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キネマ備忘録

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映画を観て、広がった世界のこと
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#日常

休みの最後、クラシック

 4連休の最終日は、家で静かに映画を見たり本を読んだり時々気まぐれで簿記の勉強をしたりしていた。簿記については正直細く長く勉強しているので、もはや自分でも受かりたい気持ちがあるのか甚だ疑問だ。そもそも人は勉強するにしてもその先に何かないとやる気が上がらない生き物なのだろう(それは私だけかもしれないが)。  久しぶりにクラシック映画を見た。1927年にドイツで製作された『メトロポリス』。Amazon Primeとかでも見られなくて、仕方なしにTSUTAYAで借りた。こうした昔

クレーム・ブリュレの恋人

 仕事でオンライン越しに打ち合わせをする機会があるのだが、なぜかみんなミュートかつ動画もオフにしているので一体誰が何を喋っているのかよくわからないという不可思議な時間にも最近ようやく慣れた。これが新しいビジネス様式と言われると何だかそれも違う気がする。顔の見えない相手ほど、不気味な光景ってないと思う。 *  相手が見えないことによって、膨らむ妄想も確かに存在する。なぜだかぼんやりとした輪郭だけが浮かんでいて、相手の姿を掴もうにもまるでぼやけてなかなか全体が見えてこない。何

いつから人鳥は空を飛べなくなったのか

いでや、この世に生まれては、願はしかるべきことこそ多かめれ。  ー『徒然草』兼好法師  私が中学生になったばかりのこと。  大人になればくだらない悩みなんて綺麗さっぱりなくて、もう少し呼吸をするにも楽な世界に生きているんだろうと漠然と思っていた。20年後はもっと立居振る舞いもそつなくこなせて、相手との間に軋轢が生まれないようにうまくやるに違いないと、そんな淡い幻想を抱いていたのだ。  それがいざ自分がその歳になると、かつての私自身の理想に指さえも届かない。それどころか、

孤独と空虚が隣り合わせ

 最近、名作といわれている作品を日がな時間がある時に鑑賞している。その中で先日観た作品が、『タクシードライバー』という映画。本作品は、映画.comの評価を見ると星が3.7となっており、ALLTIME BESTにも選ばれている。 でも、わたしはどうしてもこの作品が好きになれなかった。  単純に作品の雰囲気が嫌いなのだという感想で終わってしまうと、そこで思考停止だ。そこで、改めて自分の中でなぜ好きになれなかったのかということを問いかけてみた。  まずは、『タクシードライバー

真昼の日輪を追いかける

 最近ハマっているのは、自転車に乗ること。  住んでいる場所が田舎なこともあって、歩いて回るにはとにかく不便。そんなわけで、昨年末にtokyobikeのbisouという自転車を意を決して購入した。思った以上にお金がかかってしまった。それでも、小さな楽しみを得られたと思って満足している。運動不足解消も兼ねて、愛機に乗り周辺を駆け回ることが、近頃における週末の日課。  目的は、ランチ巡りだ。  緊急事態宣言が発令されていることもあるので、密を避けるような形でコア時間を外し、

さよなら、ドビュッシー

休みの日、なかなか表立って外に出づらくなってしまったので、とりあえず映画を見よう!と思い立ち、契約しているネットサービスを漁っていたらなんとも懐かしいタイトルを見つけた。 『さよなら、ドビュッシー』<あらすじ> ピアニストを目指す16歳の遥は、両親や祖父、従姉妹らに囲まれ幸せに暮らしていたが、ある日火事に巻き込まれ、ひとりだけ生き残る。全身に火傷を負い、心にも大きな傷を抱えた遥は、それでもピアニストになることをあきらめず、音大生・岬洋介の指導の下、コンクール優勝を目指してレ