夢冒険 ストーリー0003


ゼローク村は平和な村であったが、

真一は違和感を感じていた。まず村の人たちの対応。

「あら、レミア、おかえりなさいませ」

「レミア、ご無事でしたね。この方が伝説の創造主ですか?」

村人はみんなレミアに敬語だった。呼び方だけ呼び捨てで

後は丁寧な敬語であった。

「真一、着いたよ。ここ、私んち」

「あーそうなんだね・・・」

レンガ造りの小さな家。見たところ普通の家。しかし、

真一はまたも違和感を感じた。レミアの家は村の中央に位置している。

・・・まるでレミアの家を守るかのように、他の家は存在しているな。

家の中は現代の家と比べて古い作りだが、なかなかしっかりとしていた。

入ってすぐにテーブルと椅子が3脚、奥に扉の着いた部屋があるから

そこが寝室なのだろう。

「あ、その椅子に座ってのんびりしてて」

レミアは真一を促した。真一は言われるがままに椅子に

座って考え込んでいた。

しかし考えてもしょうがないと思ったのか、真一は

レミアにストレートに質問してみた。

「レミア、君、ひょっとしてこの国の王女とかじゃない?」

「えぇ、そうよ。言わなかったっけ?」

「言ってない!!」

と、真一は言いながら笑った。やっぱね。

まぁ、俺の夢の中だし、何でもありだな。

「王女様がなんでこんな村に住んでんの?」

レミアは台所でお茶の準備をしながら答えた。

「住んではいないんだよ。ここは別荘みたいなところ。

時々、国のいろいろなところに出かけては、こうやって

のんびりしてるんだ」

なるほど・・・

「でもね、ダルクがね、えっと、お城の中にいる魔法使いが

この世界の創造主がゼローク村の近くの洞窟から出てくるって

予言したのよ。それで私はこっそり城を抜け出してここに

来て、あなたを待ってたの」

「待ってた? 何のために?」

「それはこの世界を救ってもらうからに決まっているじゃない」

世界を救う・・・RGPの勇者みたいになってきたと、真一は思った。

RPGといえば・・・

「何か魔王みたいなのがいて、そいつを倒すのか?」

「夢王ギガルデス。この世界の魔王で・・・」

ガシャン!

外で、何か大きな物が倒れた音がする。次いで人の悲鳴。

「姫!!お逃げください!!」

間髪入れずに扉が開き、そこには黒い異形の者が立っていた。

悪魔・・・真一からの第一印象だった。

人の形をしてはいるが、鳥のような羽が生えており、手には鋭い爪が

伸びている。

目的は真一ではないようだ。そうレミアだ。

一瞬で悟った真一は怪物とレミアの間に立ちはだかった。

俺に守れるか・・・出来るさ!俺はこの世界で一番強いはずだ!

真一がそう思うと同時に怪物が襲ってきた。

すぐに勝負は決まった。怪物の爪が真一の体を深々とえぐったのだ。

致命傷!

真一は、自分の身に何が起こったのか分からないまま

この世を去った。

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