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キネマ備忘録

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映画を観て、広がった世界のこと
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2020年5月の記事一覧

#6. 追いかけた先。(『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』)

気づけば、言葉の響きを探している。 元々学生時代の頃から、小説を習慣的に読むようになり、言葉の海に溺れるようになった。そして、物心ついた時から好きな言葉のひとつが「ピーナッツバター」である。 その魅力は深く語ろうとすると長文になりそうなので、次回に回したいと思う。 簡単に触れるとまず「ピーナッツ」というどこか硬質で男前な感じ、そしてバターはどこか柔らかいとろけるようなそんなイメージが伝わってくる。その二つの言葉が合わさった「ピーナッツバター」は、まさに剛と柔を組み

#5. 人とのつながり。(『しあわせのパン』)

急にお腹が減った。最近朝ご飯はもっぱらご飯ばかりを主食としていたのだが、そろそろパンを食べようと思う今日この頃。そんな中、友人から教えてもらって見た映画。田舎暮らしの素晴らしさを再認識させられる作品でもある。 あらすじ北海道・洞爺湖のほとりの小さな町・月浦を舞台に、宿泊設備を備えたオーベルジュ式のパンカフェを営む夫婦と、店を訪れる人々の人生を四季の移ろいとともに描いたハートウォーミングドラマ。りえと尚の水縞夫妻は東京から北海道・月浦に移住し、パンカフェ「マーニ」を開く。尚が

#4. 喪失の向こう側(『Perfect Sense/世界から猫が消えたなら』)

コロナウイルスに罹るとその症状のひとつとして、嗅覚と味覚が低下するということが挙げられるという。そんな時にぱっと思い浮かんだのが、『Perfect Sense』という映画だ。2011年イギリスにて作成されたデヴィッド・マッケンジー監督によるパニック映画。 少しずつ感覚が消えていくことこの映画は少し、今の状況と似ている。 ある日突如として、全世界の人々の間で原因不明の感染症が広まり始める。嗅覚を皮切りにして、味覚、聴覚、視覚が失われていくという話である。(触覚は最後まで失わ

#3. 心揺らすもの(『あやしい彼女』)

「あの頃はほんとうに良かったなぁ」 と、わたしの父親世代の人たちは時々お酒片手にぼやく時がある。1960年代後半から1980年代にかけて、日本の音楽シーンで一台ムーブメントを興したフォークソング。どこか胸を締め付けられるような、かつ懐かしくなるような気持ち。わたしは彼らがそう呟くのもなんとなく理解できる気がするのだ。 わたしがまだ幼い頃から、父親の車の中ではいつもチューリップが流れていた。その影響からか、わたしも自然と物心ついてからもその時代に流行ったほかのフォークソ

#2. 夜明けの星(『恋する惑星』)

あの、なんとも言えない熱気だとか空気感はどこからやってくるのだろう。 最近ゆったりとした時間ができたので、ひたすら映画を見続けている。面白そうだな、と思ったものはかたっぱしから。4年ほど前に、水原希子さんがアナザースカイに出演されていたとき、行き先は香港でその際に影響を受けた映画のひとつとして『恋する惑星』を挙げて以来、密かに気になっていた。(ちょうど前回のオリンピック開催のとしだ) そのため、早速TSUTAYA DISCUSという郵便でDVDが届くサービスを使って送って