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ファイアーエムブレム無双風花雪月が楽しくて楽しくて仕方ないんだが

※ネタバレ全開です。未プレイの方はご注意ください。

Nintendo Switch用ゲームソフト「ファイアーエムブレム無双 風花雪月」

1.アクションゲーム超苦手な人間は無双風花雪月をプレイできるのか

2020年~2021年のステイホーム時間の全てをほぼ『ファイアーエムブレム風花雪月』を遊んで過ごした(プレイ時間1,000時間超)私に衝撃のニュース……『ファイアーエムブレム無双風花雪月』2022年6月24日発売!

なんでだよおおぉぉ!!!
なんでアクションゲームなんだよ!!!!
アクションゲーム超苦手なんだよシミュレーションRPGの風花雪月の続編を遊ばせてくれよおおおぉぉぉ!!!!!

私がどのくらいアクションゲームが苦手かというと、ニンテンドーDS『New スーパーマリオブラザーズ』(マリオが巨大化するやつ)を買ったはいいものの 1-5 がクリアできなくて投げたくらい。「どのボタンを押すとどういう動きができて、その動きができると何が達成できるのか」が全然わからない、それを知るための方法がわからない。アクションゲームを遊んで「楽しい」と感じる才能が無いんだと思う。

それなのに……風花雪月の関連作品がアクションゲームで出るなんて……。もちろん無双シリーズは一つもプレイした事がない。しかしそこは任天堂(というかコーエーテクモゲームス)、発売前に体験版がある! 体験版をやってみて、全然できなさそうだったら買うのはやめよう。という訳で体験版スタート! その直後の私のツイート群が下記です。

やる事が……やる事が多い!!

画面になんや色々ゲージが表示されてるけど、各ゲージの意味がわからない。使うボタン多すぎ、ボタン同時押しの組合せが多すぎで覚えられない。まずもって「ロックオン」のやり方がわからない。ロックオンができないと敵に正対することができないので攻撃が当たらない。攻撃が当たらないと敵を倒せず、なんやよく分からないうちに死。く……くs……

戦闘画面の情報量多すぎ問題

といった具合で、最初は本当につらかった。マニュアルはしっかり読む派なので「指南」は何度も見返した。それでもロックオンができない。だってRスティックが押し込めるなんて知らなかった。Rスティックの押し込みができなくても原作ファイアーエムブレム風花雪月はプレイできましたけど!!!??????

やはり自分にはアクションゲームをやる資格がないのでは、と諦めかけた。でも風花雪月への愛により、「Rスティックの押し込み」をググって会得し、各ゲージの意味は親切な人が公開してくれた攻略メモを読んで理解し、多種多様なボタンの組合せは一つ一つじっくり覚えていき、実況者さんの動画を観て「何をどうすればこういう動きになる」を学習した。もちろん、はじめから無理はせず、難易度は「イージー・カジュアル」を選択。

無双ゲージを溜め、「無双奥義」で敵を一網打尽に!

あれ……できてる……?
無双アクションゲーできてる!
楽しい!

てかこれ『風花雪月』だ!!!

ファイアーエムブレム無双風花雪月は無双ゲーじゃないんよ。無双のガワをかぶった """風花雪月""" なんよ。この音楽、このSE、このUI、ジェラルト父さんがナレーション、各ユニットに行動指示を出す、剣は斧に強く槍に弱い、弓は飛行特効、武器耐久を消費して戦技、霧深い索敵マップでたいまつ、魔物の障壁を削ってアーマーブレイク、必殺の連撃のカットイン、騎士団配備と副官システム、兵種経験値を溜めてスキル獲得、試験パスを使ってクラスチェンジ、支援値を溜めて支援会話、拠点で料理して1日7回の食事、お茶会ならぬ遠乗りでパーフェクトピクニックタイム、ルミール村近辺で出会って盗賊退治からの士官学校入学、3つの国、3つの学級、そしてあなたの物語――!

間違いない。これは『ファイアーエムブレム風花雪月』である。

この勢力図は紛うことなき風花雪月

のめり込むうちに自然と戦闘のコツを覚えていき、難易度はイージーから早々に(1周目の途中で)ノーマルに変更。すぐにノーマルでは物足りなくなりハードへ、そしてルナティックへ。今では引継ぎ無しハードで全ルート全マップ戦績Sを達成できるほどになりました(引継ぎ有ならルナティックでも達成)。これが……マリオの WORLD 1 もクリアできなかった人間の進化だ……!

諦めなければ上達する……!

重要なのは、このゲームが """風花雪月""" であること――つまり、敵に歯が立たない、友軍の救援が間に合わない、戦績Sの条件である撃破数が達成できないなどの様々な関門で躓いたとき、状況の打開に必要なのは「アクションの操作技術の向上」ではなくて「戦略の見直し」であることだ。出撃メンバーを変更する、組ませる副官を変える(あるいは副官をつけない)、兵種・装備武器・装着スキル・装着戦技魔法を変える、作戦・進撃ルートを変える、手当たり次第に敵を全滅させるのではなく倒す敵将と倒さない敵将を見極めるなど、単に「勝てないからレベルを上げる」前に試すべきことが数多くある。そして実際、これらの見直しをすることで、さっきまで何をやっても攻略できなかったマップを見違えるほど楽に突破できるようになったりする。これこそが、シミュレーションゲームを原作とした無双ゲー『ファイアーエムブレム無双風花雪月』の醍醐味ではないだろうか。

最後の手段「フリー戦闘でレベル上げ」は、試せることを全て試してから


2.生徒たちとの再会、新たな装い、そしてシェズとラルヴァ

士官学校の制服を纏った級長たち、森の中、月夜の出会い。原作よりもさらに美麗なグラフィックで画面に立ち現れた彼らが声つきで喋っている。髪が風で揺れる! それはもう物凄い感動。喋ってる……。ありがとうコエテク、ありがとう無双風花雪月。また彼らに会えたよ。
しかし、あれほど頼もしかったプレイヤーの分身、皆の "先生" は敵――今度は "灰色の悪魔" として、プレイヤーの前に圧倒的な脅威として立ちはだかる……!

誰だよこの筋立て考えた奴!!! 君は道徳0点だよ!!!!

先生めっちゃ喋るやん。シェズと先生が戦闘するムービー、先生は剣技にこだわらず体術も交えて、使える手段はすべて使って「とにかく勝つ」というジェラルト流戦闘術を体現しててとても良い。フェリクスは剣技で勝つことだけに焦点がいってるから、姑息な手を使われると意表を突かれちゃうんだよね、ということを思い出した。

"灰色の悪魔" に手も足も出ないシェズ

新キャラのシェズとラルヴァ、世界観を壊すこともなく、全く違和感なくフォドラに入ってきた。原作の主人公(先生)が魅力的すぎたぶん、シェズは今作の主人公としてちゃんとプレイヤーの分身たり得るのか? という一抹の不安は綺麗に拭われました。シェズ男が素直すぎてかわいい。ミニマップが見づらくてよく見当違いの方向に行っちゃうんだけど、シェズが方向音痴キャラで地図見るのが苦手というのが公式設定だとわかって親近感。これは紛うことなきプレイヤーの分身。

今作の主人公シェズと、その "運命共同体" ラルヴァ

主人公なのに闇うごサイド、闇魔法が使える、紋章を持たないというのが戦闘面で非常に面白い。先生だとドローミの鎖環やら破裂の槍やら遺産を持たせ放題だったのが、シェズだと遺産装備でみるみるうちにHPが減っていくので、移動力が必要だからといって安易にドローミを持たせられない(それを補う兵種・装備・スキルの組合せを考える必要に迫られる)のも面白いし、闇うごサイドだから謎の瞬間移動の力を実際に使うことができるという設定が愉快。シェズは最初から最後まで一貫して傭兵でしかなくて、一国の王あるいはその伴侶や大司教になったりしない(クロードの「きょうだい」にもならない)のが、先生との立ち位置の違いとして表れている。

シェズが英雄の遺産を装備しようとすると警告が出る

シェズとラルヴァが仲良しだから、殺伐としてるベレトスとソティスを見るたび震え上がってしまう。ソティスこわ……。ソティスがやけに冷酷無比なのは、器たるベレトスの敵勢力に「地虫どもの裔」がいるからだろうか。原作でも、コスタス盗賊団の残党がアビスに隠れているのを発見した際の選択肢(見逃す/見逃さない)で「見逃せない」を選択するとソティスの好感度が上がるんよね。命からがら逃げ隠れている賊が「騙されただけなんだよ! 殺されちまう! 頼む見逃してくれ!」と必死に懇願する様子を見せられたら、プレイヤーとしては見逃す(「二度と罪を犯すな」)のが普通だと思うんだけど、でも、見逃さないほうがソティスの好感度が上がる。赤き谷を侵した賊に厳しい姿勢を見せるソティス。彼女の本性が見え隠れした瞬間。

無慈悲で残酷な面を見せる女神ソティス

それはそうと、“灰色の悪魔”の姿にベレト(男)を選ぶと、まさか鈴を転がすような幼女の声で喋る美青年が爆誕するとは夢にも思わなかった。ちょっと変な性癖が目覚めかけたんだけど。

ベレト(CV:黒沢ともよ)

同じ学び舎にいたのがたった1~2ヵ月だから、他学級の生徒同士があまり仲良くなくて、「顔見知りを殺すのは忍びない……でもよく考えたらそんなに知らない奴だしまあいっか」みたいなノリで殺しながら進撃していくのが新鮮。原作では他学級なのにA支援まであったヒルダとカスパルが、この世界線では名前すらうろ覚えだったり。かと思えば、原作では接点がなかったマリアンヌとベルナデッタが仲良くなったり。ガルグ=マク入学以前の歴史は確定だから、アネットとローレンツ、コンスタンツェの魔導学院時代のエピソードが拾われたりと全方位抜かりない。ということは、原作でも無双でも支援会話がない組み合わせはまじで接点ないんだな……。

死んだのはよく話したこともない相手(実際そう)


3.原作で描ききれなかったあれやこれの補完

ストーリーめちゃくちゃ面白かった。
前哨基地から出撃し、周囲の領地をじわじわと制圧していき進軍路を切り開き、諸侯に臣従を迫りつつ、最終目標地点に到達、攻め落とす。このプロセスの繰り返しによって、ああ、“戦争”をしているんだという実感が湧いてくる。原作はこういう途中の経路をすっとばして目標地点に直行、しかも毎月いちいちガルグ=マクに戻っているから“進軍”しているという感覚があまりなかったのよね。行く先々の領地にもちゃんと名称がついていて、活発な産業や地形など特色があり、そこを統べている貴族領主と民衆がいて生きて生活しているんだと自ずと思えてくるのは良い体験だった。

じわじわと領地を制圧しながら進軍

前哨基地にいるモブにも多種多様な人間がいて、良い感じにストーリーや世界観を補足する情報をくれるんよね。帝国、王国、同盟の貴族諸侯の名前がどんどこ出てきて、はぇ~こんなに貴族おったんかと感心した。彼らもただの有象無象ではなく、性格や役割や関係性が設定されていて、真面目な奴も嫌味な奴もいて個性豊か。これも世界観を補強してフォドラの解像度がどんどん高まる。フェルディナントが希有な貴族であることはよくわかった。

こんな人おったんか

治世面では、武力でガンガン制圧していくだけでなく、帝国は南方教会という装置を持ち出して正統性を打ち出し、市井の人々の拠り所をちゃんと作ってあげたり、王国は自国の正統性の礎であるセイロス聖教会を保護せざるを得ず、そのために苦しい局面に陥ったり。同盟はついに、パルミラが! 自分の素性を隠したいのか匂わせたいのかどっちなのか謎だったクロードの――“兄弟”が、大軍勢を率いて攻めてきたぞ!! よくぞこれをやってくれた。

クロードの腹違いの兄貴オッスオッス

個人的に嬉しかったのは、赤焔の章で疑似“血の同窓会”を体験できること。エーデルガルト達が煉獄の谷アリルで王国(&教会)を迎え撃とうという、ここぞという時にクロードが盟約を裏切って、帝国・王国・同盟の三つ巴になる展開! 予想していたような意外だったような、期待していたような。原作だと帝国ルートは“血の同窓会”が楽しめなかったから、無双でやってくれたんだろう。サービス精神~。クロードお前、乱戦の定めは一生許さんからな。

お前お前お前!!!

そんなことより(そんなことより!?)、貴族の親父達のご尊顔ありがたや~~~ ヘヴリング伯最高すぎんか? グロスタール伯それに輪をかけて最高すぎんか!? いやもうホント全親父達が最高ありがとう無双風花雪月!! 原作では会話中に名前が出てくるのみだった彼らがビジュアルを引っさげて登場して戦闘マップでわちゃわちゃしているだけでこんなに話に奥行きが出るとは思わなかった。もう納得も納得の人物造形(此の親にして此の子あり的な意味も含めて)。次作ではベルナデッタのご母堂も連れてきてね! あと親父達全員分の踊り子ください。

息子から「潰れてくれていいですね」と言われたり金を持ち出されたりするヘヴリング伯

全ての風花雪月プレイヤーが絶対に見たかった名乗り系貴族3人の外伝とか、マヌエラとドロテアの二大歌姫外伝とか、灰狼クラッセ再集結の4人組外伝とか、もうこれは結婚でしょヒルマリ外伝とか、ダスカーの花畑とか、帝国の双璧とか、エーデルガルトの見立て通り実は優秀な将だったマイクランとか、これだよこれが見たかったんだよ!! というドリームマッチをこれでもかと実現してくれた無双風花雪月ありがとう。調理場で食事中、ランダムで選ばれた二人が後ろで話をしている仕掛けも嬉しいよね。意外な組合せだったり納得の組合せだったりして、何を話しているのか想像が広がる。

後ろの二人がランダムで選ばれるのが楽しい

原作では幼馴染み度合いがいまいち不明瞭だったカスパルとリンハルトの友情が色々な角度から補強されていたのは非常に良かった。外伝は言うに及ばず、訓練、一緒に食事、作業手伝い、連携奥義、リンハルト遠乗りでのアレ。なんといっても、彼らが自軍でいる時(赤焔の章)よりも、彼らと敵対している時(黄燎の章)に戦いの最中で見せてくれた関係性が最も私の心を捉えました。青燐・黄燎だとカスパルが自軍に引き入れられないのが良い。リンハルトは王国にも同盟にもホイホイ投降するのが対照的でまた良い。

リンハルトを遠乗りに誘って根掘り葉掘り聞き出そう

スカウトといえば、イングリットみたいな忠義に厚い人物が(同盟にも、ましてや帝国にも)引き抜かれず信義を貫く仕様も良かった。紅花ルートのイングリットは解釈違いだったので。今回は引き抜けるキャラ・引き抜けないキャラがルートごとにきっかり決まってて、制作者がそれぞれのキャラにどういう(物語的な)役割を持たせてようとしているのかが分かって面白い。

王国に忠誠を尽くして命を落とすイングリット

そして……アッシュとユーリスの支援!!! どうして原作で無かったんだランキング堂々の第一位の彼らの支援に胸を撃ち抜かれて無事死亡。連携奥義の台詞でむせび泣いた。良い……。このユーリスとの支援の存在だけで、赤焔と黄燎ですこぶる不憫なアッシュの扱いも許されるというものです。許されるか? 投降アッシュ可哀想すぎんか?? シェズと仲良さそうなのだけが救い。アッシュとシェズの支援会話はシェズの生い立ちの重要なヒントになってるしね。

なぜこれを原作でやってくれなかったのか!!!

支援会話でいうと、メルセデスとイエリッツァのA支援だばだば泣いた。まさかこんな泣くと思わなかった。この二人の仲なんて今さらだから、って知ったつもりでいたけれど、私は彼ら彼女らの人生をまだまだぜんぜん知らなかったのだった。原作のペアエンドに至る経緯をこんな形で聞かされて、心を揺さぶられないわけがない。赤焔で帝国に降ったメルセデスが、アネット戦死後に前哨基地の礼拝所で静かに祈っている光景もかなりクる。メルセデスとアネットは仲良しこよししているより敵対しているほうが巨大感情が動く説あります。日本語版のメーチェの声がより大人っぽく低く落ち着いた感じに変化している(原作比)の良すぎる。5年後より2年後のほうが声低いことになっちゃうけど。無双やった後に原作メーチェの声聞くと驚くよ。

ザラスの闇に3級長が取り込まれた時のスチル、ディミトリが地響きで膝をついたエーデルガルトの手をとって立ち上がらせる構図、あれ原作紅花の章のタルティーン平原でエーデルガルトがディミトリの首を刎ねるときの構図の対比になってるよね(蒼月の章の最終章、アンヴァル宮城の玉座前で膝をつくエーデルガルトを見下ろすディミトリの構図の対比ともいえる)。二人が手を取り合う未来もあったかもしれなかったね、という儚い夢をプレイヤーに見せてくれたわけだね。なんてプレイヤーに残酷なことをするんだ……。

ゲーム面では、プレイアブルキャラクター全員(含む先生)が踊り子になれること、兵種獲得時の魅惑的な踊りモーションを男性陣にも等しく適用してくれたこと、感謝しかない……! 圧倒的感謝……! 原作では1周につき1人しか踊り子になれなくて、攻略上も重要なユニットだから、適性があるキャラしか選ばないじゃん。そうすると、ヒューベルトの踊り子とかラファエルの踊り子とか普通見れないじゃん。無双だと彼らも踊り子にし放題! 踊り子に限らず、ディミトリの魔法兵種とか、マリアンヌのグレートナイトとか、原作だと実用性の観点からまず選ばなかった兵種を気軽に試せるのですごい楽しい。シャミアさんがブリザー・ウインド・アロー・フィンブル・リブローを覚えることを無双で初めて知ったプレイヤーもいるのでは(私)。

風花雪月随一の人格者、親父殿ことロドリグも満を持してプレイアブルキャラクター化


4.今こそ明かされた真相

エーデルガルトがモニカを犠牲にして利用するか彼女を助けるかの選択に深く苦悩していたことを知れたのは良かった。本物のモニカってこんな性格だったんだなぁ、こんなに慕ってくれる臣下を犠牲にするのはそれは苦渋の選択よな。彼女を生贄に捧げてしまった以上、その後で、覇道を歩むにあたって可能であればなるべく少ない犠牲で済ませるかといったら、じゃあ最初に払った忠臣モニカの犠牲は何だったのということになってしまうから、もう血塗られた道を猛進するしかなくなってしまったのね、原作のエーデルガルトは。彼女を最初に犠牲にしてしまったから。

目的のためにモニカを犠牲にすることを土壇場まで悩み苦しんでいたエーデルガルト

外伝「不穏な死の真相」で、“不穏な死”はローレンツ父が仕組んだ事ではなかったと明かされ、エルヴィン=フリッツ=グロスタールの名誉が守られて一安心。無双を全ルートやったら絶対にエルヴィン=フリッツ=グロスタールを好きになってしまうからね。私利私欲のために卑劣な手を使うことも厭わない策略家などであろうはずがなかったのだよ。初登場時、横からのアングルで写して横顔で「ん? ローレンツ?」と思わせておいて正面を向いたらこの私! エルヴィン=フリッツ=グロスタール!!だったの大好き。ローレンツといえば、私今回の無双ローレンツの髪型すっっっっごい好きなんだけど!!! あと薔薇の舞にはお世話になりました。

この父にしてこの子あり(風花雪月そんなんばっか)

ダスカーの悲劇は何もかもキナ臭すぎたから、今回いろいろと明らかになってディミトリも我々もようやく前に進めたね。グレンの手紙で彼の生前の面影を垣間見れたのも粋な計らいだった。しかし、「悲劇」の仔細が語られたと思ったら、パトリシア(アンゼルマ)関連で謎というか匂わせが増えてしまったという。シェズの育ての母とは果たして何者なのか? これはもう続編を出して何もかも詳らかにするしかないね???

雑誌でしか明かされていなかったクロードの本名が公になり、パルミラの王子の一人も顔と名前が分かったけど、パルミラ関係はまだほんのさわりしか見せられていないよね。風花雪月はフォドラの物語だから、パルミラをがっつり描くと別物になってしまうので、これは致し方ない。スレンも申し訳程度に触れられたけど……ところでさ、メタいこと言うけど、文明が全然違う部族もいざ戦闘となると剣弓馬魔法を獲物にして攻めてくるんだなーって思うよね。闇うごとかさ、あんな古代の超文明みたいな外観してミサイルも飛んでくるのにいざ戦闘になるとウォーリアー、ソードマスター、ボウナイトで来るんだ……って。

王国・同盟は十傑の紋章と遺産を受け継いでおり、帝国には十傑の子孫は一人もおらず代わりにセイロス+四聖人の紋章と聖遺物が受け継がれているということにも無双でようやく気づいた。

5.先生の不在が暗示する先生の偉大さ

ペトラの発話のカタコト度合いが増してて、正直、言っている意味が分からないことが度々あった。脚本担当の文章が下手なのか? と訝しんでいたのだが、ふと気づいた――これはもしかして、士官学校が1~2ヵ月で休止してしまい、国語の授業をまともに受けられなかった、腰を据えて勉強する機会が失われたため、ペトラのフォドラ語も原作ほどには上達しなかったことを表現しているのではないか。先生が「まさか……ペトラ?」と驚嘆するほど書き言葉が流暢になっていた5年後の彼女はここにはいない。

これはドゥーちゃん師匠も教え甲斐がありますぞ

マリアンヌの目の下の隈が2年後になっても消えていない。スカウトしなければ他の章には影も形も出てこず消息を絶ってしまう原作と比べれば、どのルートにも登場し、容易かつ穏便に仲間にすることができる無双では、他人との関わりをより多く持っているとも言えるのだが。では、5年後に彼女の表情を明るくし、前向きになるきっかけとなったものは何だったのか? 先生がスカウトしなければ消息不明になることを考えれば、先生が彼女の人生に大きな影響を与えたことは明らかである。

エドマンド辺境伯のビジュアル公開も待ってます

彼女たちを教え導いた "先生" は、無双の世界にはいない。先生に出会わなかったことで、彼女たちは成長の機会を失い、あと一歩の壁を越えられない。エーデルガルトはシェズへの疑念を完全には抑えきれず、ヒューベルトに「私が誰かを信頼することなんて……」とこぼした。

ベレト/ベレスが先生にならなかっただけで、モニカが救出され士官学校は休止に追い込まれ、エーデルガルトは闇うごと袂を分かち、ディミトリは逆徒を粛清して内乱を制し、亡霊に囚われなかった。先生の不在はフォドラの命運を左右する彼ら彼女らの道を変えた。

しかし、先生不在の影響が最も大きいのがクロードだろう。
エーデルガルトは、先生が不在でもヒューベルトとモニカという忠誠心の高く優秀な側近二人を従え、作戦の立案にも事欠くことなく、むしろ闇うごを排除できたぶん活き活きと采配を振るっている。どれほど血にまみれようとも覇道を敷く! と悲壮な決意で邁進していた原作と比べると、犠牲が少なく済むならそのほうが良い、と目的を達成するにもできるだけ穏便な手段を用いようとしているように見える。ディミトリは、先王の親友だったロドリグや、子供の頃からの指南役だったギュスタヴを早期に腹心として従え、先生が不在でも――いや先生が不在だったからこそより王国への忠誠が増した青獅子の学級の面々(フェリクスもシルヴァンもイングリットもアネットも引き抜かれない!)が周りを固めてくれる。

翻って、クロードはどうか。
「俺がもっと上手く立ち回ってりゃ……」「こんなはずじゃなかった」と悩むクロードに、この先どうしたらいいかと問われたシェズは、「そんなこと俺(私)に聞かれても」としか答えられなかった。同盟を解体して連邦国とし自分がその王に就くという一大事において、シェズは事前に一言の相談もされず(他の級友たちと同様に)結果のみを知らされた。盟約を交わした帝国の将を犠牲にして自軍を無傷で勝利させる作戦の立案実行にあたって、傭兵隊長であるシェズは意見を求められることはなく、事後に仲間たちがこぞってクロードの独断を責めた。二度目の喉元防衛戦でついに血の繋がった兄弟を討つに至り、ナデルとホルストが義兄弟の盃を交わして新たに「きょうだい」を得た一方で、クロードは「きょうだい」を亡くし、彼がシェズを「きょうだい」と呼ぶことはなかった。

味方の被害を最小限に抑えて勝利したのによってたかって詰られるクロード

帝国の攻勢に窮し気弱になっている様や、土壇場で帝国を裏切るという悪手を選択をした彼を見て「らしくない」と違和感を覚えたプレイヤーは多いだろう。黄燎の章では、クロードは徹頭徹尾“孤独なリーダー”であり、道を迷ったときに気を置けずに諮れる参謀も、自分の選んだ道が正しいと肯定してくれる相棒もいなかった。ヒルダは信頼できる存在、一緒にいて心地よい理解者ではあるものの、腹の内を明かして自分の策謀の共犯者にさせるほどの“運命共同体”ではなさそうだ(戦争を嫌い、大役を負いたくないというヒルダの性格を慮ってのことかもしれない)。士官学校でじっくり絆を深める一年間を失ったため、ローレンツはクロードをライバル視する初期の関係性のままグロスタール家当主という立場となり、名門貴族の当主として(レスター全体やフォドラ全体といった大きな視野ではなく)自領の領民の安寧を第一に考慮しなければならない彼の思想は、それよりスケールの大きい視野を持つクロードの思想と、協調はできても同じ道を歩むことはできない。

そんなクロードが、紆余曲折あって遂にベレト/ベレスを仲間に迎えた際にふとこぼした「お前が力になってくれることを、俺はずっと望んでいたのかもしれないな……」という台詞が、彼が本当に手に入れたかったもの、そして今作においては永久に手に入れられなくなってしまったものを示唆している。無双で展開された「もう一つの風花雪月」は、取りも直さず「先生が先生にならなかった世界線の風花雪月」でしかなかったのだ。それは、今作では「銀雪の章」に相当する物語を失い、“お母様”を取り戻す運命を掴むことができなかった大司教レアも同様である。

だってそうしたらあなた、王様になった妻を置いてどっかの国に行っちゃうでしょ


6.尻切れに終わった結末が意味するもの

これだけは声高に主張しておきたい。
打ち切りエンドみたいな終わり方をしたことをもって、無双のストーリーを酷評する向きもあるようだが、それは違うよ! 皆、原作の紅花の章を思い出して!

紅花の章は、教会を打倒した後の(しかも教会打倒と同等かそれ以上に重要な)闇うごの討伐をプレイヤーの手で達成できず、エンディングの後日談で「再び闇うごとの戦いが始まった。すべてに片がついた後……」みたいな文章のみで無理やり終わらせていたではないですか。「闇うごとの決着までプレイさせてくれよ!」と思いましたよね? 私も「紅花の章は後付けで作られた章だから、短くて中途半端でもやむなしか、むしろ短くても紅花の章を作ってくれてありがとう開発」と自分を納得させていましたよ、ええ。

そこに無双風花雪月ですよ!

もし原作で、闇うごを完膚なきまでに叩き潰して完全勝利していたら、闇うごと全面対決する無双のストーリーは作られなかっただろう。戦いの決着を明確に描写せず、曖昧にしていたからこそ、次回作の無双でそこに焦点を当てることができた。そう……、無双の一見打ち切り風のエンディングも、次回作への布石なんだよ!!!

綺麗に終わらせちゃうと、ああ終わったなぁ、この作品はこれでおしまいなんだなってなっちゃうでしょ。そうなっちゃうと続編は作れないから。絶対、次は、闇うごとの本当の決着をつけられる続編が出るでしょ(ぜひSRPGで出してほしい)。そういうことだから、無双の「俺たちの戦いはこれからだ!」エンドにどうか失望しないでほしい。コエテクはやってくれるって私は信じてる。

「いよいよ最後の戦いが始まる」←ここ次回作でやります!!(願望)


7.(システム的な観点から)良かった点、悪かった点

良い

  • ロードがクッソ速い(原作比)。

  • ロード中に表示されるTIPSが適切。

  • 「拾い食い」、「動物愛」など原作では微妙だった個人スキルの有用化。

  • エピタフ、ダークナイトなど原作では微妙だった最上級職の強化。

  • 騎馬の素早さ成長率マイナスがなくなった(いずれの兵種も成長率マイナスとなるパラメータがなくなった)。

  • 「訓練」によって容易に兵種経験値が得られるので、原作ではまず選ばなかったような兵装(ラファエルを踊り子に、カトリーヌをグレモリィに、etc.)のキャラを拝めるし、適性が無さそうに見えても兵種相性などを活用すればそれなりに戦える。

  • 戦技一つ一つに個別のモーションやエフェクトが実装された。封魔の矢かっこいい。

  • 「絶好調」システムにより、仲間全員をまんべんなく育てるモチベーションが喚起される。

  • 遠乗りの誘いが断られない。遠乗りで一度選んだ選択肢が記憶され、次回からヒントが表示される。

  • 前哨基地でモブ達とぶつかっても舌打ちされない。

  • 全てのイベント会話が「エクストラ」メニューから再生可能。

  • 戦闘記録官という形で無限に遊び続けることができ、育成も無限(仲間全員をLv120にし、全兵種マスターさせ、全戦技をLv3にする等)にできる。

ロード中に表示されるTIPS、原作だともう第二部も後半というタイミングで「魔法が使えます」みたいなTIPSが表示されて「今さら!?」ってなる事が多かったけど、無双はゲームの進行度に合わせた(そのタイミングでプレイヤーの役に立つ)TIPSを適切に選択して表示しているような気がする。あと私、原作でモブと(肩がぶつかるくらいの距離感で)すれ違うと舌打ちされるのすごい嫌だったから、この謎仕様が無くなっててよかった。

くくく……格闘が苦手でも容易にグラップラーになれますな……。

悪い

  • 砦兵長をロックオンしたい時に、意図せず拠点兵長にロックオンしてしまう。

  • 操作キャラの切替時、切替後の操作キャラは「近い敵の方向」を向いた状態ではなく、非操作時に「指示で向かわせていた方向」を向いた状態で交替してほしい。

  • メニュー ⇒「システム」で一番上にあるのがなぜ「環境設定」なのか。最も頻繁に使う「セーブ」を配置すべきでは。

  • 出撃可能人数が少ない。学級全員は出せるようにしてほしかった。

  • 必殺の連撃で敵を撃破後すぐに操作キャラを変更できないのがストレス。硬直時間が長い。

  • 断章・序章の時だけ左上に出る強弱攻撃・兵種アクションの表示は、1章以降も環境設定で任意に表示できるようにしてほしかった。あれが無いと自分がいま何段階目の攻撃を出しているのかいまいち掴みづらい。

  • 被ダメージを抑えなければ戦績Sランクを獲得できないという評価基準と、覚醒の「どんなにダメージを受けてもHPが0にならない」の相性が悪い。システム的に嚙み合っていない。

  • 魔法職のモーションが遅く攻撃レンジも短くて圧倒的不遇。

  • 兵種バトルシスター、ヴァルキュリア、ダークペガサスの削除。後ろ2つはともかく、女性ユニットが格闘できないのは趣味的にも攻略的にも(踊り子が使用可能になるまで、魔法に強い兵種が男性に限られる)遺憾。

  • 支援レベルC→B→Aの全ての段階に支援会話が完備されていないのはやはり寂しい。支援会話の「えっ、そこで終わるの?」というブツ切り感。余韻が足りない。

  • 遠乗りに複数のロケーションが用意されているが、どこを選んでも会話に影響がない。せめて光コンスタンツェと会話できる日影・屋内のロケーションを用意してくれれば……。

  • 全編フルボイスではない。

  • 会話の自動送りが遅い。

  • 鍛冶屋の武器を砥ぐシャリシャリ音が耳障り。

  • 引継ぎ無しのルナティックはただの苦行。

  • 高難易度では、勇者シリーズやゾルタンシリーズといった原作では貴重な武器がワゴンセール並みに大量に手に入るので価値が薄れる。ゾルタンさん多作すぎ。

  • ごくまれに、戦闘中にキャラが固まってフリーズ。

特に「意図せず拠点兵長にロックオンしてしまう」は最悪の仕様。砦兵長と拠点兵長が同時に画面内に存在する時は必ず(距離にかかわらず)砦兵長を優先してロックオンする仕様にしてほしい。何なら拠点兵長にはロックオンできないようにしてしまっても良いくらい。

お前じゃない(拠点兵長)

上記の通り、私の無双に対する不満は主にシステム・操作面に向けられている。敵をバッサバッサ倒して爽快感を得てこその無双ゲーなのに、爽快感を阻害するイライラ要素が多い。ちゃんとテストプレイされているのか疑問に感じる。

設定的に絶対「勇者」なのに、勇者兵種が削除されたあおりでソドマスにされたホルストさん

R+A で発動する「覚醒」、1周目はシェズ専用の能力だと思い込んでて、他キャラで覚醒ゲージ溜まってても一切使わずに普通に一生懸命戦ってたわ。だってあのチュートリアルだと、覚醒=変身で、変身能力のあるシェズしか「覚醒」できないって思うのが普通じゃん?

こちとら必死で走って剣を振るのに忙しく、画面下に流れる会話もろくに読む(聞く)余裕すらないというのに、お構いなしに次から次へとミッションが下され、気づいたらなんで今そのミッションをやる局面になったのか皆目わからないという状況に皆さん陥りましたよね??? かと思えば、もう説得対象をHPミリ残しまで追い詰めてるのに、画面下で延々と会話(スキップ不可)が続いてるせいで「説得」コマンドが画面に出ない、出ないまま相手を討ち取ってしまう(説得失敗)という展開も皆さんやりましたよね???

説得作戦を実行した瞬間に撃破されるマリアンヌの図

といった感じで改善してほしい点も多々ありつつ、それを凌駕する圧倒的な楽しさ!!! 「この点さえ何とかなれば……」と愚痴ってしまうのはそのゲームが面白い証拠だって高橋名人も言ってた!!(言ってない) 無双風花雪月ってクソだよな、だって皆そう言ってるし……という向きがもしあるようでしたら、無双風花雪月おもしろすぎ600時間遊んだ!! とキャッキャしている私のようなプレイヤーの存在を思い出していただけたら幸いです。

貴重なベレト先生の踊り子姿をもってこの記事の締めとさせていただきます。

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