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クラシックシェービング:準備編

クラシックシェービングに必要なもの
・両刃ホルダー
・替刃
・シェービングブラシとシェービングボウル
・シェービングソープまたはクリーム

あると良いもの
・プレシェーブオイルやジェル
・アフターシェーブ

両刃ホルダー

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 ホルダーのメーカーは日本製ならフェザーや日本利器工業、海外ならメルクールやミューレ、エドウィン・ジャガーが有名。中にはジレットなどのアンティークをebayで購入する人もいる。
 愛用しているのはフェザーのフェザー特選(AS-D2)というホルダー。海外のマニアの間では両刃ホルダーのロールスロイスなんて呼ばれていたりもする。工作精度がすば抜けて高く、総ステンレスで長持ち、極めてマイルドで剃刀負けしにくく、深ぞりできる。ただべらぼうに高い。電気シェーバーと遜色ない価格だが、一生物と思えば、その価値はあると思う。また、毎日剃る人はできるだけマイルドなホルダーの方がストレスが少ない。
 そんなに金をかけたくない人は、ミューレのR89メルクールの34Cを。個人的にも特選を買う前まで使っていた(ただ特選と比べると剃刀負けしやすい)。
 逆にオススメしないのは第一にフェザーのポピュラー。どうしてもお試し価格で両刃を使ってみたいなら良いが、金属製のホルダーとは100均のボールペンと1万円の万年筆並みの違いがあると思った方が良い。第二にスラントと呼ばれる刃先が斜めになるタイプのもの。何度か使ったが、剃刀負けが多く、すぐヤフオクで売ってしまった。どうしても欲しいなら、ある程度慣れてから。
 余談だが、レビューでアグレッシブやマイルドと書かれていたら、それは深ぞり加減と剃刀負けのし易さの両方の意味だ。

替刃

 色んなメーカーがあるが、フェザーメルクールが有名どころ。フェザーはニンジャブレードの愛称があるほど鋭く、ワザマエやホルダーによっては剃刀負けしやすい。ホルダーがフェザー特選ならフェザーがおすすめだが、それ以外ならまずはマイルドなメルクールを。(追記:メルクールは最近チェコ製造に変わってしまったらしく品質が落ちた。今ならシックがおすすめ)メーカーは沢山あるが、なくなる頃にAmazonの定期おトク便で勝手に配送してくれるフェザーを愛用中。

シェービングブラシとシェービングボウル

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 缶入りのフォームやジェルを使うなら必須ではないが、両刃カミソリを使うならセットで持っていたい。香りの良いソープを泡だててブラシで塗ると髭がより柔らかくなるし、何より気分が良い。エコだし。
 ブラシは様々な毛と等級があり、アナグマ(バジャー)、馬毛、豚毛、合成繊維のいずれか、もしくは混毛が一般的。バジャー、中でもシルバーティップと呼ばれる腹の白い毛を使った物が最高級らしい。Amazonには怪しげな中国製メーカー品と思われるブラシが沢山あり、当たり外れがあったり、海外価格の3・4倍の値段で売られていたりする。
 最初にクラシックシェービングを始めた頃は個人輸入はまだ敷居が高く、日本で値段に見合うものを探すの面倒だったので、たまたまアンテナショップで出会った化粧筆で有名な熊野筆・竹宝堂のブラシを愛用している。これ以外は使ったことがない。バジャーとウォーターバジャー(マングース)の混毛でよく泡立ち、何より肌当たりが柔らかくて気持ちが良い。10年経った今は多少の毛抜けはあるものの、問題なく使用している。今手頃なものを探すなら、Marks & Webのブラシパーカーなどが良さそうだ。

 ボウルについてはある程度の大きさがあって、使いやすければ何でも良い。魔法瓶や陶器のボウル、スカットルと呼ばれるお湯を入れて暖かい泡ができる物など、専用の商品はいくつもあるが、どれも使い勝手が悪そうだったり、怪しげな中国製だったりするので使用したことはない。ぼくは柳宗理の13cmステンレスボウルを使用している。使いやすく頑丈で、見た目も良い。高級化粧品で有名なイソップでもシェービングボウルとして販売している。シェービングマグというのものあるが、用途は同じ。ボウルの方が泡立てやすいが、マグは場所を取らない。今買うなら英国製の錫のマグなんてかっこいいかもしれない。ちなみに日本の床屋でよく見かける、磁器製の四角い二層式洗濯機のようなマグはおすすめしない。粉石鹸や液体石鹸をチャッチャッと混ぜるように作られており、固形ソープはもとよりクリームも濃厚には泡立てにくい。

シェービングソープまたはクリーム

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 日本では低品質な花王(製造:エスケー)の業務用粉石鹸ぐらいしか専用の商品はないが、海外では実に多様なソープやクリームが売られている。ソープとクリームの違いは泡だての一手間が違うだけで、基本は同じ。クリームは泡だてやすいが、ソープの方がクリームよりだいぶ長持ちする(毎日使ってソープ100gなら5-6ヶ月、クリームなら2-3ヶ月)。中には身体用の石鹸で代用したり、業務用粉石鹸にグリセリンやオイルを混ぜたりして代用する猛者も世の中にいるようだが、専用品とは香り・保護力に雲泥の差がある。懐に余裕があるのであれば、やはり専用品を。
 日本で手に入りやすいもので、おすすめのソープはタコニックVan der Hagenあたり。タコニックはラベンダー、Van der Hagenは微かなウッディ系の香りだ。
 クリームならヴェレダロゴナスパイクなどのドイツ製品が入手しやすく、性能も良く価格も手頃。香り重視ならヴェレダ、剃り心地重視ならロゴナ。ただスパイクは仁丹のような、かなり好き嫌いの別れる香りなので要注意。また、ポロラーソのクリームは海外ユーザーの間でコスパ最高とのレビューが多い(ソープよりクリームの方が高評価)。しかし香りが昭和の化粧品の香りという感じでどうしても好きになれず、一度試したきり捨ててしまった。その他にはTaylor of Old Bond Streetのクリームも有名で、日本Amazonでも業者が出品している。
 おすすめできないものとしてThe Art of Shavingといったアメリカの高級ブランドやイギリスの高級ブランドTRUEFITT & HILLFLORISがある。輸入代行業者で取扱いがあり入手しやすいが、これらは品質や量のわりにかなり割高で贅沢できる人向け。またAmazonで取扱いのあるMBGミューレのソープは品質が低い(追記:ミューレのソープは相変わらずイマイチだが、クリームは結構使い心地が良い。)
 個人輸入にまで手を伸ばせばそれこそ何百と種類があり、イギリスのShavedash.comやアメリカのMaggard Razorsでは安めの送料でサンプルを買えるので、色々試してみると楽しい。傾向としてはアメリカ系のメーカーは中高年好きするウッディ・アンバー系のダンディ、悪く言えば昭和のおじさん的な香りのものが多く、イギリス系のメーカーはアメリカ系にシトラスやフローラルを足したクラシックな香りが多い。対してイタリアは爽やかな香水系、フランスは自然で爽やかな香りの物が多い。アメリカならWet Shaving Products (Rustic Shaving Soap)、イギリスならWickham 1912、フランスならMartin de Candre、イタリアならSaponificio Varesinoがおすすめ。特にSaponificio Varesinoは香り、シェービング時の気持ち良さは他のメーカーと一線を画す。個人輸入するならThe English Shaving Companyが送料安くて良いと思う(加えて対英国ポンドは円高の場合が多い)。あとはMaggard Razorsは品揃え豊富だし、BullGouse Shaving Suppliesは珍しいソープやクリームを取り扱っていて(特にオリジナルラインのAsylumシリーズおすすめ)良い。

プレシェーブオイルやジェル

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 プレシェーブオイルジェルと言って、泡だてた石鹸をつける前に塗ると剃刀負けを防ぐとされる商品がある。海外掲示板では賛否両論があるが、個人的にはつけた方が確かに剃刀負けしにくくなった。両方使っても良いし、片方だけでも良い。剃る前に肌と髭を柔軟にする目的で使うものなので、正直専用品でなくとも、ホホバオイル等の肌に使える軽めのオイルな何でも良いと思う。

アフターシェーブ

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 クラシックシェーバーではなくとも、使っている人はいるかも知れないが念のため。髭剃り後の荒れた肌を整えるために使用する。別に普通の化粧水・乳液でも良いんじゃないかという、ダンディズムのないツッコミは無しで。大別するとスプラッシュと呼ばれるアルコールと香料ベースのもの、エマルジョン(乳液)と呼ばれるオイルベースのものがある。特にスプラッシュは厳密に企画分けされている訳ではなく、香水代わりにしかならないものや保湿機能もついているものもある。
 肌が弱い人や乾燥する季節にはエマルジョンが良いが、暑い季節はスプラッシュが気持ち良い。古典的なところだとOld SpicePortugalあたりが有名だが、個人的には全部おじさん臭くてNG。正直、
パパ臭いっ
うるせぇなぁ、お前にはこの良さがわからねぇんだよ
という悲しいやり取りが目に浮かぶ。という訳でそんな切ない事件を起こさないためにも、サンタマリアノヴェッラのような香り良く、性能も良いものをおすすめしたい。スプラッシュは色々な香りがあり、中でも春・夏は優しい香りのラベンダーや秋冬は甘い大人の香りのトバッコ・トスカーノが好きだ。スプラッシュなのに保湿されるのも良い。ネット通販価格7-8000円とかなり割高だが、一本で一年は持つ。アルコールにかぶれたり、乾燥肌だったりする人は大人の柑橘系のノンアルコールエマルジョンもおすすめ。より高級志向ならペンハリガンのブレナムブーケのいかにも英国紳士な香りで好まれると思うし、イソップも性能・香り共に素晴らしい。
 ちなみにウィッチヘーゼル(ハマメリス水)を代わりに使うのも海外では一般的らしいが、試したところ臭いだけで何の効果も感じなかったので、あまりおすすめしない。
 色々な価格帯のものがあるが、所詮は香りを楽しみ、ソープで洗い流された皮脂を補うために保湿するためのものなので、あまり神経質にならなくて良い。剃刀負けしてしまった時は、素直にオイラックスソフトやタクトLなどの市販薬を使った方が治りが早く、財布にも優しい。もう少し気軽に買いやすい価格帯で保湿にこだわるなら、クリームでも勧めたヴェレダロゴナスパイクあたり。日本製のアフターシェーブはマンダム等、香り悪く保湿もしない昭和の化石みたいな商品ばかりで良いものが見当たらない。

最後に

 クラシックシェービングを始める人にお金に余裕のある中高年が多いためか、ネット上では、コレクターと化して使い切れない量のグッズを買い込んでいる人をたまに見かける。別に悪いことだとは思わないが、繰り返し買うぐらいなら最初から高くても良いものを買って、長く使った方が良いと思うのは自分だけだろうか。それにコレクションするぐらいなら、そのお金で家族と食事にでも行った方が有意義な気がする。余計なお世話か。

※その昔この記事を書いてから早数年、たまにスキをいただくことがありましたので、内容を少し修正しました。

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