒い男が真一に問いかける。

「おぬし、名前をなんと申す? ワライク・・・村人たちの話では
おぬしは姫と一緒にいたそうだな」

「ギル様、こいつです。私が予言したこの世界の創造主です」

隣の少年が黒い男に話しかけた。

「俺は小松原真一。レミアが黒い悪魔みたいなやつにさらわれたから

助けに行こうと思っているんだ」

黒い男は真一に手を差し伸べた。

「後ろに乗れ。急いでいるからな。早くしろ」

「あ・・・お、おう」

慣れないながら、落ちそうになりながらも何とか真一は

黒い男ギルの後ろに乗った。

少年がギルに言う。

「そいつ、レベル1ですよ。役に立たないと思いますけど・・・」

「ダルク、お前によれば、この少年はこの世界の創造主だそうじゃないか。

何か特殊な能力を持っているかもしれん」

「・・・だといいですけど。」

「えっと、コマツバラシンイチ・・・と言ったな。行くぞ!」

「えと・・・は、はいっ!」

2頭の馬と3人の人間は、西の山の彼方にある大きな塔を

目指して全速力で足を進めていった。

その塔の名を「ガルナの塔」という。

魔物の住む塔である。









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?