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フードエッセイ

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これまで食べてきた美味しい料理を色んな角度から物語風に綴っています。
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2023年12月の記事一覧

学芸大学『世界一』おばあちゃんのニラ玉と思い出の小皿

その昔、東横線の学芸大学駅から徒歩3分ほどの場所に『世界一』という名の焼きとり屋さんがあった。日本一ではなく世界一。なんともだいそれたネーミングである。 いつだったか友人が気になる店があるというので「じゃあ行ってみよう」とこのお店に初めて訪れた。狭いバス通りの角地。入り口がそれぞれの通りにあって、それぞれの入り口に世界一という暖簾が掛かっていた。 暖簾の隙間からお店の中を覗く。 誰も居ない…。 恐る恐るガラスの引き戸を滑らせてみるが、建付けが悪いのか中々開かない。強引

葉山『あじ平』恩師の言葉と熱々あさりラーメン

逗子から葉山へ抜ける途中に『あじ平』というラーメン屋がある。私が小学生ぐらいの時からあるので、かれこれ40年以上も営業されている地元に根付いたラーメン屋だ。 このお店には忘れられない思い出がある。 第二次ベビーブームに生まれた私は、中学校でやんちゃ坊になった。周りがどう見ていたかは知らない。でも、自分自身は不良だとは思っていなくて、当時流行っていた『ビー・バップ・ハイスクール』や『湘南爆走族』などのヤンキー漫画をマネしているだけだった。タバコも吸ったし、お酒も飲んだ。喧嘩

〆はタコス『TACO BELL』のハードタコスがウマい理由

アメリカに住んでいた頃、深夜にお腹が減ると『TACO BELL』の一択だった。マクドナルドやKFCなどのファストフード店が閉まっている時間帯でも営業していて幾度となく通った。 勝手な推測だけど深夜まで働いているメキシコ人の需要を考えて遅くまで営業していたのだと思う。(違うか…⁉︎) 飲みに行った帰り(もちろん飲酒運転です)ドライブスルーで1つ39セントのタコス2つとメキシカンピザを頼む。会計をすませて家へ帰る途中、ホカホカの袋を覗き込み「〆はやっぱりタコスでしょ!」と心が

堺『ちく満』蕎麦と玉子と私

大阪の堺市に『ちく満』という蕎麦屋さんがある。十数年前、ここで私は不思議な蕎麦を食べることになった。 ある時、ニューヨークから一時帰国していた女友達と大阪で再会した。彼女は長いことアメリカに住んでいて、私が働いていたワシントンDCの寿司屋でアルバイトをしていたらしい。同じ時期に働いたことがなかったのだけど、仲間を通して知り合い、初めて会った時からウマが合った。 通天閣を案内してくれた後、昼ごはんをどこで食べようか尋ねた。 「なんしよ…?あ、ちょっと遠いねんけど、幼馴染が

祐天寺『とんこつ麺 砂田』Happyをくれたラーメンとおじちゃん

飲んだ帰り道に美味いラーメン屋があるとその人の人生はHappyだ!と、私は断言する。できればとんこつ醤油系だと尚更いい。 以前、住んでいた祐天寺の部屋から徒歩3分の場所に『砂田』というラーメン屋さんがあった。しかも、いつも行く居酒屋の帰り道にあり、とんこつ醤油系だったのである。 一杯飲んで帰る途中、このラーメン屋さんを見つけた。『こんな場所にあったっけ?』いつからオープンされていたのかは定かではないけど、店の前にはまだ花束などが飾られていたので、開店されたばかりの頃だった