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はじめに

日立には、100年も前に日立鉱山で起きた煙害問題を、企業と地域住民たちが、真摯に向き合い、話し合いを重ね、「人と自然と産業の共存共栄」の精神で解決をしていったという史実があります。

この史実は、新田次郎氏により小説『ある町の高い煙突』に描かれ、大正時代という近代日本鉱工業発展の時代に、若い世代の企業人と地域住民が、共に心を尽くして語り合い、さまざまな課題を克服していったことが物語られています。
この小説が生まれたきっかけは、日立市に講演に訪れた新田次郎氏が、気象庁時代の友人で、初代の日立市天気相談所所長の山口秀男氏から大煙突建設のエピソードを聞いたことです。新田氏は、煙害問題解決に関わった関右馬允氏を訪ねて取材し、作品を書きました。

小説『ある町の高い煙突』は、急速な経済発展と高度成長に伴い、各地で公害問題が多発した1960年代後半に出版された作品です。当時は、経済が急速に成長する中で、大気汚染や水質汚濁、自然破壊など各地で公害問題が多発し、訴訟・裁判なども増え、防止のための法令が出されるなど、社会的な問題として意識が高まってきた時代でした。

昭和から平成、令和を経て、2019年にこの小説を原作とする映画「ある町の高い煙突」が制作されました。この映画は、松村克弥監督のもと、日立市や企業、市民のみなさんなどの応援を得て制作されました。全国各地でロードショー公開され、外国の映画祭などでも上映されて好評を博しました。
映画化をきっかけに、100年も前に日立で、SDGsにつながる「大煙突とさくらの物語」があったことを多くの人たちに伝え、活動をしていこうという声が出てきました。100年前の誇るべき物語を100年先に伝え、この物語をベースに日立のワクワクする未来を描き実現していこうと、わたしたちは「大煙突とさくら100年プロジェクト」を立ち上げました。

このプロジェクトでは、子どもたちや次世代を担う人たちにわかりやすく100年前の誇るべき史実を伝えるため、紙芝居『大煙突とさくらのまち』を制作し、「紙芝居から始まる地域活動」を行っています。この紙芝居は、日立市内の全小学校や関連団体に寄贈され、学校や地域で活用されています。
紙芝居に続き、「大煙突とさくらの物語がなぜ実現したか」、「現在にどうつながっているか」、「未来にどう活かせるか」について詳しく学べるよう、本小冊子を制作しました。この小冊子が、日立の今を新たな視点から豊かに味わい、日立のワクワクする未来を考えるベースとなってくれることを願っています。

※SDGsとは、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)の略で、2015年に国連で決められた17個の目標です。2030年までに持続可能でよりよい世界を達成することを目指し、地球上の「誰一人取り残さない」ことを願っています。

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