吉野家。そこは楽園。

ある日の昼
私はランチに行った。今日も店内は殺伐とした戦場となっており、サラリーマンが今か今かと牛丼を待っている。そこに明らかな場違いの高校生が入店。その時周りからの冷たい視線はまるでナイフのように鋭く氷柱の様だった。私は一瞬背中から氷を入れられるかのような気持ちになり冷や汗が止まらなかった。席に着き焦りがバレないようじっくりと私の焦点はメニューに走らせる。常連であった自分は周りから舐められないようにそっと店員さんを呼び「いつもので。」と言い放った。一世一代の賭けに出てまさかの相手は「了解しました!」との一言。私はここで大勝利を確信した。そこが私の詰めの甘さだったろう。一息付き、枯れた砂漠の喉に一滴の水を滑らせる。サラリーマンは私の貫禄に怖気付き急いで退店してゆく。吉野家という名の独壇場が出来た。そうこうしてるうちに注文した「いつもの」が届いた。私は一瞬目を疑った。机にたった1つ置かれたものは「3種のチーズ牛丼特盛温玉付き」だったのだ。人をあまり見た目で判断するなよ。


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