車窓から覗く胸の痛み
(『ドライブ・マイ・カー』考察)
車の中から、窓の外を見る瞬間が好きだ。
晴れだろうと雨だろうと、私は守られている存在で、一歩引いた姿勢で景色を楽しむことができる。流れゆく折々の場面は、ひとの人生を体現しているようにも思えて、ほんの少し切なくなることもある。高速道路を猛スピードで駆け抜ける車、突如として広がる海の青さ、激しい雨が窓を穿つ音。
自分で運転をすることも好きだけど、誰かが運転をする車に乗ることも同じくらい好きだ。外を眺めることに集中することができる。巡りめく景色の中で、自分がこれまでどのよ