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キネマ備忘録

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映画を観て、広がった世界のこと
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2021年2月の記事一覧

この世はかくも素晴らしく、かくも酷い

 なんとなくこの社会に身を置いていると、客観的に見た時に人は割とその人の正しい内面を知ろうともせず、世間一般のイメージばかりに囚われているような感じがする。そうした勝手な先入観や偏見によって、間違いなく生きづらいと感じてしまう人間がいる。  西川美和監督と役所広司がタッグを組んだ『すばらしき世界』。公開当初から非常に気になっていて、ようやく時間ができて劇場に足を運ぶことができた。直木賞作家・佐木隆三氏の小説『身分帳』が原案となっている。 ■ あらすじ殺人を犯し13年の刑期

現実に変わった夢の後先

 幼い頃は、宇宙飛行士になりたかった。 *  きっと誰しもなりたかった職業やこの人になりたいと憧れていた人がいたことだろう。その夢に向かって奮闘した人もいるだろうが、歳を重ねるにつれて、自分の能力と現実を思い知り、志半ばで幼い頃に夢や希望を諦めてしまった人も少なくないと思う。  先日に引き続き、古典映画を改めて鑑賞するといった活動を続けている。  今回観たのは、ウッディ・アレン監督の『カイロの紫のバラ(原題:The Purple Rose of Cairo)』。ウッデ

孤独と空虚が隣り合わせ

 最近、名作といわれている作品を日がな時間がある時に鑑賞している。その中で先日観た作品が、『タクシードライバー』という映画。本作品は、映画.comの評価を見ると星が3.7となっており、ALLTIME BESTにも選ばれている。 でも、わたしはどうしてもこの作品が好きになれなかった。  単純に作品の雰囲気が嫌いなのだという感想で終わってしまうと、そこで思考停止だ。そこで、改めて自分の中でなぜ好きになれなかったのかということを問いかけてみた。  まずは、『タクシードライバー

真昼の日輪を追いかける

 最近ハマっているのは、自転車に乗ること。  住んでいる場所が田舎なこともあって、歩いて回るにはとにかく不便。そんなわけで、昨年末にtokyobikeのbisouという自転車を意を決して購入した。思った以上にお金がかかってしまった。それでも、小さな楽しみを得られたと思って満足している。運動不足解消も兼ねて、愛機に乗り周辺を駆け回ることが、近頃における週末の日課。  目的は、ランチ巡りだ。  緊急事態宣言が発令されていることもあるので、密を避けるような形でコア時間を外し、

アメリカン・ポップカルチャーに踊らされる

 昔からコカ・コーラやマクドナルドといった、いわゆるアメリカの資本主義のシンボル的なモノ達が好きだった。  青春時代(あの頃は若かった)、ポスターを集めるのにいっときハマって、アンティークショップに行っては目ぼしいものがないかどうか漁っていた。学生時代、ニューヨークにあるMOMAへ立ち寄った時、かの有名なキャンベル缶がいくつも描かれたアンディ・ウォーホルの作品を見ていたく感動した記憶がある。   感覚的には、きっと古き良きものを愛でる感覚と通ずるものがある気がする。昭和レ