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フードエッセイ

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これまで食べてきた美味しい料理を色んな角度から物語風に綴っています。
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#イチオシのおいしい一品

学芸大学『世界一』おばあちゃんのニラ玉と思い出の小皿

その昔、東横線の学芸大学駅から徒歩3分ほどの場所に『世界一』という名の焼きとり屋さんがあった。日本一ではなく世界一。なんともだいそれたネーミングである。 いつだったか友人が気になる店があるというので「じゃあ行ってみよう」とこのお店に初めて訪れた。狭いバス通りの角地。入り口がそれぞれの通りにあって、それぞれの入り口に世界一という暖簾が掛かっていた。 暖簾の隙間からお店の中を覗く。 誰も居ない…。 恐る恐るガラスの引き戸を滑らせてみるが、建付けが悪いのか中々開かない。強引

渋谷『アンカラ』忘れられないケバブの味と謎の家族

渋谷マークシティーの裏路地に『アンカラ』というトルコ料理屋さんがある。10年以上前に友人の勧めで訪れたのだが、この店の料理は何を頼んでもウマい。 まず注文するのが、ババガンヌージュ(茄子とごまペーストのディップ)やハイダーリ(トルコ風ハーブ入りクリームチーズヨーグルト)などが盛られた前菜である。ナンの様な自家製パンの上に乗せて食べるとビールが進む。 トルコ料理の代表ともいえるケバブはいつも盛り合わせをお願いする。牛肉やラム肉のいいとこ取りで、色んな味を楽しみたい人にはおす

浅草『一文』インプットされたねぎま鍋とエストニアの美女

『ねぎま』とは、どんな食べ物ですか?と聞かれれば現代の人の92%は焼き鳥を思い浮かべるはずだ。しかし私を含め残り8%の人は迷わず鍋と答える。いや、もし江戸時代に同じ質問をしたら92%の人が鍋と答えるのではないだろうか。 数年前の私だったら間違いなく鍋とは思い付かなかっただろうが『浅草 一文 本店』へ訪問してから『ねぎま』は鍋である。いや鍋でしかない。焼き鳥であるわけがない。というデータが頭の中へ完全にインプットされてしまった。 『一文』へ訪れるきっかけはアメリカの女友達か